就職活動で多くの学生が悩む「志望動機」。何を書けば良いか分からず、手が止まってしまうこともあるのではないでしょうか?
本記事では、単なる書き方マニュアルにとどまらず、採用担当者を惹きつける「PREP法」という基本構成から、多くの学生が抱える「安定」や「待遇」といった本音を、自信を持って語れる「強み」に変換する具体的な技術まで、豊富な例文と共に解説します。
- 採用担当者に伝わる、論理的な志望動機の基本構成(PREP法)
- 「安定したい」などの本音を、魅力的な強みに変換する具体的な言い換え技術
- すぐに使える業界・価値観別の例文と、評価を下げるNGパターンの見分け方
1.なぜ人事は「志望動機」を重視するのか?【最新データで解明】

採用活動において、企業が履歴書の中で「志望動機」を重視するのか。その答えは、近年の採用市場の変化にあります。
多くの企業は、新卒採用において現時点でのスキルや知識以上に、入社後の成長可能性、つまり「ポテンシャル」を見ています。
そして、そのポテンシャルを判断する上で、志望動機は重要な項目となりmさう。ここでは最新のデータを基に、企業側の視点を見ていきます。
企業が新卒者に求める能力について、厚生労働省の調査では「コミュニケーション能力」や「協調性」が「専門知識」を大きく上回る結果となっています。
データが示す「求める人材像」
企業が新卒者に求める能力(厚生労働省調査より)
志望動機は、専門知識だけでは測れない
人間性やチームへの適性を伝える絶好の機会です。
これは、企業が単独で成果を出す人材よりも、チームの一員として周囲と協力し、共に成長していける人材を求めていることのあらわれです。
志望動機は、その学生が「なぜ、数ある企業の中から自社を選んだのか」という問いへの答えです。
その答えの中に、企業の理念や文化への理解度、仕事への熱意、そして将来どのように貢献したいかというビジョンが示されます。
これらを読み解くことで、人事は候補者の価値観や人柄、そして自社のカルチャーに合うかどうか(カルチャーフィット)を判断しているのです。
2.どんな志望動機も3分で伝わる!基本の「PREP」構成術

志望動機の内容が固まっても、それを分かりやすく伝えられなければ意味がありません。
多忙な採用担当者は、毎日数多くの履歴書に目を通します。その中で、短時間で内容を理解させ、興味を引くためには、伝える「型」を知っておくことが非常に重要です。
ここで紹介するのが、あらゆるビジネスシーンで有効な文章構成法である「PREP法」です。
このフレームワークに沿って組み立てるだけで、論理的で説得力のある志望動機が完成します。
PREP法とは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
PREP法
分かりやすく、説得力のある文章を構成するフレームワーク
P
Point (結論)
まず、志望動機の結論を簡潔に述べます。最も伝えたいことを最初に提示することが重要です。
「私が貴社を志望する理由は、〇〇という理念に共感し、自身の〇〇という強みを活かして貢献したいと考えたからです。」
R
Reason (理由)
なぜその結論に至ったのか、その背景となる理由を説明し、結論を裏付けます。
「貴社の〇〇という事業は、私が大学時代に学んだ〇〇の知識を直接活かせる領域であり、大きなやりがいを感じられると確信しています。」
E
Example (具体例)
理由を補強するための具体的なエピソードを盛り込みます。体験談を交えることで、話にリアリティと独自性が生まれます。
「ゼミの研究で〇〇という課題に直面した際、粘り強くデータ分析を続けた結果、新たな解決策を導き出した経験があります。」
P
Point (結論・貢献)
最後に、もう一度結論を述べ、入社後にどのように貢献したいかという意欲を示して締めくくります。
「この経験で培った粘り強さと分析力を活かし、貴社の〇〇部門で即戦力として貢献していきたいです。」
このPREP法を意識するだけで、志望動機は格段に分かりやすく、説得力のあるものになります。
新卒が気を付けるべき履歴書に関する注意点は、こちらの記事で詳しく解説しています。
3.Step 1:「自分の軸」を見つける自己分析 – すべてはここから始まる

魅力的な志望動機を作成するための第一歩は、自分自身を深く理解すること、つまり「自己分析」です。
なぜなら、「自分は何を大切にし、何をしたいのか」という「キャリアの軸」が明確でなければ、企業に対して「なぜこの会社なのか」を説得力を持って語ることができないからです。
ここでは、自身の経験を整理し、価値観を言語化するための具体的なフレームワークを紹介します。これらを用いることで、漠然としていた自分の考えを客観的に見つめ直すことができます。
キャリアプランニングの分野でよく用いられるのが「Will-Can-Must」というフレームワークです。

この3つの円が重なる部分こそが、やりがいを感じながら企業にも貢献できる、最適なキャリア領域です。
例えば、過去の経験を棚卸しする中で、
「チームで目標を達成することに喜びを感じた(Will)」
「アルバイトで後輩の指導役を任され、チームの売上目標達成に貢献した(Can)」
という要素が見つかったとします。
そして、応募先の企業が「チームワークを重視し、若手のうちから主体的な行動を求める(Must)」社風であれば、この3つが重なり、強力な志望動機となり得るのです。
この自己分析を通じて「自分の軸」を確立することが、数ある企業の中から「この一社」を選んだ理由を語るための、揺るぎない土台となります。
4.Step 2:「企業の魂」を見抜く企業研究 – 他社との「違い」はどこにある?

