中卒では高収入を得ることはできないのでしょうか?中卒という学歴に対し、将来の収入やキャリアに関する不安を抱える方は少なくありません。
インターネット上では「中卒の平均年収は約270万円」といった情報が見られますが、その情報がいつの時代ものか、ご存じでしょうか。キャリアに関する情報は日々新しくなっています。
この記事では、まず「中卒の年収」に関する現状をご紹介します。その上で、「市場価値」を高め、高収入を実現するための具体的なキャリア戦略を解説します。
- 「中卒の平均年収は約270万円」という統計データの注意点
- 学歴に関わらず高収入が期待できる具体的な職種
- 高収入を実現するために今すぐ始めるべきキャリア戦略
1.【ファクトチェック】その常識は古い?「中卒の年収」統計の落とし穴
「中卒の年収は270万円」という情報を鵜呑みにしてはいけません。その数字がいつ、どのような調査に基づいているのか、まずは客観的な事実(ファクト)から見ていきましょう。
「中卒の平均年収は約270万円」は本当か?
約270万円
平成18年 (2006年)
要注意データ
18年以上前
現在
産業構造や
物価水準が異なる
参考:中卒の平均年収はいくら?年収を上げる方法も解説 | 第二の就活
参考:厚生労働省|平成18年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況
「中卒 平均年収」と検索すると、「約270万円」という数字を提示する転職関連メディアの記事が多く見つかります。
しかし、これらの記事の多くが参照している可能性があるのは、厚生労働省が発表した平成18年(2006年)の「賃金構造基本統計調査」のデータです。
2006年といえば、今から約18年以上前のデータです。当時の産業構造や物価、初任給の水準も現在とは大きく異なります。
もちろん、学歴が統計上の平均年収に影響を与える傾向は存在します。しかし、「270万円」という古いデータを現在の絶対的な基準として受け取り、将来を悲観的に捉える必要はありません。
大切なのは、古い情報に振り回されるのではなく、現在の雇用市場の現実を見据えることです。
参考:中卒の平均年収はいくら?年収を上げる方法も解説 | 第二の就活
参考:厚生労働省|平成18年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況:1 学歴別にみた賃金
データが示す「学歴と雇用」の客観的な現実
大卒
80.9%
高卒
56.3%
中卒
35.4%
参考:厚生労働省|平成30年若年者雇用実態調査結果の概況
年収データと同様に、雇用形態に関するデータも見てみましょう。
厚生労働省のデータによれば、中卒者の正社員雇用率は約35.4%とされています。これは、高卒の56.3%や大卒の80.9%と比較すると低い数値です。
このデータは、「高収入」を目指す以前の段階、つまり「安定した正社員雇用」という点においても、学歴が一つのハードルになり得ることを示唆しています。
しかし、裏を返せば、残りの約65%が非正規雇用やその他の形態で働いている現状があるとも言えます。
この状況を認識した上で、いかにして正社員としてのキャリア、あるいは高収入につながる道筋を戦略的に築いていくかを考えることが重要です。
2.高収入の前に知っておきたい「中卒」の定義

高収入を目指す戦略を立てる前に、まずは言葉の定義をはっきりさせておく必要があります。
一般的に使われる「中卒」には、実は2つの異なる背景が含まれているためです。
「中学校卒業」と「中卒認定」の違いとは?
本題に入る前に、「中卒」という言葉の定義を整理します。一般的に「中卒」とは、中学校を卒業した(義務教育を終えた)状態を指します。
一方で、もう一つ「就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定試験」(通称:中卒認定、中認)という制度があります。
これは、何らかの理由で中学校を卒業できなかった人が、高等学校の入学資格を得るために文部科学省が実施する試験です。
この記事では、主に「中学校卒業」の方々を想定していますが、どちらの場合であっても、高収入を目指すための基本的なキャリア戦略は共通しています。
参考:Weblio辞書|就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定試験とは? わかりやすく解説
3.なぜ中卒から高収入を実現できる人がいるのか?
学歴より「ポータブルスキル」を重視
明確な「キャリアビジョン」を描く
「専門技術」で市場価値を高める
参考:厚生労働省|ポータブルスキル見える化ツール
統計上は不利に見える学歴ながら、中卒から高収入を実現している人々には共通する特徴があります。
それは、学歴に代わる「確かな価値」を身につけていることです。
共通点1:学歴より「ポータブルスキル」を重視している
高収入を実現する人は、学歴の代わりに「ポータブルスキル」を磨いています。
ポータブルスキルとは、厚生労働省の定義によれば「業種や職種が変わっても通用する、持ち運び可能なスキル」のことです。
具体的には、「課題設定力」「計画立案力」「対人交渉力」などが挙げられます。
企業が採用時に見ているのは、最終的には「自社の課題を解決し、利益に貢献できるか」です。
学歴は一つの判断材料に過ぎず、これらのポータブルスキルを実務経験の中で証明できれば、学歴に関わらず高い評価と収入を得ることが可能です。
共通点2:明確な「キャリアビジョン」を描いている
キャリアデザインの観点から、将来ありたい姿を具体的に描く「キャリアビジョン」は、行動の羅針盤となります。
「なんとなく稼ぎたい」という漠然とした状態ではなく、「〇年後に、〇〇の分野で専門家として年収〇〇万円を得る」といった具体的なビジョンを持つことで、今何を学ぶべきか、どんな経験を積むべきかが明確になります。
共通点3:「専門技術」で市場価値を高めている
最も分かりやすく高収入に直結するのが「専門技術」です。
IT、建設、運送など、特定の業界で需要が高い専門技術を身につけることは、学歴フィルターを越えて「あなたでなければならない」という市場価値を生み出します。
4.【職種別】中卒から高収入が狙える仕事と求められるスキル

