就職・転職活動において、一次面接の7割以上がオンライン(Web)形式で行われるようになりました。自宅で受けられる利便性がある一方で、「どこを見て話せばいいのか」「通信が切れたらどうしよう」といった、対面にはない不安を感じることも多いのではないでしょうか。
実は、オンライン面接のマナーは、単なる礼儀作法ではありません。通信環境を整え、相手にストレスを与えないように配慮する「リスク管理」そのものです。
この記事では、最新の採用トレンドや厚生労働省のガイドラインに基づき、面接官に好印象を与えるための「環境整備」から、当日の「入退室の流れ」、そして万が一の「トラブル対応」までを網羅的に解説します。技術的な準備と正しいマナーを身につければ、画面越しでも本来の実力を十分に発揮できるようになります。
- オンライン面接で「好印象」を与えるための環境設定(照明・背景・機材)
- 入室から退室までの具体的な流れと、画面越しのマナー(目線・リアクション)
- 音声トラブルや接続切れなど、緊急時の正しい対応フロー
1.オンライン面接と対面面接の決定的な3つの違い

オンライン面接には、対面面接とは異なる特有の難しさがあります。マナーを理解する前に、まずは「何が違うのか」という本質を押さえておくことが重要です。
特に意識を変えるべきなのは、「環境の準備」「情報の伝わり方」、そして「トラブルリスク」の3点です。それぞれの違いを整理しましたので、全体像を把握しましょう。
| 比較項目 | 対面面接(オフライン) | オンライン面接(Web) |
|---|---|---|
| 環境・会場 | 企業が用意する (静かで整った環境) | 自分で用意する (生活音・背景・照明に配慮) |
| 印象・会話 | 雰囲気や空気感が伝わる (通常の会話でOK) | 情報が伝わりにくい (1.5倍のリアクションが必要) |
| 主なリスク | 交通機関の遅延など | 通信・機材トラブル (冷静なリカバリー力が問われる) |
「環境」も身だしなみの一部である
対面面接では、企業側が用意した会議室で行われるため、環境を気にする必要はありません。しかし、オンライン面接では、応募者自身が面接会場を用意する必要があります。
背景に洗濯物が映り込んでいたり、逆光で顔が暗くて見えなかったりすることは、対面面接に「寝癖がついたまま」「シミのあるシャツ」で現れるのと同じくらい、マイナスの印象を与えてしまいます。
画面に映るすべての情報が、評価対象になると考えてください。
画面越しでは「印象」が伝わりにくい
Web会議ツールを通すと、対面に比べて「表情の細かなニュアンス」や「声のトーン」といった非言語情報が大幅に減少します。普段通りの話し方では「元気がない」「反応が薄い」と誤解されてしまうリスクがあります。
そのため、通常よりも少し大きめのリアクションや、ハキハキとした発声を心がけるなど、デジタルフィルターを通すことを前提とした「演出」が必要になります。
通信トラブルという「不可抗力」への備え
どんなに準備をしていても、通信回線の不具合や機材トラブルは起こり得ます。重要なのは、トラブルが起きないようにすることだけでなく、「起きた時にどう冷静に対処するか」です。
予期せぬ事態にパニックにならず、誠実に対応できるかどうか。オンライン面接は、ビジネスにおける「リスク管理能力」や「対応力」を直接的にアピールできる場でもあります。
2.【事前準備編】合否を分ける環境・機材のセッティング

オンライン面接の成功は、当日のパフォーマンス以上に、事前の環境設定で8割が決まります。面接官が話の内容に集中できるよう、ノイズのないクリアな環境を作ることが最大のマナーです。
場所選びの鉄則:なぜ「静かな個室」が必須なのか
面接場所は「自宅の静かな個室」がベストです。カフェやコワーキングスペースのオープンスペースは、周囲の雑音が入るだけでなく、情報漏洩のリスクがあるため、ビジネスの場として不適切と判断される可能性が高いです。
