新卒としての就職活動、特に履歴書作成において、「実務経験がない」という点に不安を感じていませんか。
しかし、理学療法士としてのキャリアの第一歩では、すべての候補者が同じスタートラインに立っています。
大切なのは、学生時代に得た経験、特に臨床実習での学びを、いかにして自身の「強み」として伝えられるかです。
この記事では、単なる履歴書の書き方にとどまらず、臨床実習の経験を「職務実績」としてアピールするための具体的な方法を、例文と共にお伝えします。
- 新卒理学療法士が履歴書で本当にアピールすべきこと
- 臨床実習の経験を「専門職としての強み」に言語化する方法
- 急性期病院や回復期病院など、応募先別に響く志慕動機・自己PRの具体的な例文
1.実務経験ゼロは不安? 新卒だからこそ伝えられる価値がある

「アピールできるような職歴がない…」多くの新卒者が履歴書を前にして最初に抱く悩みです。
しかし、採用担当者は新卒者に即戦力となる完成されたスキルを求めているわけではありません。彼らが見ているのは、将来性、学習意欲、そして理学療法士としての基礎的な思考力です。
その評価の土台となるのが、臨床実習での経験に他なりません。臨床実習は、単位取得のための義務ではなく、理学療法士としての価値観や専門性を培った、いわば最初の「職務経験」です。
この経験を深く掘り下げ、自身の言葉で語ることこそが、他の候補者との差別化につながります。
2.履歴書作成の基本ルール:提出前に確認したい5つのチェックリスト

本格的な内容に入る前に、まずはおさえておきたい基本的なルールを確認しましょう。
どんなに優れた内容でも、形式的なミスが一つあるだけで、「注意力が不足している」という印象を与えかねません。

1. 手書き vs. PC作成の判断基準
かつては手書きが主流でしたが、現在はPC作成が一般的です。
特に指定がない限り、PCで作成する方が効率的であり、修正も容易です。またPCスキルを示すことにも繋がります。
手書きの場合は、丁寧で読みやすい文字を心がけ、修正液の使用は避けてください。間違えた場合は新しい履歴書に書き直すのが基本です。
PC作成では、フォントはゴシック体や明朝体など読みやすいものを選び、文字サイズは10.5~12ポイントが適切でしょう。
ただし、施設によっては「手書きで」と明確に指定される場合もあるため、必ず募集要項を確認してください。どちらの方法でも、内容の充実度が最も重要な評価ポイントとなります。
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履歴書を手書きにするかPCで作成するかは、多くの新卒者が最初に悩むポイントです。こちらの記事ではそれぞれのメリット・デメリットや、企業がどちらを好む傾向にあるのかをデータと共に詳しく解説しています。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。
2. 好印象を与える証明写真のポイント
清潔感のある髪型と服装を心がけ、口角を少し上げて柔和な表情で撮影しましょう。可能ならスピード写真ではなく、写真館で撮影することをおすすめします。
写真は採用担当者が最初に目にする部分であり、第一印象を大きく左右します。男性はスーツにネクタイ、女性もスーツまたはジャケットを着用し、髪が顔にかからないよう整えてください。
背景は白またはブルーが一般的です。撮影から3ヶ月以内の写真を使用し、裏面には氏名を記入して貼付けます。
デジタル写真の場合は、高画質で印刷し、光沢のある写真用紙を使用しましょう。表情は自然で、医療従事者としての誠実さと親しみやすさが伝わるよう意識するといいでしょう。
3. 日付は「提出日」を記入する
履歴書の上部にある日付欄には、作成日ではなく、郵送する日、または持参する日の日付を記入するのが正しいマナーです。
これは書類の鮮度を示す重要な情報であり、採用担当者が選考スケジュールを把握するための基準となります。
郵送の場合は投函日、持参の場合は面接日または書類提出日を記載します。和暦・西暦どちらでも構いませんが、履歴書全体で統一しておきましょう。
また、複数の医療機関に同時応募する場合は、それぞれの提出日に合わせて日付を調整する必要があります。
古い日付の履歴書は使い回しの印象を与えるため、必ず最新の日付を記入しましょう。日付の記入は書類管理の基本であり、医療現場での記録管理能力をアピールする機会でもあります。
4. 「取得見込み」の正しい記載法
免許・資格欄には「理学療法士免許 取得見込み」と正式に記載します。
これは、国家試験合格を前提とした応募資格があることを示す重要な記述です。
国家試験の受験資格を得ていることが前提となるため、養成校の卒業見込み証明書と併せて応募する場合が多いでしょう。
「取得予定」「取得する予定」といった曖昧な表現ではなく、「取得見込み」という正式な表記を使用することがポイントです。
また、取得年月も「令和○年○月 取得見込み」として具体的に記載します。国家試験合格後は速やかに「取得」に修正し、免許証番号も追記しましょう。
その他の資格(普通自動車免許、介護職員初任者研修など)も正式名称で記載し、取得年月を明確に示すことで、自身のスキルを正確に伝えることができます。
5. 誤字脱字はゼロが基本
提出前に、声に出して読み上げるなど、複数回のチェックを徹底しましょう。小さなミスが、仕事全体の正確性を疑わせるきっかけになる可能性があります。
医療現場では記録の正確性が患者の安全に直結するため、採用担当者は特に注意深くチェックしています。
確認方法として、一度書き終えた後に時間を置いてから読み返す、家族や友人に第三者の目でチェックしてもらう、PCの場合はスペルチェック機能を活用するなどが効果的です。
特に、医療用語や施設名、担当者名などの固有名詞は慎重に確認してください。
手書きの場合は丁寧な文字を心がけ、読みやすさも重視しましょう。完璧な履歴書は、あなたの仕事に対する責任感と丁寧さを示す最初のアピール材料となります。
3.【最重要】臨床実習を「職務実績」に変える自己PRの作り方

