経理の仕事は、単なる伝票処理や数字の計算ではなく、企業の健康状態を数字で表し、次の進路を支える「航海図を描く役割」を持っています。
志望動機では、持っている資格やこれまでの経験が、応募先の企業でどのように活かされ、日々のスムーズな運営に繋がるのかを具体的な言葉で結びつけることが大切です。
この記事では、未経験から挑戦する場合と、経験を活かしてステップアップする場合のそれぞれについて、志望動機を作成する具体的な手順と文例を紹介します。
- 経理の志望動機で採用担当者に伝えるべき3つの重要な柱
- 未経験・経験者別の具体的な志望動機作成ステップと文例
- 面接や書類作成でマイナス評価を避けるための注意点と伝え方
1.経理の志望動機で伝えるべき大切な3つの柱

経理の志望動機は、思いつくままに書くと「なぜ経理なのか」が曖昧になりがちです。採用担当者に伝わる志望動機にするために欠かせない3つの視点を、順番に見ていきましょう。
1. なぜ他の仕事ではなく「経理」なのか
一般事務や営業ではなく、なぜ数字を通じて会社を支える経理職を選んだのか、その理由を明確にします。
経理事務は建設業・製造業・情報通信業・金融業など幅広い業種で必要とされており、全国の就業者数は約152.4万人にのぼる職種です。景気や業界の変化に左右されにくく、安定した需要がある点も、経理という仕事を選ぶ理由のひとつになります。
数字で見る経理の仕事
- 全国就業者数:約152.4万人(令和2年国勢調査ベース)
- 平均年収:512.2万円(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)
- 有効求人倍率:0.59(令和6年度)
経理は学校の「部活動の会計係」に例えるとイメージしやすくなります。ただ部費を集めて計算するだけでなく、部員全員が安心して活動できるよう予算を整理し、次に何ができるかを考えるための土台を作る仕事です。
計算が得意だからという理由にとどまらず、お金の流れを整理して会社の運営をどう支えたいかという主体的な姿勢を示すことが大切です。
経理事務の有効求人倍率は0.59倍と、求職者1人あたりの求人数が1件に満たない水準にあります。約152.4万人という大きな就業者数と合わせて見ると、経理は身近な職種でありながら、実際の転職市場では席が限られた「狭き門」であることがわかります。だからこそ、他の応募者と横並びにならない、具体的で説得力のある志望動機が重要になります。
出典:「経理事務」|職業情報提供サイト job tag(厚生労働省)
2. なぜ「この会社」で働きたいのか
経理はどの企業にも存在する職種だからこそ、「なぜその業界なのか」「なぜその会社なのか」という理由が問われます。
応募先企業のビジネスモデルや、現在どのような成長段階にあるのかを調べ、自分のやりたいことと企業が求めていることが重なる部分を見つけることが重要です。
一般的には、企業が求める役割と自身の希望が一致していることを示すことで、長期的に定着して働けるという安心感を採用担当者に与えることができます。
3. 自分のスキルがどのように会社に役立つか
持っている簿記資格や、これまでの仕事で培った正確性、パソコンスキルなどの「持ち運び可能なスキル(ポータブルスキル)」が、入社後にどう活きるかを具体的に結びつけます。
実務経験がなくても、営業職での数値管理や事務職での正確なデータ入力など、経理に通じる経験は十分にアピール材料となります。
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ポータブルスキルを志望動機で伝える際は、職務経歴書の自己PR欄との一貫性も意識しましょう。
「職務経歴書の自己PRの書き方|真似できる例文&テンプレート」の記事では、経験を魅力的な自己PRに変換する具体的な書き方について解説します。
2.【タイプ別】経理の志望動機を作成するステップと例文