面接では、氏名や経歴などの個人情報はもちろん、面接官の発言から企業の機密に関わる話が出ることもあります。自身のプライバシーを守り、かつ企業側の情報管理に対する信頼を損なわないためにも、「第三者に内容が知られない環境」を選ぶことは必須のマナーです。やむを得ず自宅以外を使用する場合は、防音設備の整ったレンタルオフィスや、個室型のテレワークブースを予約することをお勧めします。
インターネット環境:推奨速度と有線接続の重要性
映像や音声が途切れると、会話のテンポが崩れ、面接官に大きなストレスを与えます。安定した通信環境は必須のマナーです。
- 通信速度:上り・下りともに20Mbps〜50Mbps以上が目安です。Googleで「スピードテスト」と検索すれば簡単に測定できます。
- 接続方法:Wi-Fiは電波干渉で不安定になりがちです。可能な限り、LANケーブルを使った「有線接続」を推奨します。
デバイスと周辺機器:PCとイヤホンマイクを推奨する理由
スマホでの受験は、画面が小さく相手の表情を確認しづらいうえ、通知着信による中断リスクがあるため、避けた方が無難です。基本的にはPCを使用し、安定した状態で臨みます。
また、PC内蔵のマイクとスピーカーはハウリング(音が反響する現象)を起こしやすいため、マイク付きのイヤホンを使用するのが賢明です。派手なヘッドセットよりも、シンプルな有線イヤホンの方が、画面映りもすっきりとして好印象です。
照明と背景:生活感を消し、表情を明るく見せる技術
カメラ映りは、第一印象を大きく左右します。
- 照明(ライティング):部屋の照明だけでなく、顔を正面から照らすデスクライトやリングライトを活用します。逆光にならないよう、窓の位置にも注意が必要です。
- 背景:白やベージュの壁を背にするのが理想です。家具や生活用品が映り込まないよう配置を調整するか、どうしても隠せない場合はバーチャル背景(シンプルなオフィス風やぼかし設定)を使用します。
使用ツールの確認:Zoom・Teams・Meetの推奨設定
企業によって使用するツールは異なります。案内メールを確認し、事前に以下の設定をチェックしておくと安心です。
- Zoom:「ビデオのミラーリング」設定を確認します。これは自分の画面上での見え方を反転させる機能であり、相手への見え方には影響しませんが、文字が書かれた資料などを提示する場合はオフにする必要があります。また、背景ぼかし機能が優秀なので、部屋の映り込みが気になる場合は活用しましょう。
- Microsoft Teams:ビジネスチャットツールと連動していることが多いため、ブラウザ版ではなくアプリ版をインストールしておくと動作が安定します。
- Google Meet:Googleアカウントの名前がそのまま表示名になります。プライベートなアカウントを使用する場合は、アイコン画像や登録名がビジネスにふさわしいか確認が必要です。
▼あわせて読みたい
オンライン面接の準備と並行して、こちらの記事を参考に、応募書類の完成度も高めておきましょう。履歴書・職務経歴書は面接の土台となる重要な資料です。
3.【身だしなみ編】画面越しで好印象を与える服装とメイク

「自宅だから」という油断は禁物です。基本的には対面面接と同じ基準で考えますが、画面映りを意識した工夫を加えることで、さらに印象を良くすることができます。
服装:基本はスーツだが「画質」を意識する
指定がない限り、スーツ着用が原則です。ただし、オンライン特有の注意点があります。
- 細かい柄(ストライプやチェック):画面上で「モアレ(縞模様のちらつき)」が発生し、相手の目を疲れさせることがあるため、無地のシャツやスーツが適しています。
- 白飛びへの配慮:照明が強すぎると白いシャツが発光したように見える「白飛び」が起きることがあります。カメラ映りを確認し、必要であれば淡いブルーやグレーのシャツ・ブラウスを選ぶのも有効です。
