ビジネスシーンにおける「弊社」と「当社」の使い分けは、正しくできていますか。
「何となく使っているけど、実は自信がない…」
「面接でつい『当社では』と言ってしまい、後でヒヤリとした経験がある」
特に、これから社会に出る学生の方や、キャリアアップを目指す転職活動中の方にとって、言葉遣いは第一印象を決定づける重要なスキルです。
面接はもちろん、企業とのメールのやり取りや、内定後のコミュニケーションまで、あらゆる場面でご自身の評価に繋がります。
この記事では、「弊社」と「当社」の根本的な違いから、就職・転職活動で即実践できる使い方まで、分かりやすく解説します。
言葉遣い一つで、相手に与える印象は大きく変わります。
参考:「ビジネスパーソン1000人調査」【ビジネスマナー編】 | 一般社団法人日本能率協会のプレスリリース
- 「弊社」と「当社」の根本的な違いと、使い分けの基本ルールについて
- メールや面接など、就職・転職活動の具体的なシーン別の正しい使い方について
- 採用担当者の視点や、言葉遣いを習慣化する実践的なトレーニング方法について
1.1分でわかる「弊社」と「当社」使い分け早見表
まずは「弊社」と「当社」使い分け早見表をご紹介します。この表さえ覚えておけば、大きな失敗は防げます。
| 弊社(へいしゃ) | 当社(とうしゃ) | |
|---|---|---|
| 言葉の種類 | 謙譲語 | 丁寧語 |
| 主な使い方 | 社外の相手に使う | 社内の相手に使う |
| ニュアンス | 相手を立て、へりくだる | 事実を丁寧に伝える |
| 具体例 | 取引先、顧客、面接官 | 上司、同僚、部下 |
| 例外 | なし | 社外でも使うケースあり |
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正しい言葉遣いと合わせて、自己PRの内容自体も重要です。こちらの、採用担当者の心をつかむ自己PRを4つのステップで分かりやすく解説した記事もぜひご参照ください。
2.なぜ使い分けるの?「弊社」と「当社」の根本的な違い

早見表で概要は掴めたかと思いますが、なぜこのような使い分けが必要なのでしょうか。
その理由を理解することが、応用力を身につける一番の近道です。
弊社:相手への「敬意」を示す謙譲語

「弊社」は、自分の会社をへりくだることで、話している相手や相手の会社に敬意を示す「謙譲語」です。
日本のビジネスコミュニケーションでは、相手を立てる文化が根付いています。
社外の取引先やお客様に対して「弊社」を使うのは、「あなたのことを尊重していますよ」というメッセージを伝える、とても大切なマナーなのです。
当社:事実を伝える「丁寧語」

「当社」は、単に「わたしの会社」という意味を丁寧に表現する「丁寧語」です。ここには、へりくだるニュアンスは含まれません。
社内の会議で、上司や同僚に対して自社のことを話すのに、へりくだる必要はありませんよね。身内に対しては、事実を客観的かつ丁寧に伝える「当社」が適切となるわけです。
参考:
「御社と貴社」「当社と弊社」の違いって?|リクナビNEXT
「弊社」|Weblio辞書
「当社」|Weblio辞書
7割が間違える!「弊社・当社・自社」の違いと、正しい使い分け – うんちく(unchi-co)
3.語彙を広げる関連用語の使い分け
「弊社」「当社」以外にも、会社を指す言葉はたくさんあります。整理しておきましょう。
4.【シーン別】これで完璧!具体的な使い方と例文

