履歴書の書き方は、フリーランスとして活動してきた方にとって悩みの種になりがちです。主体性や自己管理能力を示す立派なキャリアであっても、正社員への転職活動を始めると「職歴欄にどう書けばいいのか」「会社員時代と同じ言葉を使っていいのか」と戸惑う方も多くいます。
本記事では、フリーランス経験を正しく評価してもらうための履歴書の書き方を解説します。「開業・廃業」といった特有の表現から、開業届を提出していない場合の対処法、採用担当者に前向きな印象を与える志望動機・自己PRの伝え方まで、具体的な記入例を交えて紹介します。
- フリーランス特有の履歴書・職歴欄の書き方(開業・廃業など)
- 開業届を出していない場合や案件が多すぎる場合の対処法
- 企業の懸念を解消する志望動機と自己PRの書き方
1.フリーランスの履歴書の書き方|「職歴欄」の基本マナー

フリーランスの職歴欄は、会社員とは使う言葉から異なります。まずはフリーランスの定義から確認しましょう。
フリーランスに該当する場合は、会社員とは履歴書の記載方法が異なります。「開業・廃業」という表現の基本ルールと、屋号の有無による書き分け方を整理します。
参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|厚生労働省
履歴書の書き方:「入社・退社」ではなく「開業・廃業(休止)」と記載する
会社員の場合、職歴欄には「入社」「退社」と記載しますが、フリーランスの場合は事業を自分で始めるため、「開業」「廃業」という言葉を使います。
公的な書類である履歴書においても、「個人事業主として開業」と記載するのが適切です。法的には、個人が事業を開始した際は税務署への届出が必要とされているためです。
事業を完全に辞める場合は「廃業」、一時的に休む場合は「事業満了による休止」など、実態に合わせて表現を選びましょう。
屋号がある場合・ない場合の履歴書の記入例
フリーランスには、店舗名や事務所名などの屋号を持つケースと、個人名のみで活動するケースがあります。
「フリーランス白書2025」によると、戸籍上の名前以外(屋号やビジネスネーム等)を使って活動するフリーランスは約4割にのぼります。制度上は開業から1ヶ月以内の届出が原則とされる一方、実際の活動名は必ずしも届出内容と一致しないケースもあるため、履歴書には手続き状況と活動実態の両方を事実ベースで簡潔に記載することが大切です。
屋号がある場合と、ない場合で記入方法が異なります。
屋号がある場合
令和〇年〇月 〇〇(屋号名)を設立し個人事業主として開業屋号がない場合
令和〇年〇月 同上(氏名)にて個人事業主として開業
屋号の有無にかかわらず、事実を簡潔に記載すれば問題ありません。
参考:フリーランス白書2025|一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会
2.【ケース別】フリーランスの履歴書の書き方|職歴欄の記入パターン

「開業届を出していない」「案件が多すぎて書ききれない」など、フリーランス特有の悩みは人によってさまざまです。状況別に、どう対処すればよいかを解説します。
開業届を提出していないフリーランスの履歴書の書き方
副業の延長などで事業をスタートし、開業届をまだ提出していないケースも少なくありません。開業届を出していなくても、実態として業務を請け負い、責任を持って遂行していたのであれば、一般的には正当な職歴として扱われます。
所得税法第229条では、事業開始の事実があった日から1ヶ月以内に届出することが求められています。しかし未提出であっても、履歴書に「フリーランスとして活動開始」と記載することは、一般的には虚偽記載にはあたらないと考えられます。
ただし、開業届がない場合は「開業」という言葉を避けるのが無難です。
「フリーランスとして活動開始」「〇〇業務を受託開始」など、活動の事実のみを記載することで、状況を正確に伝えられます。また、現在も活動中の場合は「現在に至る」、いったん区切りをつけた場合は「事業を休止」という表現で締めくくることで、空白期間という誤解を防げます。
正式な取り扱いに迷う場合は、税理士など専門家に確認すると安心です。提出期限などの制度は改正される場合があるため、最新の案内を確認してください。
案件(プロジェクト)が多すぎる場合の履歴書の書き方(省略法)
ITエンジニアやデザイナーなど、プロジェクト単位で多数の案件をこなしてきた場合、すべての取引先や案件名を履歴書に書ききれないことがあります。
履歴書の役割は学歴や職歴といった基本情報を証明することです。職歴欄には「フリーランスとして活動開始」という大枠のみを記載し、プロジェクトの詳細は別紙の職務経歴書にまとめましょう。
代表的な取引先が1〜2社ある場合は、「主に〇〇株式会社の業務を請負」と添えることで、どのような規模感で活動していたかが伝わりやすくなります。
3.フリーランスの履歴書の書き方|NDA(守秘義務)がある案件の場合

