職務経歴書の自己PR、何から書けばいいか分からず悩んでいませんか?「アピールできる特別な経験なんてない…」と自信をなくすのは、まだアピールポイントを伝える方法を知らないだけです。
この記事では、経験から「強み」を見つけ出す自己分析術から、採用担当者に響く構成、豊富な例文まで、あなただけの自己PRを完成させる全ステップを丁寧に解説します。
- 職務経歴書の自己PRと、履歴書の自己PRや「長所」との根本的な違い
- 「書くことがない」という悩みを解消し、自分の経験から「強み」を発見する具体的な自己分析の方法
- 採用担当者に響く自己PRの基本構成(テンプレート)と、職種・状況別の豊富な例文
1.そもそも職務経歴書の「自己PR」って何?履歴書との違いも解説
自己PRの作成に取り掛かる前に、まずは「そもそも自己PRとは何か」を正しく理解しておきましょう。特に、履歴書にも自己PR欄があるため、どう書き分ければ良いのか混乱してしまう方も少なくありません。
ここでは、職務経歴書における自己PRの役割と、履歴書との違い、そしてよく混同される「長所」との違いについて、基本的な考え方を整理していきます。
職務経歴書は「あなたの価値」を伝えるマーケティング資料
まず、履歴書と職務経歴書の役割の違いを明確にしましょう。履歴書は、氏名や学歴、職歴などの基本情報を証明するための「公的な性格を持つ書類」です。採用担当者は、応募者が募集の必須条件を満たしているかなどを確認します。
一方、職務経歴書は、これまでの実績やスキルを示し、入社後にどう貢献できるかをアピールするための「あなた自身を売り込むマーケティング資料」と言えます。

形式も自由で、あなたのビジネスパーソンとしての価値を採用担当者に伝え、採用するメリットを感じてもらうことが最大の目的なのです。この違いから、職務経歴書の自己PRは、履歴書よりも具体的に、そして詳細に記述する必要があります。
履歴書の自己PRや「長所」との違い
では、職務経歴書の自己PRは、履歴書の自己PRや「長所」とどう違うのでしょうか。
履歴書の自己PRとの違い
履歴書の自己PR欄はスペースが限られています。そのため、ここではあなたの強みを凝縮した「キャッチコピー」を伝えるイメージです。
一方、職務経書では、そのキャッチコピーの根拠となる具体的なエピソードや実績を交えて、説得力を持たせることが求められます。
「長所」との違い
「長所」は、あなたの性格的な強みや人柄(例:「協調性がある」「真面目である」など)を指します。それに対して「自己PR」は、その長所を活かして、仕事でどのような成果を上げてきたか、そして今後どう企業に貢献できるかという「ビジネス上の強み」を伝えるものです。
単に「私の長所は協調性です」で終わるのではなく、「その協調性を活かして、チームの意見をまとめ、プロジェクトを成功に導きました」と、具体的な成果にまでつなげて語るのが自己PRです。
2.【ステップ1:土台作り】書くことがない?あなたの「強み」を発見する自己分析術