自己PRは、臨床実習での経験をアピールするための最重要項目です。ここでは、単なる感想文で終わらせないためのフレームワークを紹介します。
キャリアコンサルティングの現場でも用いられる「STARメソッド」を応用し、経験を構造化しましょう。
このフレームワークに沿って経験を整理することで、課題解決能力や主体性を具体的に示すことができます。
実習経験を効果的に伝える自己PR例文
以下の例文は、上記のSTARメソッドを活用した自己PR文です。
単なる実習体験談ではなく、問題解決プロセスと学習成果を明確に示すことで、理学療法士としての思考力と成長意欲をアピールしています。
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臨床実習の経験を言語化するSTARメソッドは強力ですが、他にもアピールできる強みがないか探してみませんか。こちらの記事では、様々な強み別の自己PR例文を豊富に紹介しています。あなたに合ったアピール方法がきっと見つかりますよ。
4.採用担当者の心をつかむ!志望動機の書き方と例文集

志望動機では、「なぜ理学療法士なのか」という原点に加え、「なぜ数ある施設の中で、ここを選んだのか」を明確に伝える必要があります。
そのためには、応募先の理念や特徴を深く理解し、自身の経験や価値観と結びつけることが不可欠です。
産業カウンセリングの考え方では、説得力のある志望動機は以下の3つの要素で構成されると考えられています。
- 理学療法士を目指した原体験や理由
- その施設・法人の理念や特徴に惹かれた理由
- 新卒として、自身の強みをどう活かして貢献できるか
【応募先別】志望動機 例文
ここでは、急性期病院・回復期病院・クリニック/介護施設という代表的な就職先別に、志望動機の例文をご紹介します。
各施設の特徴に合わせたアピールポイントを参考に、自身の経験と結びつけて作成してください。
急性期病院:「チーム医療への貢献意欲」をアピールする例文
5.【項目別】もう迷わない!履歴書の正しい書き方・見本