フリーランスとして企業と取引する際、NDA(秘密保持契約)を締結しているケースは珍しくありません。クライアント名や業務内容を詳細に記載できない場合でも、適切な抽象化によって職歴として記載することは可能です。
基本的な考え方は「業種・規模感・業務の性質」を残しつつ、固有名詞を伏せる書き方です。
NGな書き方
〇〇株式会社の新規サービス△△の設計を担当
OKな書き方
大手EC企業向けの新規サービス開発に従事(システム設計〜実装)
業種(IT・製造・金融など)や案件の規模感(大手・スタートアップ・官公庁など)は守秘義務の対象にならないことが多く、むしろ積極的に記載したほうが実績の厚みが伝わります。
守秘義務の範囲に迷う場合は、職務経歴書を提出する前にクライアントへ確認を取ることも一つの選択肢です。
4.履歴書の書き方と職務経歴書との役割分担|フリーランスの場合

フリーランス経験者が陥りやすいのが、履歴書に情報を詰め込みすぎることです。2つの書類それぞれの役割を理解することで、読みやすく評価されやすい構成になります。
履歴書の書き方の基本:「事実」を書き、詳細は「職務経歴書」に委ねる
履歴書は基本情報を伝える公的性格を持つ書類です。一方、職務経歴書はこれまでの実績やスキルを示し、入社後の貢献度を伝えるための書類です。
フリーランスの経験では、具体的な実績や保有スキルこそが最大の評価ポイントとなります。履歴書の職歴欄は「いつからいつまで、どのような形態で活動したか」という事実の記載に留めましょう。
身につけた専門性や、NDAに配慮した上での具体的なプロジェクト成果は、職務経歴書で詳しくアピールする構造にすることが重要です。
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履歴書と職務経歴書はそれぞれ役割が異なり、書き分けることで採用担当者に伝わりやすい書類になります。
履歴書と職務経歴書の書き分け術の記事では、履歴書と職務経歴書の書き分け方とテンプレートを使った簡単な作成方法について解説します。
5.フリーランスの履歴書の書き方|「志望動機」で企業の懸念を解消する