自己分析で「自分の軸」が見つかったら、次はその軸と企業の接点を探す「企業研究」に移ります。
多くの学生が企業研究と聞くと、事業内容や売上規模、福利厚生といった表面的な情報を集めることに終始しがちです。
しかし、人事を惹きつける志望動機を作成するには、もう一歩踏み込み、その企業の「魂」とも言える独自の価値観や文化、そして「なぜその事業を行っているのか」という根源的な理念まで理解することが不可欠です。
優れた志望動機は、「なぜ同業他社ではなく、この会社でなければならないのか」という問いに明確に答えられるものです。そのためには、以下の視点で企業を深く分析してみましょう。
「企業の魂」を見抜く3つの視点
他社との「違い」を見つけるための企業研究
企業の理念・ビジョン
創業者の想いや、企業が社会に対してどのような価値を提供しようとしているか、その根幹にある考え方を確認します。
【調べ方】
- 企業のウェブサイト
- トップメッセージ
- 採用サイトの企業理念ページ
事業の独自性
同じ業界の他社と比べて、製品・サービス、ビジネスモデルにどのような特徴があるかを探ります。
【ヒント】
- 独自の技術や特許
- 特定の顧客層への強み
- 他社にはないサービス展開
社員の働き方・文化
実際に働く社員の雰囲気や価値観を調べ、「若手が活躍できる」といった言葉が、どのような制度や文化に支えられているかを確認します。
【調べ方】
- OB・OG訪問
- インターンシップ
- 企業の公式SNSやブログ
このプロセスを通じて見つけた「他社との違い」と、Step1で見つけた「自分の軸」が重なる点こそが、あなただけのオリジナルな志望動機の核となるのです。
5.Step 3: 経験と理念を繋ぐ「最強のストーリー」作成法【例文で学ぶ】

自己分析で見つけた「自分の軸」と、企業研究で見つけた「企業の魂」。
この二つを繋ぎ合わせ、説得力のある一つの「ストーリー」として語ることが、志望動機作成の最終段階です。
ここでは、具体的なエピソードを用いて自分の強みを証明し、それが企業の理念や事業とどう結びつくのかを示すことが重要になります。
実績を語る際には、「STARメソッド」というフレームワークを使うと、状況を分かりやすく伝えることができるのです。
以下に、業界や価値観別の例文を参考に、自分だけのストーリーを作成してみましょう。
【業界別】志望動機 例文
メーカー業界 例文
私が貴社を志望する理由は、高品質なものづくりを通じて人々の生活を豊かにするという理念に深く共感したからです。
私は大学のロボットコンテストで、チームの設計リーダーを務めました。当初、部品の精度が安定せず苦労しましたが(Situation)、粘り強く原因を分析し、製造プロセスを改善した結果(Action)、大会で準優勝を果たすことができました(Result)。
この経験から、地道な改善を積み重ねることが品質向上に繋がるという信念を持ちました。
貴社の徹底した品質管理体制の下で、私の粘り強さを活かし、世界中の人々を笑顔にする製品開発に貢献したいです。
IT・ソフトウェア業界 例文
私が貴社を志望するのは、最先端の技術を用いて社会課題の解決に挑戦する姿勢に強く惹かれたからです。
私はプログラミングの授業で、地域の高齢者が買い物に困っているという課題を知り、友人たちと簡単な注文アプリを開発しました(Task)。
利用者の方から「本当に助かった」という言葉をいただき(Result)、IT技術が持つ可能性を肌で感じました。
常に新しい技術を追求し、社会に新しい価値を提供し続ける貴社でこそ、私の課題解決への情熱とプログラミングスキルを最大限に発揮できると確信しております。
【価値観別】志望動機 例文
社会貢献を重視する場合の例文
私が貴社を志望する理由は、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献するという強い意志を感じたからです。
私は学生時代、環境NPOの活動に参加し、海岸の清掃活動を企画・実行しました。多くのボランティアの方々の協力を得て、当初の目標を大幅に上回るゴミを回収できたとき、個人の小さな行動が集まることで大きな変化を生み出せることを学びました。
利益追求だけでなく、環境問題にも真摯に取り組む貴社の一員として、社会全体の利益に繋がるような仕事に挑戦したいと考えています。
挑戦・成長を重視する場合の例文
私が貴社を志望するのは、年次に関わらず挑戦の機会を与え、社員の成長を後押しする企業文化に魅力を感じたからです。
私は飲食店のアルバイトで、新人ながら売上向上キャンペーンの企画を提案し、実行を任せていただきました。
当初は周囲の協力を得るのに苦労しましたが、粘り強く説得を続けた結果、全員の協力の下で前月比120%の売上を達成できました。
この経験から、困難な目標に挑戦することの面白さと、やり遂げた時の達成感を知りました。
若手のうちから責任ある仕事を任せ、挑戦を奨励する貴社で、一日も早く成長し、事業の拡大に貢献したいです。
6.【最重要】本音を「伝わる言葉」に変換する技術
就職活動に関する調査を見ると、多くの学生が企業選びで重視するのは「安定性」や「給料の良さ」「ワークライフバランス」であることが分かります。
これらは生活の基盤を築く上で当然の願いであり、決して恥ずかしいことではありません。