ここでは、新卒理学療法士が特に迷いやすい履歴書の主要項目について、正しい記載方法を具体的に解説します。
基本的なルールを押さえて、採用担当者に好印象を与える完成度の高い履歴書を目指しましょう。
学歴・職歴欄
学歴は、義務教育は卒業年次のみ、高等学校以降は入学・卒業年次を両方記載するのが一般的です。職歴がない場合は「職歴」の欄に「なし」と記載し、その下の行に右詰めで「以上」と書きます。
臨床実習は職歴には含まれませんが、自己PR欄や志望動機でアピールしましょう。学歴の記載は「〇年〇月 〇〇高等学校 普通科 入学」「〇年〇月 〇〇高等学校 普通科 卒業」の形式で、正式名称を使用します。
養成校については「〇〇大学 医学部 理学療法学科 入学」「〇〇大学 医学部 理学療法学科 卒業見込み」と記載し、学部・学科名まで正確に書きます。
アルバイト経験がある場合でも、短期間や学業に支障のない範囲であれば職歴欄には記載せず、面接で話題にする程度に留めるのが適切です。
免許・資格欄
正式名称で記載します。理学療法士免許は国家試験の合格発表後、免許申請を経て交付されます。
そのため、在学中は「理学療法士免許 取得見込み」と記載します。万が一、免許証交付前に入職する場合は、「登録済証明書」で対応できる場合がほとんどです。
これは、厚生労働省の公式な手続きです。その他の資格として、普通自動車免許は「普通自動車第一種運転免許」、介護職員初任者研修は正式名称で記載します。
英検やTOEICなどの語学系資格、パソコン検定なども業務に関連する場合は積極的に記載しましょう。
ただし、趣味程度の資格や古すぎる資格は避け、取得年月も正確に記入しましょう。
資格欄が空欄にならないよう、学生時代に取得した資格を整理し、医療現場で活かせるものを優先的に記載することがポイントです。
本人希望記入欄
原則として、「貴社(貴院)の規定に従います。」と記載するのが最も無難です。
給与や勤務地など、どうしても譲れない条件がある場合のみ簡潔に記載しますが、基本的には面接の場で確認・相談するのが望ましいでしょう。
特に新卒の場合、条件面での希望を強く主張すると協調性に欠ける印象を与える可能性があります。
やむを得ない事情(家庭の介護、通勤時間の制限など)がある場合は、「家庭の事情により通勤時間〇時間以内を希望いたします」などと具体的かつ簡潔に記載します。
また、複数の部署がある大規模病院では「急性期病棟希望」などの配属希望を記載することも可能ですが、柔軟性も併せて示すため「可能であれば」などの表現を加えると良いでしょう。
空欄は避け、必ず何らかの記載をすることがマナーです。
6.よくある質問(FAQ)

履歴書作成において新卒理学療法士からよく寄せられる質問にお答えします。
基本的なマナーから提出方法まで、実際の就職活動で迷いがちなポイントを整理しましたので、不安を解消して自信を持って応募に臨んでください。
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履歴書はどこで買うのがおすすめですか?
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文房具店や書店、スーパー、コンビニエンスストアなどで購入できます。JIS規格のものなど、シンプルで標準的なフォーマットのものを選ぶと良いでしょう。
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添え状は必要ですか?
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必須ではありませんが、同封するのがより丁寧な印象を与えます。特に郵送の場合は、誰が・何を・何のために送ったのかを明確にする役割があります。
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提出方法(郵送・持参)のマナーは?
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郵送の場合は、クリアファイルに挟んでから、サイズの合った封筒に入れます。封筒の表面には赤字で「履歴書在中」と記載しましょう。持参の場合は、封筒に入れた状態で、面接官に直接渡す直前に封筒から出して提出します。
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履歴書が完成したら、最後の関門が提出です。特に郵送の場合、封筒の書き方や切手代、送付マナーなど、細かいけれど重要なルールがたくさんあります。こちらの記事を参考に提出で失敗しないために、郵送・持参それぞれのマナーを最終確認しておきましょう。
7.まとめ
新卒理学療法士にとって、履歴書作成は単なる作業ではなく、学生時代の経験を専門家としての価値にどう結びつけるかを考える「最初の臨床判断」です。
臨床実習での学びを自身の言葉で構造化し、応募先への貢献意欲を示すことで、自信を持ってキャリアの第一歩を踏み出せます。