「自己PRが大事なのは分かったけど、肝心のアピールできる経験がない…」これは、転職を考える多くの方が抱えやすい悩みです。若者営業職の約6割が「スキルの言語化」でつまづくと言われています。
しかし、あなたにアピールできることが何もない、ということは絶対にありません。
多くの場合、それは能力がないのではなく、自分の経験を「強み」として言語化・構造化できていないだけなのです。このセクションでは、自分の強みを発見するための具体的な自己分析の方法を解説します。
出典:FNNプライムオンライン 採用担当者の8割以上が重視する「職務経歴書」、若手営業職の約6割が「スキルの言語化」でつまずく現実!採用担当者が求める職務経歴書の書き方
「キャリアの棚卸し」で経験を洗い出す
まずは、過去の経験を客観的に洗い出す「キャリアの棚卸し」から始めましょう。これは、これまでの仕事内容を時系列で書き出し、一つひとつの業務について「何を(What)」「どのように(How)」「なぜ(Why)」を自問自答していく作業です。
「自分にはルーティンワークしかない」と思い込んでいる方へ
例えば、「毎日、伝票処理をしていた」という経験も、深く掘り下げれば強みになります。
- 「なぜ、その手順で処理していたのか?」→ 業務効率を考えて、自分なりに工夫していた → 課題解決能力
- 「後輩に業務を教えた経験は?」→ マニュアルを作成し、分かりやすく伝えた → 指導力・伝達力
- 「ミスなく処理するために心がけていたことは?」→ ダブルチェックの仕組みを徹底した → 正確性・責任感
このように、どんな業務にもあなたの工夫や価値観が隠されています。まずは先入観を捨てて、すべての経験を書き出してみましょう。
どこから取り掛かればいいか分からないとお悩みの方は、AIを使ってキャリアの棚卸をすることも一案です。
参考:BUSINESS INSIDER 次の仕事を考え始めたら、ChatGPTで「キャリアの棚卸し」をしてみよう。転職迷子になる前に
どんな会社でも通用する「ポータブルスキル」に変換しよう
キャリアの棚卸しで見えてきたあなたの経験を、次に「ポータブルスキル」という視点で整理してみましょう。
ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても通用する「持ち運び可能なスキル」のことです。厚生労働省は、これを大きく「仕事のしかた(課題解決、計画実行など)」と「人との関わり方(社内対応、社外対応、部下マネジメントなど)」に分類しています。
例えば、
- 営業職で培った「顧客のニーズを聞き出す力」は、企画職での「ユーザーの課題発見力」に応用できます。
- 事務職で培った「複数の業務を並行して進める力」は、どんな職種でも求められる「タスク管理能力」です。
自分の経験をこの「ポータブルスキル」に変換することで、未経験の職種に応募する際にも、「私には〇〇のスキルがあり、それは貴社のこの業務で活かせます」と、説得力を持ってアピールできるようになります。
Will-Can-Mustで「やりたいこと」と「できること」を整理
最後に、Will-Can-Mustというフレームワークを使って、思考を整理しましょう。これは、「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」「求められること(Must)」の3つの円の重なりから、最適なキャリア領域を見つける自己分析の手法です。

- Will(やりたいこと)
あなたが仕事を通じて実現したいこと、興味があること。 - Can(できること)
これまでの経験やスキルから、あなたができること。キャリアの棚卸しで見つけた強み。 - Must(求められること): 応募先企業が、あなたに求めている役割や成果。
自己PRでは、この3つの円が重なる部分を語ることが理想です。つまり、「企業が求めていること(Must)」に対して、「自分のこのスキル(Can)を活かして」、「こんな風に貢献したい(Will)」と伝えましょう。
このフレームワークで考えることで、企業と自分の両方にとって魅力的な自己PRを作成できます。
アルバイトでも職務経歴書の書き方のコツがあります。詳しくはこちらの記事でご紹介しています。
3.【ステップ2:設計】採用担当者に響く!自己PRの基本構成テンプレート

自己分析でアピールしたい自分の「強み」が見えてきたら、次はその強みを効果的に伝えるための「設計図」を作成しましょう。自己PRは、ただやみくもに自分の言いたいことを書くのではなく、採用担当者が理解しやすく、評価しやすい論理的な構成で伝えることが大切です。
ここでは、多くの成功する自己PRに共通する、最強の基本構成(テンプレート)をご紹介します。この「型」に沿って書くだけで、伝えたいことが明確になります。
【結論】私の強みは〇〇です
まず、最初にアピールしたい強みを一言で明確に述べます。これはプレゼンテーションにおけるPREP法(Point→Reason→Example→Point)の「Point」にあたります。
採用担当者は多くの職務経歴書に目を通すため、最初に結論を伝えることで、あなたが何を伝えたいのかを瞬時に理解してもらえます。

(例1)
「私の強みは、現状を分析し、課題を解決に導くための企画力です。」

(例2)
「チームの目標達成に向けて、メンバーの意見を調整し、協力を引き出すリーダーシップが私の強みです。」
【根拠】強みを裏付ける具体的なエピソード
次に、冒頭で述べた強みが、単なる自己評価ではなく、事実に基づいていることを証明するための具体的なエピソードを記述します。ここは、自己PRの中で最も重要な部分です。あなたの行動とその結果をストーリーとして語ることで、強みに説得力とリアリティが生まれます。
このエピソードを語る際に有効なのが、「STARメソッド」というフレームワークです。

このフレームワークに沿って経験を整理することで、あなたの行動と思考のプロセスが、採用担当者に手に取るように伝わります。
【貢献】入社後にどう活かすか
最後に、その強みを活かして、入社後に企業へどのように貢献できるかを具体的に示して締めくくります。
ここでは、企業研究で得た情報(事業内容、求める人物像など)と自分の強みを結びつけ、「私を採用すれば、こんなメリットがありますよ」という未来のビジョンを提示することが大切です。