しかし、これをそのまま志望動機として伝えると、「受け身」「意欲が低い」と捉えられかねません。
ここでは、その正直な気持ち(本音)を、企業の視点に立った「伝わる言葉(建前)」に変換するテクニックを紹介します。
出典:マイナビキャリアリサーチラボ 2026年卒大学生就職意識調査
「安定して働きたい」を「貴社の持続可能性への貢献意欲」に変換する方法
「安定している会社」を志望する本音の裏には、「腰を据えてじっくりと専門性を高めたい」「長期的な視点で安心してキャリアを築きたい」という前向きな欲求が隠れています。
これを強みに変換しましょう。
変換例
私が貴社を志望する理由は、100年以上にわたり社会からの信頼を勝ち得てきたその安定性と、未来を見据えた持続可能な事業戦略に強く惹かれたからです。
私は、一つの場所で専門性を深く追求し、長期的な視点を持って組織に貢献していくような働き方をしたいと考えています。
変化の激しい時代においても、貴社が築き上げてきた揺るぎない事業基盤の上でこそ、安心して挑戦を続けることができ、私自身も会社と共に成長し、次の100年を創る一員として貢献できると確信しております。
「ワークライフバランスを重視したい」を「長期的な活躍への意欲」として伝える方法
ワークライフバランスを求めるのは、単に「楽をしたい」からではありません。
「心身ともに健康な状態で、長く第一線で活躍し続けたい」という、自己管理能力と長期的な貢献意欲の表れです。
変換例
私が貴社を志望する理由の一つに、社員一人ひとりのライフステージに合わせた多様な働き方を支援し、長期的なキャリア形成を可能にする制度と文化が整っている点が挙げられます。
私は、仕事で高いパフォーマンスを発揮するためには、プライベートの充実による心身の健康が不可欠だと考えております。
貴社のように、社員が長く安心して働き続けられる環境でこそ、自身の能力を最大限に発揮し、継続的に成果を出し続けることで、事業に貢献できると信じています。
「給料が良いから」を「正当な評価制度への魅力」としてアピールする方法
高い給与を求めるのは、自身の能力や成果が正当に評価される環境で働きたいという、プロフェッショナル志向の表れです。
これを、企業の評価制度への魅力として語りましょう。
変換例
私が貴社を志望するのは、挑戦した成果が正当に評価され、社員に還元されるという明確な評価制度に魅力を感じたからです。
私は、自身の努力と成果が会社の成長に繋がり、それが個人の評価としても認められる環境でこそ、最高のモチベーションを維持できると考えています。
実力主義を掲げ、若手であっても成果次第で重要な役割を任せられる貴社で、常に高い目標を掲げて挑戦し、自身の市場価値を高めながら、事業の発展に貢献していきたいです。
7.これはNG!一発で評価が下がる志望動機ワースト5【NG例付き】