ここからは、就職・転職活動やビジネスシーンの具体的な場面を想定して、どちらの言葉を使えば良いのかを例文と共に見ていきましょう。
社外向け:「弊社」「御社」「貴社」が基本
社外の関係者と話すときは、例外を考える前に、まず「弊社」を使うと覚えておけば間違いありません。
ビジネスメール・文書
企業への問い合わせやOB訪問のお礼メールでは、相手企業を「貴社」と表現します。
問い合わせメールの例文
件名:新卒採用に関するお問い合わせ(〇〇大学 田中太郎)
株式会社□□ 人事部 採用ご担当者様
はじめまして。〇〇大学の田中太郎と申します。
貴社のWebサイトを拝見し、〇〇事業に大変魅力を感じております。
営業メールの例文
「この度は、弊社の新サービス「△△」についてご案内させていただきたく、ご連絡いたしました。」
電話応対
転職活動中、内定先企業と現在の職場について話す際は、使い分けが重要になります。
内定後の電話応対の例文
「お世話になっております。先日内定のご連絡をいただきました田中です。入社日の件ですが、現在の職場と相談し、弊社(=現職の会社)の規定に沿って、〇月△日には退社可能です。」
「ご連絡ありがとうございます。現在の職場とも相談の上、弊社(=現職の会社)の規定に沿って、〇月△日までには退社可能です。」
会社の基本的な電話応対の例文
「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇でございます。」
「恐れ入ります、ただいま担当者は席を外しております。戻りましたら、弊社から折り返しお電話させます。」
応募書類(履歴書・職務経歴書)
応募書類は、応募先企業に提出する公式な書類です。相手企業は「貴社」、現在または過去に所属した会社は「弊社」と書くのが適切です。
「2022年4月に株式会社〇〇に入社後、法人営業部に配属。弊社の主力商品である「△△」の新規顧客開拓に従事し、貴社の事業にも貢献できると考えております。」
商談・挨拶
「本日は、弊社のためにお時間をいただき、誠にありがとうございます。」
「弊社の強みは、〇〇という点にございます。」
社内向け(上司・同僚):「当社」を使う
社内でのコミュニケーションでは、丁寧語である「当社」を使用します。
会議・プレゼン
「それでは、当社の今期の営業戦略についてご説明します。」
「このプロジェクトは、当社の未来にとって非常に重要です。」
報告書・社内通達
「当社の新しい経費精算システムについて、以下の通り通達します。」
「調査の結果、当社の市場シェアは前期比で5%向上したことが分かりました。」
5.【応用編】これを知れば一人前!社外で「当社」を使う例外ケース

基本は「社外では弊社」ですが、例外的に社外の相手にも「当社」を使うケースがあります。
これらを使いこなせると、より知的で洗練された印象を与えることができます。
会社の意思を強く表明する場面(交渉・プレゼンなど)
相手と対等な立場で交渉したり、自社の理念や方針を力強く主張したりする場面では、へりくだる「弊社」ではなく、毅然とした響きのある「当社」が使われることがあります。
「その条件については、当社としては受け入れがたいものがあります。」
不特定多数への公式発表(Webサイト・プレスリリースなど)
自社のウェブサイトやプレスリリース、講演会など、不特定多数に向けて公式な情報を発信する際は、へりくだる必要がないため「当社」が使われます。
「当社は、本日、株式会社△△との業務提携に合意いたしました。」
毅然とした態度が必要な場面(クレーム対応など)
お客様からのクレーム対応などで、会社の公式な見解や方針として、はっきりと物事を伝える必要がある場合にも「当社」が用いられます。
「誠に申し訳ございませんが、その件に関しましては当社の規定により対応いたしかねます。」
6.うっかりやってない?間違いやすいNG例と正しい言い換え

知識として理解していても、緊張するとつい間違えてしまうものです。
よくある失敗を確認しておきましょう。
【NG例①】就職・転職の面接
NG:「当社を志望した理由は、〇〇という企業理念に共感したからです。」
OK:「御社(貴社)を志望した理由は、〇〇という企業理念に共感したからです。」
NG:「学生時代は〇〇に力を入れ、当社に貢献できると考えております。」
OK:「学生時代は〇〇に力を入れ、御社(貴社)に貢献できると考えております。」
(解説)面接は、個人が企業という組織を訪問する、社外の人間同士のコミュニケーションです。
面接では相手の会社を「御社(話し言葉)」や「貴社(書き言葉)」と呼ぶのがマナーです。
「弊社」は、入社後にその会社の一員として社外の人と話すときに使います。この違いを理解しているかは、社会人としての基礎力や学習意欲を測る一つの指標と見なされることもあります。
【NG例②】社内の上司への報告
NG:「部長、先日訪問した取引先ですが、弊社の製品に大変興味を持っていました。」
OK:「部長、先日訪問した取引先ですが、当社の製品に大変興味を持っていました。」
(解説)社内の人間である部長に、へりくだる必要はありません。
【NG例③】顧客への自社製品の紹介
NG:「当社の製品は、品質に絶対の自信を持っております。」
OK:「弊社の製品は、品質に絶対の自信を持っております。」
(解説)お客様に対しては、敬意を示す「弊社」が基本です。ただし、前述の「意思を強く表明する」意図で、あえて「当社」を使う高等テクニックもあります。
7.その言葉遣いが合否を分ける?採用担当者は「弊社/御社」をこう見ている

