「中卒だから、正社員なんて無理だろうな…」
「どんな仕事なら自分にもできるんだろう…」
「履歴書に書けるような学歴や資格がなくて、自信が持てない…」
こうした不安や焦りを抱えているかもしれません。周りの友人と自分を比べてしまい、心が苦しくなることもあるかと思います。
ですが、学歴はものさしの一つに過ぎません。今の時代、企業が採用で本当に見ているのは、学歴の「その先」にある可能性です。
この記事では、中卒からの就職という現実と、それを乗り越えるための具体的な方法を解説します。
- 最新の公的データに基づく、中卒の就職におけるリアルな現状
- 学歴そのものより、企業が採用で本当に重視しているポイント
- 未経験から正社員を目指すための、後悔しない仕事選びと就活5ステップ
1.【最新データ】中卒の就職、現実はどう?正社員になれる割合は?
まずは、中卒の就職状況について解説していきます。
厚生労働省が発表した最新の調査(令和5年若年者雇用実態調査)によると、最終学歴が中学校である人のうち、正社員として働いている人の割合は35.4%です。
これは、高校卒業者(58.9%)や大学卒業者(81.2%)と比べると、確かに低い数字です。
また、収入の面でも、学歴によって差があるのが現実です。
しかし、この数字を見て落ち込む必要はありません。その背景を次の章で説明していきます。
2.企業は学歴より「人柄」を見ていた!採用担当者が本当に求める3つのこと

「学歴に自信がない…」という方にこそ、知ってほしいことがあります。
それは、多くの企業、特に若い人材を求めている会社が、学歴そのものよりも、「人となり」や「仕事への姿勢」をずっと重視しているという事実です。
先ほどと同じ厚生労働省の調査で、企業が若者を採用する際に重視する点を聞いたところ、学歴よりもはるかに上位にきた答えが3つあります。
1. 職業意識・チャレンジ精神(熱意)
「この仕事を通じて成長したい」「何事にも前向きに取り組みたい」という熱意です。
たとえ経験がなくても、「一生懸命学びます!」という姿勢は、何よりも高く評価されます。
2. コミュニケーション能力(素直さ)
これは、上手に話す能力というよりも、人の話をきちんと聞き、分からないことを「分かりません、教えてください」と素直に言える力のことです。
明るい挨拶ができる、返事がしっかりできる、といった基本的なことも含まれます。
3. 人柄(長く続ける覚悟)
企業は、採用した人にできるだけ長く働いてほしいと願っています。
そのため、真面目さ、誠実さ、責任感といった人柄を見て、「この人なら、すぐに辞めずに頑張ってくれそうだな」と思えるかどうかを判断しています。
3.後悔しない仕事選びの3つの軸

「よし、頑張ろう!」と思っても、次に「じゃあ、どんな仕事を選べばいいんだろう?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
せっかく就職するなら、「こんなはずじゃなかった…」と後悔したくないものです。
実際に、若者が最初に就職した会社を辞めてしまう理由の上位には、「労働時間・休日の条件が合わなかった」「人間関係が良くなかった」「仕事が自分に合わなかった」といったことが挙げられています。
こうしたミスマッチを防ぐために、キャリアコンサルティングの世界ではよく使われる、自分に合った仕事を見つけるための「3つの輪」という考え方があります。
自分に合った仕事を見つける「3つの輪」
1. やってみたいこと(Will)
「面白そうだな」「好きだな」と感じることは何ですか? 難しく考えず、「人と話すのが好き」「コツコツ作業するのが好き」「体を動かすのが好き」といったことで構いません。
2. 自分にできること・できそうなこと(Can)
「自分にはスキルなんてない」と思っていませんか? そんなことはありません。「時間を守れる」「頼まれたことはきちんとやる」「毎日コツコツ続けられる」といったことも立派な「できること」です。
3. 社会から求められていること(Must)
世の中にはどんな仕事があり、どんな人が求められているかを知ることです。たとえば、高齢化社会で介護の仕事のニーズが高まっている、といったことがこれにあたります。
この「Will」「Can」「Must」の3つの輪が重なる部分に、後悔せず、長く続けられる仕事が見つかる可能性が高いのです。
「1年で辞める」を防ぐには?若者のリアルな離職理由から学ぶ会社選び
自分に合った仕事の軸を見つけるのと同じくらい大切なのが、「こんなはずじゃなかった…」という入社後のミスマッチを防ぐことです。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が厚生労働省の調査を分析したレポートによると、多くの若者が初めて勤務した会社を辞めてしまう理由の上位には、常に共通の3つの壁が立ちはだかっています。
- 労働条件の壁:「給料が思ったより低い」「休みが少ない、残業が多い」