採用担当者が最も気にするのは「なぜ今、組織に属しようとしているのか」という点です。後ろ向きな印象を与えずに転職理由を伝えるための考え方と例文を紹介します。
フリーランスの志望動機:なぜ正社員に戻るのかを明確にする
採用担当者がフリーランス経験者の書類を見る際、最も気になるのは「なぜ自由な働き方を辞めて、再び組織に属そうとしているのか」という点です。
NGな書き方
経営がうまくいかなくなったため/収入が不安定で廃業したため
OKな書き方
これまでの経験を踏まえて、次は組織のなかで○○を実現したいと考えています。
転職理由は、後ろ向きな言葉は避け、フリーランスでの経験を踏まえ、次に何を実現したいかという未来志向の目標と結びつけることが大切です。
事業の継続が難しかった場合でも、「一人で取り組む中で限界を感じ、より大規模なプロジェクトをチームで動かしたいと考えるようになった」「自身の専門スキルを、組織の長期的な目標達成に還元したい」など、経験から得た気づきを前向きな動機に変換することがポイントです。
フリーランスの履歴書|志望動機の例文
フリーランスとして3年間、〇〇分野の業務に携わり、クライアントへの提案力と自己管理能力を培いました。個人での活動を通じて多様な案件を経験してきた一方で、一つのサービスを長期的な視点で育て、チームで大きな成果を創出したいという思いが強くなりました。
貴社の〇〇というビジョンに共感しており、これまでの専門性とフリーランスで身につけた主体的な行動力を活かして、事業拡大に貢献したいと考えています。
フリーランスとしての実績を肯定しつつ、組織だからこそできることへの挑戦意欲を示すことで、採用側に安心感を与えることができます。
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退職理由と志望動機がバラバラだと、採用担当者に不安を与えてしまうことがあります。
【例文付】退職理由(本音)と志望動機に一貫性を持たせる方法の記事では、退職理由(本音)と志望動機に一貫性を持たせるための考え方と例文について解説します。
6.フリーランスの履歴書の書き方|「自己PR」と志望動機の違い
志望動機と自己PRは混同されがちですが、伝えるべき内容はまったく異なります。フリーランスならではの強みを整理しながら、採用担当者の印象に残る自己PRの書き方を解説します。
フリーランスの履歴書における志望動機と自己PRの違い
志望動機と自己PRは混同されやすいですが、それぞれ伝えるべき内容が異なります。次の表で違いを整理しました。
| 比較ポイント | 志望動機 | 自己PR |
|---|---|---|
| 答える問い | 「なぜこの会社を選んだのか」 | 「自分にはどんな強みがあるか」 |
| 伝える中心 | 企業への理解・共感(会社への関心) | 自分自身の実績・特性(自分の強み) |
フリーランス経験者の自己PRは、「主体性」「自己管理能力」「課題解決力」を具体的なエピソードと数字で示すことで説得力が増します。
フリーランスならではの強みを自己PRに活かす
フリーランスとしての経験は、会社員にはない独自の強みを持っています。以下のような視点を自己PRに組み込むと効果的です。
営業・提案力
クライアントの課題をヒアリングし、解決策を提案してきた経験は、社内外との折衝が多い職種で直接活きます。「〇件の新規開拓を単独で実施」など、数値を交えると具体性が増します。
納期・品質管理
外部からの監視がない環境でも、スケジュールと品質を自己管理してきた実績は、マネジメント層からも評価されやすいポイントです。
幅広い業務経験
フリーランスは契約・請求・税務まで一人でこなすケースも多く、ビジネス全体を俯瞰した視点を持っていることもアピール材料になります。
7.フリーランスの履歴書の自己PR例文|職種・強み別パターン

自己PRは「どんな強みを、どの職種にアピールするか」によって内容が変わります。自分の経験に近いパターンを参考にしながら、数字や具体的なエピソードに置き換えて使ってください。
パターン①:提案力・営業力をアピールしたい場合(営業・企画職向け)
フリーランスとして3年間、中小企業を中心にWebマーケティングのコンサルティング業務を受託してきました。新規クライアントの開拓から提案・納品まで一貫して一人で担当し、3年間で延べ〇社と契約を結んできました。
クライアントの課題をヒアリングし、予算と目的に合った施策を提案するプロセスを繰り返す中で、相手の意図を正確に汲み取る力と、期待値をコントロールしながら関係を継続する力が身についています。この経験を活かし、貴社でも顧客との長期的な信頼関係を築きながら成果に貢献したいと考えています。
パターン②:自己管理能力・実行力をアピールしたい場合(エンジニア・デザイナー職向け)
フリーランスのWebエンジニアとして4年間、複数のクライアントから案件を並行して受託してきました。多いときは同時に〇件のプロジェクトを抱えながら、一度も納期を破らずに完遂してきました。
タスク管理・スケジュール調整・進捗報告まですべて自分で設計・運用してきたことで、状況を俯瞰しながら優先順位をつけて動く力が身についています。組織の中でもこの自己管理能力を活かし、チームの生産性向上にも貢献できると考えています。
パターン③:幅広い業務経験・ビジネス視点をアピールしたい場合(事業会社・スタートアップ向け)
フリーランスとして活動する中で、制作・ディレクション・クライアント対応・請求管理まで一人でこなしてきました。業務の全工程を担うことで、コストや納期、品質のバランスをビジネスの視点で考える習慣が自然と身につきました。
〇〇業界の企業を中心に〇件以上のプロジェクトを担当し、リピート受注率は〇〇%でした。事業全体を意識しながら動ける人材として、貴社の現場でも即戦力として貢献できると考えています。
8.フリーランスの履歴書に関するよくある質問