採用担当者は応募者の何気ない言葉遣いから、多くのことを見て取っています。
例えば、「弊社/御社」を正しく使えるか。これは単なるマナーの問題ではありません。
採用担当者は、そこから「相手への敬意を払えるか」「基本的な学習能力があるか」「入社後、顧客に失礼のない対応ができるか」といった、見えない能力を推し量っています。
応募者のスキルや経験が同程度だった場合、こうした社会人としての基礎力が最終的な決め手になることも少なくありません。
「弊社/御社」の使い分けは、そうした能力を持っていることをアピールする、小さくても重要な機会なのです。
8.【実践編】就活・転職で失敗しない!言葉遣い習慣化トレーニング
知識を「できる」に変えるための、具体的なトレーニング方法をご紹介します。
1. エントリーシート・職務経歴書の音読チェック
書類を書き終えたら、必ず声に出して読んでみましょう。「貴社」と書くべきところで「弊社」と言っていないか、音で確認することでミスに気づきやすくなります。
2. 模擬面接で徹底的に意識する
キャリアセンターの職員や転職エージェントとの模擬面接は、絶好の練習の場です。「『御社』を絶対に間違えない」と意識して臨み、客観的なフィードバックをもらいましょう。
3. 企業説明会の動画で聞き分ける
企業の採用担当者が、自社について話す際に「弊社」と言っているか、「当社」と言っているかを聞き分けてみましょう。どのような文脈で使い分けられているかを理解する、良いトレーニングになります。
9.契約書など公式文書での呼び方

一般的なビジネスシーンとは別に、契約書などの法的な文書では「弊社」や「当社」とは異なる特殊な呼称が使われる慣習があります。
「甲・乙」の慣習について
日本の契約書では、当事者を「甲(こう)」「乙(おつ)」といった記号的な呼称で指名することが一般的です。
これは、長い会社名を繰り返し記述するのを避け、契約書のひな形として汎用性を持たせるための工夫です。契約書レビューの際などには、こうした慣習も知っておくと役立ちます。
10.「弊社」「当社」の使い分けに関するQ&A

最後に、皆様からよくいただく質問や、就職・転職活動ならではの疑問にお答えします。
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もし面接で間違えてしまったら、どうすれば良いですか?
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誰にでも言い間違いはあります。大切なのは、その後の対応です。もし会話の途中で気づいたら、「失礼いたしました。『御社』の〇〇という点に惹かれております」のように、その場ですぐに、かつ冷静に訂正すれば問題ありません。間違いを恐れすぎず、誠実なコミュニケーションを心がける姿勢が何よりも重要です。
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アルバイトの面接でも、「御社」といった言葉を使うべきですか?
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はい、アルバイトであっても、採用面接はフォーマルなビジネスコミュニケーションの場です。正しい言葉遣いができることは、自身の責任感や学習意欲をアピールすることに繋がり、他の応募者と差をつけることができます。
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インターンシップ中の日報では、会社を何と呼ぶのが正しいですか?
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インターンシップ先企業の社員(上司やメンター)に提出する日報など、社内向けの文書であれば「当社」を使うのが適切です。ただし、企業文化によって異なる場合もあるため、迷った場合は指導担当の方に「日報などでは御社をどのようにお呼びすればよろしいでしょうか」と事前に確認すると、より丁寧な印象になります。
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社外の人との会話で、とっさに迷ったらどちらが安全ですか?
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もし社外の人との会話で迷ったら、とりあえず「弊社」と言っておけば、失礼にあたることはまずありません。まずは「社外の相手には弊社」を徹底することから始めましょう。
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アルバイトの面接でも正しい敬語は重要です。こちらの記事で、履歴書作成から志望動機、自己PRまで、アルバイト応募に必要な情報を網羅したガイドも参考にしてください。
11.「弊社」と「当社」を使いこなし、信頼される社会人へ
本記事では「弊社」と「当社」の使い分けについて、基本的な違いから特に就職・転職活動の場面に焦点を当てて解説しました。
大切なのは、これが単なるマナーではなく、相手への敬意を示すコミュニケーションの基本であると理解することです。
この記事で得た知識をもとに、自信を持って選考に臨み、より円滑な人間関係を築く第一歩としてください。