- 人間関係の壁:「上司や同僚と合わない」「職場の雰囲気が悪い」
- 仕事内容の壁:「仕事が自分に合わない、つまらない」「想像していた仕事と違った」
これらのミスマッチは、求人票を少し注意深く読み解くことで、ある程度見抜くことが可能です。
求人情報を見る際は、以下のポイントをチェックするクセをつけましょう。
✅ 労働条件のチェックポイント
□ 給与:月給の総額だけでなく、「基本給」はいくらか、「固定残業代(みなし残業代)」が含まれていないかを確認しましょう。
□ 休日:「週休2日制(月に1回以上、週2日の休みがある)」と「完全週休2日制(毎週必ず2日休める)」は意味が違います。年間休日数が110日以上あると、比較的ゆとりがあると言われます。
□ 福利厚生:住宅手当や資格取得支援制度などが充実しているか。会社の従業員への姿勢が表れます。
✅ 人間関係・社風のチェックポイント
□ 求人票の言葉遣いやデザインはどんな雰囲気ですか?(例:体育会系、真面目そうなど)
□ 会社のホームページやSNSを見てみましょう。「社員の声」や社内イベントの写真などから、リアルな雰囲気が感じ取れることがあります。
✅ 仕事内容のチェックポイント
□ 「簡単な〇〇」といった曖昧な表現だけでなく、具体的にどんな作業をするのかが書かれていますか?
□ 「入社後の研修制度」や「1日の仕事の流れ」といった記載はありますか? 具体的なほど、入社後のイメージが湧きやすくなります。
少しでも「あれ?」と疑問に思ったら、面接の際に遠慮なく質問することが、後悔しない会社選びの最大のコツです。
参考:労働政策研究・研修機構(JILPT):若年者雇用実態調査に関する分析レポート
4.タイプ別!中卒から正社員を目指せるおすすめの仕事

先ほどの「3つの軸」を踏まえて、学歴不問の求人が多く、未経験からでもチャレンジしやすい仕事をタイプ別にご紹介します。
【タイプ1】コツコツ作業や運転が好き(安定・堅実タイプ)
【タイプ2】人と話したり、お世話したりするのが好き(コミュニケーションタイプ)
【タイプ3】新しいスキルを身につけて専門家になりたい(チャレンジタイプ)
5.学歴の不安を自信に変える!取るべき資格とスキル

就職活動を進める上で、何か一つでも「自分にはこれがある」と言えるものがあると、大きな自信になります。
資格取得は、そのための最も分かりやすい方法の一つです。
まずはコレ!社会人としての基礎体力をつける資格
・マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)
WordやExcelといった、どんな仕事でも使うパソコンスキルの証明になります。「パソコン使えます」と口で言うより、ずっと説得力があります。
・ITパスポート(国家資格)
ITに関する基本的な知識があることの証明です。ITエンジニアを目指す人だけでなく、事務職や営業職でも持っていると評価されます。
専門職へのパスポートになる資格
・フォークリフト運転技能講習
工場や倉庫で働くなら、持っていると非常に有利な資格です。仕事の幅が広がり、給料アップにも繋がります。
・宅地建物取引士(国家資格)
不動産業界で働く上で強力な武器になる国家資格です。合格は簡単ではありませんが、取得できれば学歴に関係なく専門家として認められます。
専門的なスキルを身につけたいけれど、お金が心配…という方もいるかもしれません。
そんな時は、ハローワークで相談できる『教育訓練給付制度』など、国が費用の一部を補助する公的なサポートも活用できます。
対象となる講座や条件があるため、まずは最寄りのハローワークで相談してみましょう。
6.ゼロから始める就職活動の5ステップ

「よし、やってみよう!」と思っても、何から手をつけていいか分からないかもしれません。
ここでは、就職活動のステップをご紹介していきます。
ステップ1:一人で悩まず、相談できる場所を見つける
まず一番大切なのは、一人で抱え込まないことです。就職活動は、時に心細くなるものです。そんな時、客観的なアドバイスをくれる専門家の存在は、大きな支えになります。
地域の公的な就職支援機関を積極的に活用しましょう。
ハローワーク
全国にあり、求人情報の紹介だけでなく、応募書類の添削や面接練習など、具体的なサポートをしてくれます。職業訓練の相談もできます。
ジョブカフェ(若者しごとセンター)
都道府県が運営しており、若者の就職支援に特化しています。キャリアカウンセリングや各種セミナーが充実しています。
地域若者サポートステーション(サポステ)
働くことに悩みを抱える若者に対し、コミュニケーション訓練など、一人ひとりに合わせたプログラムでじっくりと向き合ってくれます。
これらの機関はすべて無料で利用でき、秘密は固く守られます。まずは「ちょっと話を聞いてもらう」くらいの気持ちで、気軽に足を運んでみてください。
ステップ2:自分の「良いところ」を言葉にしてみる(自己分析)
「自分にはアピールできる強みなんてない…」と思い込んでいませんか?
