履歴書に「中退」の事実は書くべきか?
履歴書の作成で「中退」の経歴をどう書けばよいか、悩んでいませんか。「書かなくてもバレないのでは?」「不利になるのではないか」といった懸念もあるかもしれません。
中退の事実を履歴書にどう記載すべきか、不利にならないかと悩むのは自然なことです。しかし、中退の事実は正確に記載する義務があります。
この記事では、学歴詐称のリスクを避け、好印象を与える中退の書き方、理由別の例文、面接での答え方を解説します。
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- 履歴書に「中途退学」を記載すべき法務上の理由
- 理由別(ポジティブ・やむを得ない等)の具体的な書き方と例文
- 面接で中退理由を「不利」にせず「意欲」として伝える方法
 
1.「中退」は履歴書に必ず書くべきか?

「中退」の事実は、履歴書の学歴欄に必ず記載する必要があります。
主な理由は「学歴詐称」のリスクを避けるためです。
書かないと「学歴詐称」になる法的リスク
履歴書は、応募者の経歴を証明する公的な性格を持つ書類です。
もし中退の事実を隠して「卒業」と記載したり、あるいは大学の在籍事実そのものを記載しなかったりした場合、それは「学歴詐称」にあたります。
学歴詐称が発覚した場合、選考での不合格はもちろん、たとえ入社後であっても、就業規則に基づき「懲戒解雇」の対象となる可能性があります。
一般的に、懲戒解雇は就業規則上の重大な規律違反に対して行われる最も重い処分であり、その経歴詐称が採用判断において重大な影響を与えた場合に認められる可能性があります。
「バレなければ大丈夫」という考えは非常に危険です。卒業証明書の提出を求められた際や、年末調整、社会保険の手続きなどで過去の経歴が明らかになるケースは少なくありません。
法務・労務的な観点からも、経歴は正確に記載することが鉄則です。
参考:e-Gov 法令検索|労働基準法 
参考:弁護士法人 匠総合法律事務所|学歴詐称や職歴詐称などの経歴詐称を理由に従業員を懲戒解雇できる?
中退の事実は不利になる?文部科学省のデータから見る実態
「中退=不利」と強く思い込んでしまうかもしれませんが、客観的なデータも見てみましょう。
文部科学省の調査(令和5年度末)によれば、同年度の大学(学部)の中退者数は56,710人で、中退率は2.1%でした。
これは約50人に1人が中退を経験している計算になり、決して珍しいことではありません。
採用担当者は、中退の事実そのものよりも、「なぜ中退したのか」「その経験から何を学び、どう行動したのか」「今は働く意欲があるか」という点を重視しています。
中退の事実を隠すことの方が、よほど心証を悪くします。大切なのは、事実に誠実に向き合い、それを前向きに説明することです。
参考:文部科学省|令和5年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について
2.【見本付き】履歴書の基本的な書き方 4つのルール

中退の事実を履歴書に書く際は、採用担当者に正確に伝わるよう、以下の4つのルールを守ってください。
ルール1:「中退」ではなく「中途退学」と正式名称で書く
履歴書は公的な書類ですので、略語は避けます。「中退」ではなく、「中途退学」という正式な言葉を使ってください。
ルール2:入学の次の行に「中途退学」と記載する
学歴欄は時系列で記載します。
「入学」を書いた次の行に、「中途退学」の事実を記載します。
【学歴別】高校中退・大学中退の具体的な記入例
記入例:大学中退の場合
| 年 | 月 | 学歴・職歴 | 
|---|---|---|
| 平成〇〇 | 3 | 私立〇〇高等学校 卒業 | 
| 平成〇〇 | 4 | 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 入学 | 
| 令和〇〇 | 3 | 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 中途退学 | 
記入例:高校中退の場合
| 年 | 月 | 学歴・職歴 | 
|---|---|---|
| 平成〇〇 | 4 | 私立〇〇高等学校 入学 | 
| 平成〇〇 | 10 | 私立〇〇高等学校 中途退学 | 
ルール4:理由は簡潔に()書き、または一行で添える
中退の理由は、学歴欄に詳細を書く必要はありません。
もし理由を添える場合は、以下のように()書きで簡潔に示すか、一行で簡潔に記載します。詳細は職務経歴書や面接で説明すれば十分です。
記入例:()書きで添える場合
令和〇〇年 3月 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 中途退学(経済的理由のため)
記入例:一行で添える場合
令和〇〇年 3月 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 中途退学
(経済的理由により中途退学)
3.【理由別・例文集】採用担当者が納得する中退理由の書き方

中退理由は、事実に基づきつつ、可能な限りポジティブな側面や「現在は就業に支障がない」ことが伝わるように工夫しましょう。
1. ポジティブな理由(留学、進路変更など)の場合
キャリアチェンジや新たな目標設定など、前向きな理由の場合は、その「主体性」や「行動力」が伝わるように記載します。
例文
「かねてより関心のあった語学留学に挑戦するため、中途退学いたしました」
「ITエンジニアへのキャリアチェンジを決意し、専門学校へ通うため中途退学」
2. やむを得ない理由(経済的事情、病気療養など)の場合
経済的事情や病気療養など、やむを得ない理由の場合は、事実に加えて「現在は就業可能である」ことを必ず明記します。
これが採用担当者の不安を払拭するために重要です。
例文(経済的事情)
「家庭の経済的事情により学業継続が困難となり、中途退学いたしました」
例文(病気療養)
「病気療養のため中途退学いたしましたが、現在は完治しており、業務上の支障はございません」
3. ネガティブな理由(学業不振など)のポジティブな言い換え方
「単位が取れなかった」「学校に馴染めなかった」といったネガティブな理由は、そのまま書く必要はありません。大切なのは、その経験から何を反省し、学んだかです。
例文(学業不振)
「学業への関心を見失い中途退学いたしましたが、社会人経験を通じ、〇〇の分野で専門性を高めたいと強く考えるようになりました」
・言い換え
学業不振 → 学業への関心を見失った
・反省、学び
→ 社会人経験で働く意欲が明確になった
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4.これってどう書く?中退に関するQ&A