(例1)
「この課題解決能力を活かし、貴社の〇〇事業における更なるシェア拡大に貢献したいと考えております。」

(例2)
「前職で培ったチームマネジメントの経験を活かし、貴社の若手メンバーの育成と組織力強化に貢献できると確信しております。」
4.【ステップ3:建築】状況別に使える!自己PRの書き方と例文集

自己分析で材料(強み)を見つけ、基本構成という設計図を手に入れたら、いよいよ自己PR作成していく段階です。ここでは、あなたの状況に合わせてすぐに使える、具体的な自己PRの例文を多数ご紹介します。
これらの例文は、あくまで経験という素材を活かすためのヒントです。丸写しするのではなく、「自分の場合はどうだろう?」と考えながら、自分だけのエピソードに置き換えて活用してください。
アピールしたい「強み」別の例文
あなたの最もアピールしたい強みは何ですか?ここでは「課題解決能力」や「協調性」など、多くの企業で評価される、代表的な強み別の例文を解説します。
ご自身のタイプに近いものを、あなたらしいエピソードに置き換える際の参考にしてください。
希望する「職種」別の例文
希望する職種によって、効果的なアピールの仕方は変わります。ここでは営業や事務といった職種別に加え、未経験の仕事に挑戦する場合の例文もご紹介します。あなたの応募先に合わせ、アピールの切り口を考えるヒントにしてください。
あなたの「状況」別の例文
第二新卒や職務経歴にブランクがあるなど、個別の状況に合わせた例文です。経歴に不安があっても、伝え方次第で強みに変えることができます。あなたの状況に近いものを参考に、アピール方法を工夫してみましょう。
業種別の職務経歴書例文に関しては、こちらの記事でもご紹介しています。
5.【ステップ4:差別化】「その他大勢」から抜け出す!自己PRの質を高める3つのコツ

多くの応募者が基本的な構成に沿って自己PRを作成する中で、あなたの職務経歴書を採用担当者の記憶に残るものにするためには、もう一歩踏み込んだ工夫が必要です。せっかく見つけ出したあなたの素晴らしい強みも、伝え方次第でその他大勢に埋もれてしまうかもしれません。
このセクションでは、あなたの自己PRを「光る原石」から「磨き上げられた宝石」へと変える、差別化のための3つの具体的なコツをご紹介します。
コツ1:「売上15%増」のように数字で語る「定量化」のススメ
自己PRの説得力を飛躍的に高める最も効果的な方法が、実績を具体的な「数字」で示すこと、すなわち「定量化」です。抽象的な言葉は人によって受け取り方が異なりますが、数字は誰にとっても客観的な事実として伝わります。
例えば、
- 「業務を効率化しました」→「資料作成時間を50%削減し、月の残業を10時間減らしました」
- 「売上に貢献しました」→「顧客単価を15%向上させ、年間売上目標を120%達成しました」
- 「多くの顧客に満足してもらいました」→「顧客満足度アンケートで95%の高い評価を得ました」
このように数字を入れることで、あなたの貢献度が具体的になり、採用担当者はあなたの実務能力を正確にイメージしやすくなります。もし直接的な数字が出せない場合でも、「約2倍のスピードで処理できるようになった」のように、比較表現を使うと良いでしょう。
コツ2:企業の「求める人物像」を調べてアピールを合わせる
自己PRは、あなたの言いたいことを一方的に伝える場ではありません。企業の「求める人物像」を理解し、それに自分の強みをマッチさせていく、という視点が不可欠なのです。どれだけ優れたスキルを持っていても、企業が求めている方向性とズレていては、魅力的に映りません。
企業の求める人物像は、
- 企業の採用サイトの「メッセージ」や「社員紹介」
- 求人票の「仕事内容」や「歓迎するスキル」
- 経営者のインタビュー記事
などから読み取ることができます。
例えば、企業が「主体的に行動できる人材」を求めているなら、あなたは「指示待ちではなく、自ら課題を見つけて行動した経験」をアピールすべきです。企業研究をしっかり行い、相手に響く言葉を選んでいきましょう。
コツ3:あなたの「経験」を魅力的な物語にする
最後に、あなたの経験を単なる事実の羅列ではなく、採用担当者の感情に訴えかける「物語(ストーリー)」として語ることを意識してみてください。物語には、人の心を動かし、記憶に残りやすくする力があります。