それは、自分の良いところに気づいていないだけかもしれません。企業に自分を売り込む前に、まずは自分という商品をよく知る「自己分析」を行いましょう。
難しく考えず、ノートとペンを用意して、以下の質問に答える形で書き出してみましょう。
これまでの人生で楽しかったこと、夢中になったことは?
そこから、「好きなこと」や「興味・関心」が見えてきます。
人から「ありがとう」と言われたり、褒められたりしたことは?
友人や家族からの言葉に、客観的な「強み」が隠されています。
特に意識しなくても、当たり前にできてしまうことは?
「時間を守る」「整理整頓が得意」など、自分では普通だと思っていることこそ、他人にはない立派な「才能」です。
「部活を3年間続けた(継続力)」「アルバイトで遅刻したことがない(真面目さ)」といった些細な経験こそ、素晴らしい「強み」なのです。
ステップ3:想いを伝えるための応募書類を準備する
自己分析で見つけた魅力を、企業に伝えるための道具が「履歴書」と「職務経歴書」です。それぞれの役割を理解して準備しましょう。
履歴書は「身分証明書」
氏名や学歴、資格などを正確に書くことが求められる公的な書類です。誤字脱字がないよう、丁寧に作成しましょう。
証明写真は第一印象を決める大切な要素なので、スピード写真ではなく、写真館で撮ってもらうことをおすすめします。
職務経歴書は「プレゼン資料」
これまでの経験を通じて「何ができるのか」「どう貢献できるのか」を自由にアピールする書類です。
アルバイト経験でも構いません。「ただレジを打っていた」ではなく、「お客様が何を求めているか考え、笑顔で接客することを心がけた」といった工夫した点や意識したことを書くと、ぐっと魅力が増します。
ステップ4:自信を持って話すための面接練習をする
面接は「テスト」ではなく、お互いを理解するための「対話の場」です。準備をすればするほど、自信を持って話せるようになります。
自分の強みを効果的に伝えるには、具体的なエピソードを交えて話すことが重要です。以下の順番で話の構成を組み立てる練習をしてみましょう。
- S (Situation): 状況 → どんな場面で?
- T (Task): 課題 → どんな目標や問題があった?
- A (Action): 行動 → それに対して、どう考え、行動した?
- R (Result): 結果 → その結果、どうなった?
この「STAR(スター)メソッド」というフレームワークを使うと、話が分かりやすくなり、説得力が格段にアップします。誰かに聞いてもらいながら練習すると、さらに効果的です。
ステップ5:やる気を見せる「逆質問」を準備する
面接の最後にほぼ必ず聞かれる「何か質問はありますか?」という問いは、やる気をアピールする最大のチャンスです。
ここで「特にありません」と答えるのは、非常にもったいないことです。
事前にその企業について調べた上で、質問を3つほど準備しておきましょう。
<良い質問の例>
「もし入社させていただけた場合、活躍するために今から勉強しておくべきことはありますか?」
「チームで仕事を進める上で、最も大切にされていることは何ですか?」
「〇〇様(面接官)が、このお仕事で一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?」
<避けるべき質問の例>
調べればすぐに分かること(例:御社の主力商品は何ですか?)