ここからは、実務経験の有無によって異なるアピールポイントを、具体的な文例とともに紹介します。自分の状況に近いパターンを参考にしてください。
実務経験がない場合(簿記資格や他職種での経験を活かす)
実務経験がない場合、日商簿記などの資格取得に向けて努力したプロセスや、前職での数値管理の経験をアピールすることが効果的です。
資格を机上の知識にとどめず、実務への意欲に変換して伝えます。
経理の実務経験がない人の例文①(店舗接客・現場職からのアプローチ)
前職では店舗接客として、毎日の売上レジ締めや小口現金管理を担当していました。ミスなく正確に数字を合わせる作業にやりがいを感じ、より専門的に企業のお金の流れを支える経理職を志望するようになりました。
現在は日商簿記2級の取得に向けて学習を進め、会計知識の習得に努めています。前職で培った正確性とコミュニケーション能力を活かし、現場と円滑に連携しながら業務に貢献したいと考え志望いたしました。
経理の実務経験がない人の例文②(営業事務・他職種事務からのアプローチ)
前職では営業事務として、日々の売上データの集計や見積書の作成を担当していました。その中で、数字の正確性が会社の信用に直結することを学び、より専門的に会社のお金の流れを管理する経理職に魅力を感じるようになりました。
現在、日商簿記2級を取得し、体系的な知識を身につけています。応募先企業は現在、新規事業を積極的に展開されていますが、私の強みである正確な事務処理能力と簿記の知識を活かし、変化の早い現場を数字の面から支えたいと考え志望いたしました。
未経験から経理を志望する場合、知識不足を懸念されないよう日商簿記などの資格の勉強に励んでいることをアピールするのもおすすめです。
実務経験がある場合(ステップアップや専門性を活かす)
実務経験がある場合は、月次・年次決算の実務や税務申告など、これまでの具体的な実績を数字を交えて示し、即戦力として貢献できる点を伝えます。
日々のルーティンワークから、より難易度の高い業務へ挑戦したいという前向きな姿勢を言語化します。
経理の実務経験がある人の例文①(業務改善実績・同規模でのステップアップ)
現職では中小企業の経理担当として3年間、日常の伝票処理から月次決算、年次決算の補助までを一貫して経験してまいりました。その中で、経理システムの導入による業務効率化を提案し、月間の処理時間を20%削減した実績があります。
今後はより規模の大きい環境で、税務申告や管理会計などの専門性を深めたいと考えております。業界トップクラスのシェアを持ち、安定した基盤の上で挑戦を続ける環境において、これまでの実務経験と業務改善の視点を活かし、経理部門の円滑な運営に貢献したいと考え志望いたしました。
経理の実務経験がある人の例文②(管理会計への挑戦・大手・グローバル企業志望)
現職では中堅メーカーの経理部門にて4年間、日常の仕訳業務から単体決算、資金繰り表の作成まで幅広く従事してまいりました。実務を重ねる中で、過去の数値を正確にまとめるだけでなく、予算管理や経営分析を通じて事業の成長を後押しする「管理会計」の領域に強く惹かれるようになりました。
貴社はグローバルに事業を展開し、データに基づいた迅速な経営判断を重視されています。私のこれまでの幅広い経理実務の経験と、現在取得に向けて学習を進めているUSCPA(米国公認会計士)の知識を活かし、より高度な予実管理や経営陣へのレポーティングを通じて、貴社のさらなる成長に数字の面から貢献したいと考え志望いたしました。
志望する企業が海外展開している場合は、USCPA(米国公認会計士)取得への意欲があることも好ましいとされるため、取得を視野に入れて学習を始めてみるのもおすすめです。
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簿記以外にも、転職活動全体で評価されやすい資格を知っておくと選択肢が広がります。
「転職に役立つ資格とは?後悔しない選び方と業界別おすすめ資格を解説」の記事では、業界別のおすすめ資格や選び方について解説します。
3.志望動機を書くとき・話すときに気をつけたい注意点

内容が整っていても、伝え方次第で印象が下がってしまうことがあります。
書類作成・面接どちらの場面でも避けたい2つのポイントを確認しておきましょう。
1.「勉強させてもらいたい」という受け身の姿勢は避ける
企業は学校ではなく、仕事を通じて成果を出す場所です。
「未経験なので一から勉強させてもらいたい」という言葉は、熱意のつもりでも受け身な姿勢と捉えられがちです。
教えてもらうのを待つのではなく、自ら学ぶ意欲を示し、これまでの経験を活かして貢献するという姿勢で臨むことが大切です。
2. 自己PRと志望理由を整理し、一貫性を持たせる
履歴書や職務経歴書の中で、自分の強み(自己PR)と応募した理由(志望動機)の内容がバラバラにならないよう注意が必要です。
自己PRで伝えた「正確にコツコツ取り組む力」が、志望動機の「経理として細かな数字の管理で会社を支えたい」という理由に自然に繋がっていると、一つのストーリーとして高い説得力が生まれます。
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転職の場合は、退職理由と志望動機の一貫性も採用担当者からよくチェックされるポイントです。
「【例文付】退職理由(本音)と志望動機に一貫性を持たせる方法」の記事では、2つの話をスムーズに繋げる伝え方について解説します。
4.面接で志望動機を伝えるときのポイント

