高卒での就職活動を前に、「高卒では不利になるのではないか」「まともな就職先が見つかるだろうか」と不安を感じている方もいるかもしれません。
その不安は、客観的なデータを知ることで解消できる可能性があります。
厚生労働省や文部科学省の最新データによれば、高卒の就職率は98.0%、求人倍率は3.94倍と、実は企業からの需要が非常に高い「売り手市場」です。
この記事では、単なるおすすめの就職先リストだけでなく、自身の「出身学科」という強みを活かしたキャリアパスや、就職後に後悔しないための企業選びのコツまでを具体的に解説します。
- 高卒の就職率や求人倍率など、客観的なデータ(就職の現実)
- 高卒の強みを活かせるおすすめの業界や職種(安定志向・スキル志向)
- 出身学科別(工業/商業/普通科)のキャリアパスと、後悔しない就職先の探し方
1.「高卒の就職は不利」は誤解?まずはデータで見る客観的な現実

「高卒での就職は不利になるのでは」と不安に思う方は少なくありません。
しかし、そのイメージはデータと異なる場合があります。
ここでは、文部科学省や厚生労働省が発表する客観的な数値(就職率や求人倍率)をご紹介します。
まずは「就職の現実」を正確に知り、不安を解消することから始めましょう。
就職率は98.0%、求人倍率は3.94倍
まず、最も客観的なデータを見てみましょう。
文部科学省の調査(令和7年3月卒)では、高卒者の就職率は98.0%と、極めて高い水準にあります。
就職率(就職希望者に対する就職者の割合)
98.0%
(前年同期比同)
男女別
男子
98.4%
(前年同期比 同)
女子
97.3%
(前年同期比 0.1ポイント増)
出典:文部科学省 令和7年3月高等学校卒業の就職状況(令和7年3月末現在)に関する調査について
また、厚生労働省の調査(令和8年3月卒)によれば、高卒者向けの求人倍率は3.94倍です。
出典:令和7年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ(9月末現在)
これは、就職希望者1人に対して約4件の求人があることを示しており、企業側が高卒人材を強く求めている「売り手市場」であることが分かります。
なぜ「不利」「厳しい」というイメージがあるのか?
データ上は売り手市場であるにもかかわらず、なぜ「不利」というイメージが根強いのでしょうか。
これは、就職・転職活動における心理的な「社会的比較」が影響している可能性があります。
例えば、進学した友人やメディアの情報と自分を比較し、「大卒でないと良いキャリアは築けない」と思い込んでしまうケースです。
また、こうした不安が「認知の歪み」(非合理的な思考パターン)を生むことがあります。「大卒でなければ、まともな仕事には就けない」というのは、その典型例です。
しかし、事実は異なります。多くの企業が、学歴よりも入社後のポテンシャルや、高校で学んだ専門性を評価して採用活動を行っています。
学歴フィルターの現実と、学歴不問の求人が多い理由
一部の大企業の新卒採用などでは、応募が殺到するため、説明会の予約段階などで「学歴フィルター」が(公言されずとも)存在すると言われることがあります。
一方で、高卒採用の市場、特に「学校推薦」のルートでは、学校と企業の長年の信頼関係に基づいて選考が行われるため、学歴フィルターは基本的にありません。
また、中途採用市場や、IT業界、建設業、介護業など人手不足が続く業界では、学歴よりも実務能力や人柄、専門スキルが重視される「学歴不問」の求人が大多数を占めています。
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「学歴不問」の求人が多いのは、新卒の就職活動に限りません。将来的に転職する際も、学歴よりスキルや戦略が重要になります。この記事では、30代の高卒者が転職を成功させた戦略をデータと共に解説しています。長期的なキャリアを考える上で参考になるはずです。
2.高卒で就職するメリットとデメリット(進学との比較)

就職か進学かは、人生の大きな選択肢の一つです。
どちらが正解ということはありませんが、判断するためにはそれぞれの利点と欠点を客観的に知っておくことが重要です。
高卒で就職するメリット(早期の社会経験など)とデメリット(応募先の制限など)を具体的に比較します。
メリット:早期の社会経験と経済的自立
高卒で就職する最大のメリットは、早くから実務経験を積めることです。
同年代が進学している間に4年間の職務経歴を築くことができ、専門スキルを磨けば、キャリアアップや転職で有利に働くこともあります。
また、経済的に早く自立できる点や、進学費用(学費や奨学金返済)の負担がないことも大きな利点です。
デメリット:応募先の制限と将来の年収差
デメリットとしては、前述の「学歴フィルター」のように、応募できる企業が一部制限される可能性があることです。
また、生涯年収で比較した場合、平均的には大卒者との差が生じるというデータもあります。ただし、これはあくまで平均値です。
高卒であっても、スキルや実績次第で高収入を得ている方(例:ITエンジニア、成果型の営業職、起業家など)も多数存在します。
3.【安定志向】高卒の強みを活かせるおすすめ業界・職種