ここでは、学歴の影響を受けにくく、実力や成果が収入に直結しやすい5つの具体的な職種を紹介します。それぞれに求められるスキルやキャリアパスを見ていきましょう。
1. ITエンジニア・プログラマー(技術力評価)
- 求められるスキル例: Java, Pythonなどのプログラミング言語、論理的思考力、継続的な学習意欲、問題解決能力
IT業界は深刻な人手不足が続いており、学歴よりも純粋な技術力が評価される代表的な分野です。
実務経験を積み、スキルを証明できれば、若くして高い収入を得ることも可能です。
2. 営業職(成果主義・歩合)
- 求められるスキル例: 論理的な提案力、対人交渉力(傾聴・説得)、課題発見能力、目標達成意欲
営業職、特に不動産や保険、ITサービスの営業は、成果がインセンティブ(歩合給)として直接収入に反映されやすい仕事です。ポータブルスキルが求められます。
3. 運送・ドライバー(需要と専門性)
- 求められるスキル例: 大型自動車免許、牽引免許、危険物取扱者、安全運転の徹底、体力、スケジュール管理能力
トラックやトレーラーのドライバーは、物流という社会インフラを支える専門職であり、特に大型免許などが必要な職種は、安定した需要と比較的高い給与水準が期待できます。
4. 建設・施工管理(技術と資格)
- 求められるスキル例: 施工管理技士、電気工事士などの専門資格、現場でのリーダーシップ、工程管理能力、安全管理の知識
建設業界も学歴不問の求人が多く、現場での実務経験を積みながら「施工管理技士」などの国家資格を取得することで、キャリアアップと高収入が実現可能です。
5. Webマーケティング(スキルの専門性)
- 求められるスキル例: SEOの知識、Web広告(リスティング・SNS)の運用スキル、データ分析能力、論理的思考力
インターネット広告の運用やSEO(検索エンジン最適化)など、Webマーケティングのスキルも需要が高い専門分野です。論理的思考力とデータ分析能力が求められます。
5.高収入へのロードマップ:今すぐ始めるべき3つの行動
高収入を実現するためには、具体的な行動計画が必要です。
高収入の実現は、目的地のない旅では成し遂げられません。現状を客観的に分析し、ゴールから逆算した具体的な行動計画(ロードマップ)に落とし込むことが重要です。
行動1:自己分析で「Will-Can-Must」を整理する
Will-Can-Must
Will
やりたいこと
Can
できること
Must
求められること
まずは「キャリアの棚卸し」を行い、自分自身を深く理解することから始めます。
キャリアコンサルティングの理論で用いられる「Will-Can-Must」のフレームワークが役立ちます。
- Will(やりたいこと):自分の興味や価値観
- Can(できること):これまでの経験で得たスキルや強み
- Must(求められること):社会や企業から要求される役割
これら3つの円が重なる領域を見つけることが、やりがいを持って長く続けられる仕事、すなわち高収入につながるキャリアの第一歩です。
行動2:「高卒認定」や「資格取得」のメリットを検討する
高収入への道筋として、「高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)」の取得を検討するのも一つの有効な戦略です。
高卒認定を取得することで、応募できる求人の幅が広がるだけでなく、国家資格の受験資格を得られる場合があります。
また、前述した「施工管理技士」や、IT系の「基本情報技術者試験」など、職種に直結する資格取得も市場価値を高めます。
行動3:国の制度(教育訓練給付制度など)を活用する
スキルアップには費用がかかると考えるかもしれませんが、国の制度を賢く活用する方法があります。
例えば「教育訓練給付制度」は、厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了すると、費用の一部が国から補助される制度です。
ITスキルやプログラミング、資格取得のための講座などが対象となる場合があります。こうした公的支援を活用し、主体的にスキルを習得する行動計画を立てることが推奨されます。
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6.中卒のキャリアに不安を感じたら

キャリアを考える上で、過去の学歴が心理的なブレーキになってしまうこともあります。
産業カウンセリングの考え方に基づき、不安との向き合い方と、心の安定を保つ方法を解説します。
「強みがない」と感じる心理と対処法
自己分析をしようとしても、「自分にはアピールできるような強みがない」と感じてしまうかもしれません。
その背景には、完璧主義や「インポスター症候群」(自分の成功を実力と認められない心理)が隠れていることがあります。
しかし、キャリアの棚卸しとは、輝かしい実績だけを探す作業ではありません。日々の業務で工夫したこと、困難を乗り越えた経験自体が、ポータブルスキル(例:課題設定力、計画立案力)の源泉となります。
安定した自己肯定感を育むセルフケア
転職活動やキャリアアップの過程では、結果が出ずに落ち込むこともあるかもしれません。大切なのは、外部の評価に左右されない安定した自己肯定感を育むことです。
心理学でいう「セルフコンパッション(自分への思いやり)」を実践し、結果(内定)ではなくプロセス(応募した行動自体)を評価することが重要です。
苦しい状況にある自分に対し、親しい友人に接するように優しさや思いやりを向けることで、心の安定を保ちながら前進する力を得られます。
7.過去の学歴ではなく「未来の行動」がキャリアを決める
「中卒の平均年収は約270万円」という情報は、非常に古いデータに基づく可能性があります。過去の学歴や古い情報に囚われ、自分の可能性を狭めてしまう必要はまったくありません。
高収入を実現している人々は、学歴ではなく「ポータブルスキル」「専門技術」といった現在の市場価値で評価されています。
まずは「Will-Can-Must」で自己分析を行い、国の制度も活用しながら、具体的な行動計画を立てることが、高収入への第一歩となります。