実際に転職活動を進める中で出てきやすい疑問をまとめました。細かい点で迷ったときの参考にしてください。
Q. フリーランスの履歴書|活動期間が短い場合は、どう書く?
-
フリーランスの活動期間が短い場合はどう書けばいい?
-
期間の長短にかかわらず、活動の事実を正直に記載することが基本です。
短期間であっても「〇〇分野での受託業務を〇件対応」など、具体的な活動実績を添えることで職歴としての厚みが伝わります。期間が短いことへの言い訳は書かず、詳細な実績は職務経歴書で補いましょう。
Q. 履歴書の書き方|副業としてのフリーランス経験は、どう書く?
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フリーランスと会社員を並行していた場合はどう書く?
-
会社員としての職歴とフリーランスとしての活動期間が重なる場合は、「在職中、副業として〇〇業務を受託」のように、正職と副業の関係を明記することで経歴の整合性が保たれます。
Q. フリーランスの履歴書|廃業した理由はなんて言う?
-
もし面接で、フリーランスをやめた、廃業した理由を聞かれたら、どう答えればいい?
-
面接では聞かれることも多い質問です。「事業が失敗した」という事実よりも、「その経験から何を学び、次にどう活かすか」という視点で答えることで、マイナス評価を避けられます。事前に簡潔な説明を準備しておきましょう。
【状況別】廃業理由の回答例
パターン①:収入・経営の不安定さが理由の場合
フリーランスとして〇年間活動する中で、案件の繁閑差が大きく、長期的なキャリア形成が難しいと感じるようになりました。特定の専門領域をより深く追求するためには、継続的なプロジェクトに腰を据えて取り組める環境が必要だと判断し、正社員への転職を決めました。
ポイント
「収入が不安定だった」を、「継続的な環境でスキルを深めたい」という前向きな動機に転換しています。
パターン②:仕事の広がりに限界を感じた場合
個人で受けられる案件の規模や種類に限界を感じるようになりました。より大きなプロジェクトに関わり、チームで成果を出す経験を積みたいと考えたことが、転職を決めた理由です。
ポイント
「一人では無理だった」ではなく、「スケールアップしたい」という成長志向として伝えています。
パターン③:ライフステージの変化(結婚・育児など)が理由の場合
フリーランスとしての働き方を続けてきましたが、生活環境の変化に伴い、より安定した就業形態を選択することにしました。一方で、これまでの〇〇の経験を組織の中で継続的に活かしたいという思いも強く、転職を決めました。
ポイント
個人的な事情を正直に触れつつ、「経験を活かしたい」という意欲で締めることで、消極的な印象を和らげています。
パターン④:健康上の理由が背景にある場合
一時期、体調を崩したことで活動を休止しましたが、現在は完全に回復しており、支障なく業務に取り組める状態です。休止期間中は〇〇の勉強や資格取得に取り組み、復帰に向けて準備を進めていました。
ポイント
現在の状態が問題ないことを明示するのが最優先です。ブランク期間に何をしていたかを添えることで、空白への不安を払拭できます。
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ブランク期間がある場合、志望動機の書き方にも工夫が必要です。
ブランクがある場合、志望動機はどう書く?の記事では、履歴書にブランクがある場合の志望動機の書き方と採用担当者への前向きな伝え方について解説します。
9.フリーランスの履歴書の書き方のポイントを押さえてアピールしよう

フリーランスの履歴書で迷いやすいポイントは、言葉の選び方とどこまで書くかの2点に集約されます。職歴欄は開業・廃業の事実を簡潔に記載し、実績の詳細は職務経歴書に委ねる構造が基本です。
志望動機と自己PRは、フリーランス経験を「弱点」ではなく「固有の強み」として前向きに言語化することで、採用担当者の懸念を払拭できます。書類作成に迷ったときは、「事実を正確に、前向きな文脈で伝える」という軸に立ち返ってみてください。