ここでは、景気の変動に比較的左右されにくく、社会の基盤(インフラ)を支えることで長期的な需要が見込める業界や職種をご紹介します。
高卒就職者の約4割を占める製造業や、公務員、建設業など、堅実なキャリアを築きやすい選択肢です。
1. 製造業(就職者の約4割)
高卒就職者の中で最も大きな割合(約39.9%)を占めるのが製造業です。自動車、食品、機械、化学など分野は多岐にわたります。
特に工業高校出身者の場合、学校で学んだ専門知識や技術が直接活かせるため、即戦力として期待されます。
ライン作業だけでなく、品質管理、設備保全、生産管理などキャリアパスも多様です。
2. 建設・建築業
インフラを支える建設業も、常に高い需要があります。
現場での施工管理や技能職(大工、左官、電気工事士など)は、経験を積むことで専門性が高まり、独立開業の道も開けます。
高齢化が進む業界でもあり、若い人材は特に歓迎されます。
3. 介護・福祉業
超高齢社会の日本において、介護・福祉サービスの需要は増え続けています。
学歴や経験よりも、コミュニケーション能力やホスピタリティが重視される仕事です。
「介護福祉士」などの国家資格を取得することで、キャリアアップと収入アップが明確に見込めます。
4. 公務員(安定の代表格)
安定性を最重要視する場合、公務員は依然として人気の高い選択肢です。市役所職員などの「地方公務員(高卒程度枠)」や、警察官、消防官、自衛官などがあります。
採用試験はありますが、学歴に関係なく公平に評価されます。
4.【スキル志向】学歴不問でキャリアアップを目指せるおすすめ職種

ここでは、学歴に関係なく、個人の実力や努力次第でキャリアアップや高収入を目指せる職種を紹介します。
ITエンジニアや営業職など、専門性を高めることで将来の市場価値を大きく高められる可能性がある分野です。
1. ITエンジニア・プログラマー
IT業界は深刻な人手不足が続いており、学歴よりも「何を作れるか」という技術力(スキル)がすべてです。未経験からでも研修制度が整っている企業が多く、スキルを習得すれば高収入を目指せます。
キャリアデザインの観点からも、将来性が非常に高い職種の一つです。
2. 営業職(成果が評価されやすい)
営業職は、企業の売上に直結する重要な仕事です。学歴に関係なく、成果(売上)がインセンティブ(報奨金)や昇進に反映されやすいのが特徴です。
コミュニケーション能力や課題解決力など、業種を問わず通用する「ポータブルスキル」が身につきます。
3. 接客・販売職
飲食業や小売業、宿泊業などでの接客・販売職も、学歴不問の求人が多い分野です。
顧客と直接関わるため、対人スキルが磨かれます。店長やエリアマネージャーへの昇進、または本社の商品開発やマーケティング部門へのキャリアチェンジなども可能です。
5.【重要】出身学科別(工業/商業/普通科)おすすめのキャリアパス

「高卒」とひとくくりに言っても、高校で学んだ内容は人それぞれです。特に工業科や商業科で得た専門知識は、就職活動における強力な武器となります。
ここでは、出身学科(工業・商業・普通科)ごとの強みと、それを最大限に活かせるおすすめのキャリアパスを解説します。自身の専門性をどうアピールすべきかが分かります。
文部科学省のデータ(R7年3月卒・3月末時点)でも、学科別の就職率には「工業科 99.4%」「商業科 98.8%」「普通科 96.2%」といった差が見られます。
学科別就職率(就職希望者に対する就職者の割合)
- 「その他」の学科は除く。
- 「看護」に関する学科は看護師5年一貫課程が主となるため、5年課程5年次の就職内定率を示している。
出典:文部科学省 令和7年3月高等学校卒業の就職状況(令和7年3月末現在)に関する調査について
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普通科出身で「アピールできる専門スキルがない」と不安に思う必要はありません。ポテンシャル採用では、個人の強みや人柄が重要視されます。どうしても自己PRが思いつかない時に、学校生活やアルバイト経験から強みを見つける方法をこちらの記事でご紹介しています。
工業高校出身:専門知識が即戦力になる製造業・建設業
工業高校で機械、電気、情報技術などを学んだ場合、その専門知識は就職活動における最大の武器です。
おすすめの道
- 製造業(品質管理、設備保全)
- 建設業(施工管理)
- ITインフラ系など
学校推薦で優良企業に入れるケースも多いです。
商業高校出身:資格を活かせる事務職・販売職
商業高校で簿記や情報処理の資格を取得した場合、そのスキルは多くの企業で求められます。
おすすめの道
- 一般企業の事務職(経理・総務)
- 金融機関の窓口
- 小売業の販売職 など
数字に強く、PCスキルがある人材は重宝されます。
普通科出身:ポテンシャル重視の営業職やIT系スキル習得
普通科出身の場合、特定の専門スキルがないことに不安を感じるかもしれません。しかし、見方を変えれば「特定の業界に縛られず、ゼロから挑戦できる」のが強みです。
おすすめの道
■パターン1
ポテンシャル採用(営業職、接客・販売職)
■パターン2
これからスキルを身につける(ITエンジニア、Webデザイナーなど)
もしスキル習得を目指す場合、国が費用の一部を補助する「教育訓練給付制度」などを活用して専門スクールに通うのも有効な戦略です。
6.就職後のミスマッチを防ぐために知っておくべき現実