どれだけ自己分析や企業研究を重ねても、伝え方を間違えると評価を大きく下げてしまうことがあります。
採用担当者は、志望動機から論理的思考力やコミュニケーション能力だけでなく、入社への本気度も見ています。
ここでは、多くの採用担当者が「がっかりする」志望動機の典型的なNGパターンを、具体的な例文とともに紹介します。
自分の志望動機がこれらに当てはまっていないか、提出前に必ず確認しましょう。
1. 抽象的で具体性がない
NG例
「貴社のグローバルな事業展開に魅力を感じました。私も世界を舞台に活躍したいです。」
なぜNGか
どの企業にも言える内容で、「なぜこの会社なのか」が全く伝わりません。「グローバルな事業」の何に魅力を感じたのか、自身のどのような経験やスキルを活かせるのか、具体的なエピソードが不可欠です。
2. 受け身で学習意欲をアピールしすぎる
NG例
「貴社には充実した研修制度があると伺いました。様々なことを学ばせていただき、成長したいです。」
なぜNGか
企業は学校ではありません。「教えてもらう」という姿勢は受け身な印象を与えます。「成長したい」という意欲は重要ですが、「学んだことを活かして、このように貢献したい」という能動的な姿勢を示す必要があります。
3. 企業の理念を丸写ししているだけ
NG例
「『お客様第一主義』という貴社の理念に深く共感いたしました。」
なぜNGか
理念への共感は大切ですが、それだけでは自分の言葉で語っていません。なぜその理念に共感したのか、自身のどのような経験や価値観と結びついているのかを語らなければ、本気度は伝わりません。
4. 給与や待遇、福利厚生のことしか書いていない
NG例
「貴社の福利厚生が充実しており、長く安定して働ける点に魅力を感じました。」
なぜNGか
仕事内容への興味よりも、条件面を優先していると捉えられます。「本音を伝わる言葉に変換する技術」で紹介したように、伝え方を工夫することが重要です。
5. 他の企業や業界を否定している
NG例
「前職(アルバイト先)は古い体質で、新しい挑戦ができませんでした。その点、貴社は…」
なぜNGか
他責にする傾向がある、あるいは不満が多い人材だというネガティブな印象を与えかねません。転職理由や志望理由は、あくまで前向きな言葉で語ることが鉄則です。
8.Q&A – 新卒の志望動機に関するよくある質問

ここでは、新卒の就職活動生から特によく寄せられる、志望動機に関する素朴な疑問について、Q&A形式で回答します。
履歴書の作成で手が止まってしまったときや、面接の準備で不安になったときに、ぜひ参考にしてください。
これらの疑問を解消することで、より自信を持って選考に臨むことができるはずです。細かな点ではありますが、こうした配慮が採用担当者への印象を左右することもあります。
Q1. 志望動機の適切な文字数はどれくらいですか?
A1. 履歴書のフォーマットにもよりますが、一般的に200字~300字程度が目安です。
指定された欄の8割以上を埋めるように心がけましょう。
短すぎると意欲が低いと見なされ、長すぎて枠からはみ出したり、小さすぎる文字で詰め込んだりすると、読み手への配慮が欠けていると判断される可能性があります。
PREP法を使い、要点を簡潔にまとめる練習が重要です。
Q2. エントリーシート(ES)と履歴書の志望動機は、同じ内容でも良いですか?
A2. 基本的には同じ内容で問題ありません。
ただし、ESの方がスペースが大きい場合は、履歴書の内容をベースに、より具体的なエピソードを加えて詳細に記述すると良いでしょう。
逆に、履歴書の方がスペースが小さい場合は、ESの要点をPREP法に沿って簡潔にまとめる必要があります。
両者で内容が大きく異なると、一貫性がないと見なされる可能性があるため注意が必要です。
Q3. 特にアピールできるようなすごい経験がありません。どうすれば良いですか?
A3. 企業は、必ずしも「リーダー経験」や「海外経験」といった派手な経験を求めているわけではありません。大切なのは、経験の大小ではなく、その経験から何を学び、どのような強みを得たかです。
例えば、「飲食店のアルバイトで、お客様が何を求めているかを常に考えて行動し、『ありがとう』の言葉をもらえるように工夫した」という経験は、「顧客視点」や「主体性」という立派な強みになります。
キャリアの棚卸しを行い、日々の経験を「ポータブルスキル」(課題解決力、計画力など)として言語化してみましょう。
Q4. 公務員を志望する場合、民間の企業と書き方は違いますか?
A4. 基本的な構成は同じですが、強調すべき点が異なります。
公務員の場合は、「なぜ民間企業ではなく公務員なのか」「なぜ他の自治体や省庁ではなく、ここなのか」という点を明確にする必要があります。
そのためには、社会貢献や奉仕への強い動機と、その自治体や省庁が抱える課題や特徴への深い理解を示すことが極めて重要になります。
9.新卒でも採用担当者に刺さる志望動機は書ける!自分らしさをポジティブに表現しよう
本記事では、志望動機を作成するための具体的なステップを解説しました。
大切なのは、まず自己分析で「自分の軸」を理解し、企業研究で「企業の魂」を見つけること。そして、PREP法という論理的な型に沿って、あなただけの経験と企業の理念を結びつけたストーリーを語ることです。
特に、本音を「強み」に変換する技術は、あなたらしさを失わずに熱意を伝える強力な武器になります。この戦略を手に、自信を持って選考に臨んでください。