書類に書いた志望動機は、面接では自分の言葉で語り直す必要があります。
伝わりやすく、かつ落ち着いて話すための2つのコツを紹介します。
1. STARメソッドを用いて、これまでの行動と結果を伝える
面接でこれまでの経験を話す際は、「STARメソッド」という思考法で整理すると、話の内容が格段に伝わりやすくなります。
STARメソッドとは、経験を次の4つの要素に分解して整理するフレームワークで、それぞれの頭文字をとって名付けられています。
STARメソッドの4つの要素
- S(Situation:状況):その経験当時、どのような環境や立場に置かれていたか
- T(Task:課題):その状況の中で、どのような課題や目標があったか
- A(Action:行動):課題に対して、自分が具体的にとった行動
- R(Result:結果):その行動によって、どのような成果が得られたか
どのような状況で、どんな課題があり、具体的にどう行動し、どのような結果が出たのかを順序立てて話すことで、初めて話を聞く面接官にも情景がはっきりと伝わります。エピソードが行き当たりばったりにならず、再現性のある人材として印象づけられる点もSTARメソッドの利点です。
また、結果(Result)は「処理時間を20%削減した」など、できる限り具体的な数字で示すとより客観性が高まります。
実際に、業務改善のエピソードをSTARメソッドで整理すると、次のようになります。
STARメソッドを使った回答例(業務改善エピソード)
S(状況)
前職の経理部門では、月次決算のたびに手作業でのデータ突合に時間がかかり、締め日直前は残業が常態化していました。
T(課題)
属人化していた作業フローを見直し、月次決算にかかる時間を短縮することが部署の課題でした。
A(行動)
Excelマクロを使った自動集計の仕組みを提案・作成し、上長や周囲のメンバーの合意を得ながら業務フローに組み込みました。
R(結果)
月次決算にかかる処理時間を月間で約20%削減し、残業時間の削減にもつなげることができました。
このように状況→課題→行動→結果の順で整理すると、面接官にとって理解しやすく、再現性のあるエピソードとして伝えることができます。
2. 面接を「対等な対話の場」として捉えて臨む
面接を「一方的にテストされる場所」と考えると、どうしても緊張しやすくなります。
面接は、企業と自身がお互いの相性を確認し合う「対等な対話の場」です。心理的な観点からも、このように考え方を少し変えるだけで、過度な不安が和らぎ、本来の自分らしい言葉で話しやすくなります。
深呼吸をして肩の力を抜き、リラックスして対話に臨んでみてください。
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志望動機以外にも、面接で聞かれやすい質問への準備をしておくとより自信を持って臨めます。
「転職面接で聞かれること50選|質問の意図と回答例文も紹介」の記事では、頻出質問の意図と回答例をあわせて解説します。
5.よくある質問

ここまでの内容だけでは判断しづらい、細かな疑問にお答えします。
志望動機を仕上げる前の最終チェックとして活用してください。
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中小企業・ベンチャーと大企業とでは、経理の志望動機の書き方を変えるべきですか?
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一般的には、企業の規模によって経理に求められる役割の幅が異なるため、志望動機で強調するポイントを調整するとよいとされています。
大企業では特定分野への専門性、中小企業やベンチャーでは幅広い業務への対応力が意識されやすい傾向があります。応募先の求人内容や企業説明をよく確認したうえで、自分の強みと結びつけて伝えることが大切です。
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志望動機に前職の退職理由をどこまで書いてもいいですか?
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前職への不満や批判を志望動機の中心に据えることは避けたほうがよいとされています。退職理由に触れる場合も、ネガティブな内容をそのまま伝えるのではなく、「〇〇を実現するために転職を決めた」という前向きな表現に言い換えることが一般的です。
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経理の志望動機は何文字くらいで書けばよいですか?
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履歴書や職務経歴書などの書類に記載する場合は「200〜300文字程度」、Web応募フォーム等で指定がない場合は「300〜400文字程度(面接で話す場合は1分程度)」が一般的な目安です。
短すぎると熱意が伝わりにくく、長すぎると要点が曖昧になるため、本記事で紹介した3つの柱を意識してまとめると適切な文字数に収まります。
6.経理の志望動機は3本柱で伝わる文章になる

経理の志望動機では、「なぜ経理なのか」「なぜこの会社なのか」「自分のスキルがどう役立つのか」という3つの柱を、未経験・経験者それぞれの立場から具体的な言葉で結びつけることが重要です。
受け身な姿勢を避け、自己PRと一貫性を持たせながら、面接でも状況・課題・行動・結果を順序立てて伝えることで、採用担当者に説得力のある志望動機を届けられます。
ここで紹介した手順と文例を土台にしながら、自分自身の言葉に落とし込み、納得感のある志望動機に仕上げていきましょう。