就職活動のゴールは「内定」ですが、本当に大切なのは入社後にミスマッチなく働き続けることです。
残念ながら、高卒就職者の約3人に1人が3年以内に離職しているという現実もあります。
ここでは、なぜ早期離職が起こるのか、その理由と、入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための対策を考えます。
高卒の3年以内離職率は37.9%
高い就職率の一方で、知っておくべき現実もあります。
厚生労働省の調査(令和4年3月卒)によると、高卒就職者の3年以内の離職率は37.9%です。約3人に1人が3年以内に最初の職場を辞めている計算になります。
新規学卒就職者の就職後3年以内離職率
【学歴別】離職率
【事業所規模別】離職率
出典:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します
出典:厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します
早期離職の主な理由と対策
早期離職の理由は様々ですが、主に「仕事内容が合わなかった」「労働時間・休日の条件が合わなかった」「人間関係がうまくいかなかった」などが挙げられます。
こうしたミスマッチを防ぐには、就職活動の段階で「自分なりの企業選びの軸」をしっかり持つことが重要です。
不採用や離職は「個人の価値が否定された」のではなく、「その企業との相性が合わなかった(ミスマッチ)」だけと捉えます。自分に合う職場を見つけるためにも、次の「探し方」が重要になります。
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早期離職を防ぐには、入社後のミスマッチを減らすことが何より重要です。そのためには「自分に合う仕事」を見極める自己分析が欠かせません。こちらの記事では「やりたいことがわからない」と感じている方へ、仕事選びの軸を見つける方法を解説します。
7.後悔しない就職先の「探し方」と成功のコツ

自分に合う就職先を見つけるためには、具体的な「探し方」のコツを知っておくことが重要です。
学校推薦だけに頼るべきか、就職エージェントなども活用すべきか、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
また、求人票を見る際にミスマッチを防ぐため、特に注意すべき労働条件の確認ポイントも押さえておきましょう。
学校推薦(求人)のメリット・デメリット
高卒の就職活動で最も一般的なのが、学校に届く求人(学校推薦)です。
自己開拓(就職エージェントなど)の活用法
学校推薦以外で就職先を探す「自己開拓」も一般的です。特に、高卒者や若年層の支援に特化した就職エージェントを活用する方法があります。
応募時に確認すべき労働条件のポイント
入社後のミスマッチを防ぐため、求人票や面接で必ず確認すべき点があります。特に労働条件に関する法的な知識は重要です。
労働条件はここをチェックしよう
「月給25万円(固定残業代45時間分を含む)」といった記載に注意が必要です。これは、月45時間までの残業代が既に給与に含まれているという意味で、基本給はもっと低い可能性があります。
「完全週休2日制」は毎週必ず2日の休みがあります。「週休2日制」は、「月に1回以上、週2日の休みがある」(それ以外の週は1日休みなど)という意味で、年間の休日数が大きく異なる場合があります。
社会保険(雇用保険、健康保険、年金など)が完備されているかは最低限の確認事項です。また、未経験者を歓迎する職種の場合、入社後の研修制度がどれだけ充実しているかも重要です。
8.高卒の「強み」を活かし、後悔しない就職先を選ぶために
高卒の就職は、データが示す通り「不利」どころか、企業から強く求められている「売り手市場」です。特に工業科や商業科で培った専門性は、大きな強みとなります。
大切なのは、「高卒だから」と自信を失うことではなく、自身の強み(専門性やポテンシャル)を理解し、それを求めている企業とマッチングすることです。
「安定志向」で専門性を活かす道も、「スキル志向」でITなどの成長分野に飛び込む道もあります。この記事で紹介したデータや学科別のキャリアパスを参考に、後悔のない企業選びを進めてください。
もし一人で悩んでしまう場合は、学校の先生や、高卒支援に強い就職エージェントなど、専門家のサポートを活用することも有効な手段です。