中退に関する特殊なケースの書き方についても解説します。
Q. 高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)を取得した場合は?
A. 高校中退後に高卒認定を取得した場合、学歴欄には「中途退学」の事実と「合格」の事実を両方記載します。
記入例
平成〇〇年 10月 私立〇〇高等学校 中途退学
平成〇〇年 11月 高等学校卒業程度認定試験 合格
Q. 中退予定で就職活動中の場合は?
A. すでに中退の意思が固まっており、大学の許可も得ている場合は、その旨を明記します。
記入例
令和〇〇年 4月 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 入学
令和〇〇年 9月 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 中途退学予定(〇月〇日付)
Q. 中退後に別の学校に入り直した場合は?
A. すべて時系列で記載します。中退の事実は省略しないでください。
記入例
平成〇〇年 4月 〇〇大学 〇〇学部 入学
平成〇〇年 3月 〇〇大学 〇〇学部 中途退学
平成〇〇年 4月 〇〇専門学校 〇〇学科 入学
令和〇〇年 3月 〇〇専門学校 〇〇学科 卒業
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5.面接で中退理由を聞かれた時の「好印象な」答え方
面接では、中退理由をほぼ確実に聞かれます。これは応募者の「ストレス耐性」や「課題解決能力」を確認する意図もあります。
ここで大切なのは、動揺せず、準備した回答を誠実に伝えることです。
結論ファーストで簡潔に事実を伝える(PREP法)
回答は、まず結論(理由)から簡潔に伝えます。
PREP法(Point:結論 → Reason:理由 → Example:具体例 → Point:結論)を意識すると、論理的で説得力のある説明ができます。
伝え方は「事実+反省・学び+未来への意欲」の3点で構成する
中退の伝え方で最も重要なポイントです。
単に事実を述べるだけでなく、「その経験から何を反省・学習したか」、そして「その学びを活かして、今後はどう貢献したいか」という未来への意欲 をセットで伝えてください。
面接官が納得する回答例文
例文:経済的理由の場合
(事実)
「大学を中退した理由は、家庭の経済的事情により学費の支払いが困難になったためです。」
(反省・学び)
「当時はアルバイトで補おうとしましたが、学業との両立が難しく、中途半端になってしまいました。この経験から、目標達成のためには現実的な計画性がいかに重要かを痛感いたしました。」
(未来への意欲)
「現在は経済状況も安定しており、業務に支障はございません。前職では計画性を意識してタスク管理を徹底し、無遅延を達成しました。この経験を活かし、御社でも着実に貢献したいと考えております。」
例文:学業不振・進路変更の場合
(事実)
「中退の理由は、入学前に抱いていたイメージと実際の学問内容にギャップがあり、学業への意欲を失ってしまったためです。」
(反省・学び)
「今思えば、自己分析や業界研究が不十分だったと深く反省しております。中退後は、まず社会経験を積もうとアルバイトに励み、その中で接客業の奥深さに気づきました。」
(未来への意欲)
「お客様の課題を解決することに強いやりがいを感じ、この分野で専門性を高めたいと強く決意しました。御社の〇〇というサービスに深く共感しており、即戦力となれるよう尽力いたします。」
6.中退の経歴を「不利」にしないための心の持ち方

中退の経歴がコンプレックスとなり、就職活動そのものに臆病になってしまう方も少なくありません。
最後に、キャリア理論や心理学の観点から、心の持ち方について解説します。
不採用は「ミスマッチ」であり「人格否定」ではない
選考に落ちると、「中退したからだ」「自分がダメだからだ」と人格まで否定されたように感じてしまうことがあります。
しかし、不採用は「人格そのものの否定」では決してありません。それは単に、その企業が求める人物像と、現時点での経験やスキルが合わなかったという「ミスマッチ」に過ぎません。
この「事実」と「感情(人格否定)」を切り離して考えること(物事の見方を変える「認知リフレーミング」と呼ばれる手法)が、心理的ストレスを軽減する上で非常に重要です。
「結果」ではなく「行動」を評価する(セルフコンパッション)
就職活動は、「内定」という結果が出るまでに時間がかかります。結果ばかりを追い求めると、「まだ内定が出ない」と自分を責めてしまいがちです。
大切なのは、「結果(内定)」ではなく、そこに至るまでの「プロセス(行動)」を自分で評価し、認めてあげることです。
「今日は履歴書を1社分仕上げた」「面接対策の例文を1つ考えた」。その一つひとつの「行動」を、ぜひ自身で褒めてあげてください。
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7.中退の事実と向き合い、次のステップに進むために
履歴書への「中途退学」の記載は、法務・労務的なリスクを避けるための義務です。しかし、その事実が即座に不利になるわけではありません。
大切なのは、その事実に誠実に向き合い、「なぜ中退したか」「そこから何を学んだか」「今どうしたいか」を自身の言葉で論理的に説明することです。
中退の経験を「失敗」で終わらせるのではなく、キャリアを見つめ直す「転機」として意味づけ、自信を持って次のステップに進んでいきましょう。
 
       
         
         
         
         
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
    