給与や休日など、条件面に関する質問ばかり(最初の面接では特に避けるべきです)
逆質問は、どれだけその会社で働きたいかを伝える最後のひと押しになります。しっかりと準備して、面接に臨みましょう。
7.「やっぱり無理かも…」心が折れそうな時のための心の守り方
就職活動は、うまくいかないことが続いて、心が折れそうになる時もあります。
社会から自分だけが取り残されたような孤独感に襲われることもあるでしょう。
そんな時は、自分を責めないでください。まずは、これまで頑張ってきた自身の心を、優しく守ってあげる方法を知っておきましょう。
不採用は「人格否定」ではなく「ミスマッチ」と捉え直す
お祈りメールや不採用通知を受け取ると、「自分はダメな人間なんだ」と、まるで人格そのものを否定されたように感じてしまいますよね。
しかし、これは「認知の歪み」と呼ばれる、ストレスがかかった時に陥りやすい心のクセの一つです。
事実は「その会社の今の募集内容」が合わなかった、ただそれだけです。
これを心理学では、物事の捉え方を変える「認知リフレーミング」と言います。不採用通知が来たら、意識的にこう考えてみましょう。
「この会社とはご縁がなかった。もっと自分に合う会社が他にあるというサインだ」
「採用担当者との相性が悪かっただけかもしれない」
「自分の良さが伝わらなかったのは残念だけど、次は伝え方を工夫してみよう」
不採用は「失敗」ではなく、より良い会社と出会うための貴重な「経験」なのです。
他人と比べず、昨日の自分と比べる
SNSを開けば、友人が活躍している様子が目に入り、焦りや劣等感を感じてしまうかもしれません。
しかし、他人と自分を比べても、心は疲弊するだけです。比べる相手は、他人ではなく「過去の自分」です。
そのために、「できたことノート」をつけてみることを強くおすすめします。どんなに些細なことでも構いません。今日、就職活動に関してできたことを書き出してみましょう。
- 求人サイトを10分間ながめた
- ハローワークの場所を調べた
- 履歴書用のボールペンを買った
- 面接で着ていく服を考えた
「こんなことで?」と思うような小さな一歩で大丈夫です。
結果ではなく、行動したという「プロセス」そのものを自分で認め、褒めてあげる習慣が、自己肯定感を少しずつ回復させてくれます。
心と体は繋がっている。意識的に「何もしない時間」を作る
不安やストレスを感じている時、私たちの体は無意識に緊張し、固くなっています。心の健康を保つためには、体の緊張をほぐしてあげることが非常に効果的です。
意識的に「就職活動のことを一切考えない時間」を作りましょう。
- 天気の良い日に、少し長めに散歩してみる
- 好きな音楽をイヤホンで大音量で聴く
- 湯船にゆっくり浸かって、深呼吸する
- スマートフォンを置いて、いつもより早く寝る
「何もしない」ことに罪悪感を覚える必要は全くありません。
これは、前に進むための大切な「休憩」であり、次の一歩を踏み出すためのエネルギーを充電する時間なのです。
辛い時は、迷わず誰かに「助けて」と言う
一番やってはいけないのは、すべての辛さを一人で抱え込んでしまうことです。苦しい気持ちを誰かに話すだけで、心の重荷は驚くほど軽くなります。
家族や友人に話しにくいのであれば、ハローワークや人材紹介のキャリアアドバイザーを頼るのも一つの手です。
彼らは就職活動支援のプロであると同時に、話を聞くプロでもあります。守秘義務があるので、どんなことでも安心して話せます。
言葉にして吐き出すことで、自分の頭の中が整理され、何に悩んでいたのかが明確になることもあります。
助けを求めることは、決して弱いことではありません。むしろ、自分の状況を客観的に見て、次の一手を打つための賢い戦略なのです。
8.大切なのは「これからどう行動するか」
中卒からの就職は、正しい知識と準備があれば決して難しいことではありません。
大切なのは、学歴を理由に諦めるのではなく、「これからどう行動するか」という未来に目を向けることです。
企業が見ているのは、熱意、素直さ、そして真面目さです。自分に合った仕事の軸を見つけ、資格の勉強を始め、一歩ずつ就職活動のステップを進めていけば、必ず道は開けます。