例えば、「〇〇を達成しました」という結果だけを伝えるのではなく、「当初は〇〇という困難がありましたが、私は△△と考え、□□という行動を起こしました。その結果、〇〇を達成し、この経験から××ということを学びました」と語ることで、あなたの仕事への姿勢や人柄がより深く伝わります。
6.これは避けたい!採用担当者をがっかりさせるNG自己PR例

どんなに素晴らしい経験やスキルを持っていても、伝え方を間違えると、その魅力は半減してしまいます。むしろ、採用担当者にマイナスの印象を与えてしまうことさえあるのです。
ここでは、多くの応募者が陥りがちな、評価を下げてしまう自己PRのNG例を具体的に解説します。これらの典型的な失敗パターンを知り、自分の自己PRが当てはまっていないか、客観的にチェックしてみましょう。こうした「罠」を避けることが、成功への近道です。
NG例1:抽象的で具体性がない
最も多いNG例が、聞こえは良いものの、中身が何もない抽象的な表現に終始してしまうケースです。

【悪い例】
「私の強みはコミュニケーション能力です。前職では、この能力を活かして、多くの人と良好な関係を築き、チームのスムーズな運営に貢献しました。」
この文章では、あなたが「どのように」コミュニケーションをとり、「具体的に」どう貢献したのかが全く分かりません。採用担当者は、あなたの実際の仕事ぶりをイメージすることができず、「本当に能力があるのだろうか?」と疑問に感じてしまいます。
NG例2:企業の求めるものとズレている
自己分析がしっかりできていても、企業研究が不足していると、アピールが的外れになってしまうことがあります。

【悪い例】
(チームワークを重視する企業に対して) 「私は、一人で黙々と作業に集中し、個人の力で目標を達成することにやりがいを感じます。前職でも、個人目標を常にトップクラスで達成してきました。」
個人の目標達成能力が高いことは素晴らしいですが、企業が「チームでの協力」を重視している場合、「この人は組織に馴染めないかもしれない」という懸念を抱かせてしまいます。自分の強みの中から、企業のニーズに合ったものを戦略的に選んでアピールすることが望ましいです。
NG例3:ただの自慢話になっている
実績をアピールすることは大切ですが、謙虚さを欠いた表現は「自慢話」と受け取られ、かえって印象を悪くします。

【悪い例】
「私がプロジェクトに参加すれば、必ず成功します。前職でも、私がリーダーを務めたプロジェクトはすべて成功させ、会社に多大な利益をもたらしました。」
自信を持つことは良いことですが、実績はあくまで周囲の協力があってこそ成し遂げられたものです。成功体験を語る際は、「チームメンバーと協力し」「上司のアドバイスを受け」といった、周囲への配慮や感謝の視点を忘れないようにしましょう。
独りよがりな印象を与えると、協調性がないと判断されかねません。
7.どうしても一人で書けない…そんな時は専門家への相談も一つの手です

ここまで自己PRの書き方をステップごとに解説してきましたが、それでも「どうしても筆が進まない」「自分の書いた内容に自信が持てない」と感じることもあるでしょう。それは決して、あなたの能力が低いからではありません。自分一人で自身を客観視することは、誰にとっても難しい作業なのです。
もし一人で行き詰ってしまったら、ぜひ外部の専門家の力を借りる、という選択肢を思い出してください。それは逃げではなく、賢明な戦略です。転職エージェントのキャリアアドバイザーは、キャリア支援のプロフェッショナルです。
キャリアアドバイザーは…
- 客観的な視点であなたの経験をヒアリングし、自分では気づかなかった「強み」を発見する手伝いをしてくれます。
- 豊富な経験と知識から、あなたの強みが、どのような企業や職種で評価されやすいかを教えてくれます。
- 応募する企業に合わせて、より効果的なアピールの仕方を一緒に考えてくれます。
多くの転職支援サービスは無料で利用できます。一人で悩み続けるよりも、プロの力を借りることで、短時間で質の高い自己PRを完成させ、自信を持って次のステップに進むことができるでしょう。
8.職務経歴書の自己PR文は難しくない!胸を張って自身を売り込もう
この記事では、職務経歴書の自己PR作成について、4つのステップで詳しく解説しました。
まず自己分析で強みを発見し、論理的な構成で設計し、具体例を参考に作成し、最後に差別化のコツで質を高めます。
抽象的な表現や企業ニーズとのズレを避け、数字を用いた具体的なアピールが重要です。一人で困った時は転職エージェントなど専門家に相談することも有効な選択肢です。