髪型・メイク:おでこを出して表情を明るく見せる
画面越しでは顔色が実際よりも暗く見えがちです。前髪を上げておでこを出したり、耳を出したりすることで、表情全体を明るく見せる効果があります。
メイクに関しては、照明で色が飛びやすいため、血色を良く見せるチークやリップを普段より少しだけはっきりと入れると、画面上で健康的に見えます。
メガネの反射とカメラ映りのチェック
メガネを使用している場合、照明やPC画面の光がレンズに反射して、目元が見えなくなってしまうことがあります。ライトの位置や角度を調整し、しっかりとアイコンタクトが取れる状態を作ります。
4.【当日編】入室から退室までの完全シミュレーション
最終接続テストと緊急連絡先の確認
入室(待機室)と表示名の確認
第一声の「音声確認」と座礼
カメラ目線の維持とリアクション
切断ボタンを押すまでの作法
準備が整ったら、当日の流れを確認します。対面とは異なる「間」や「操作」があるため、時系列でシミュレーションしておくと安心です。
面接10分前:最終接続テストと緊急連絡先の確認
PCを起動し、カメラとマイクのテストを行います。
もし、通信トラブルで接続できなくなった場合に備え、担当者の電話番号などの緊急連絡先を手元のメモ(紙)に控えておきます。PCがフリーズした場合、画面上の連絡先が見られなくなるため、アナログなメモが命綱になります。
面接5分前:入室(待機室)のタイミングと表示名の確認
URLへのアクセスは、開始5分前が目安です。多くのツールでは、ホスト(面接官)が許可するまで「待機室」という画面で待つことになります。
この際、意外と見落としがちなのが「表示名」です。ニックネームや初期設定のデバイス名(例:iPhone12)になっていないか確認し、必ず「フルネーム(例:山田 太郎)」に設定し直してから入室します。
面接開始:第一声の「音声確認」と座礼
接続が繋がり、面接官の顔が見えたら、まずは明るく挨拶をします。そして、すぐに本題に入るのではなく、以下のような音声確認を行うのがスマートなマナーです。
「おはようございます、〇〇と申します。本日はよろしくお願いいたします。こちらの声は鮮明に届いておりますでしょうか?」
これにより、お互いの通信状況を確認でき、安心して面接をスタートできます。挨拶の際は、座ったままで構いませんので、背筋を伸ばして軽く一礼(座礼)をします。
面接中:カメラ目線の維持とオーバーリアクション
面接中は、画面に映る相手の顔ではなく、「カメラのレンズ」を見て話すのがポイントです。画面を見ていると、相手からは「伏し目がち」に見えてしまいます。発言するときは「カメラのレンズ」を見る、相手の話を聞く時は画面を見る、と意識して使い分けると良いでしょう。
また、相槌は「うん、うん」と声に出すと、マイクの仕様によっては相手の音声を遮断してしまうことがあります。深く頷く、笑顔を見せるなど、視覚的なオーバーリアクションで「聞いていること」を伝えるのがコツです。
面接終了・退室:切断ボタンを押すまでの作法
面接が終わったら、「本日はお時間をいただき、ありがとうございました」とお礼を伝え、一礼します。
基本的には面接官が通信を切るのを待ちます。しかし、なかなか切れない場合や「ご退出ください」と言われた場合は、「それでは、失礼いたします」と一言添えてから、静かに切断ボタンを押します。
カメラがオフになるその瞬間まで、気を抜かずに良い姿勢を保つことが大切です。
▼あわせて読みたい
オンライン面接の流れを把握したら、次は質問への準備です。こちらの記事を参考に、面接官が何を聞きたいのか、その意図を理解することで、より的確な回答ができます。
5.【トラブル対応編】パニックにならないための緊急フロー
音声が聞こえない・
届かない時の対処法
画面フリーズ・切断時の
再接続手順
どうしても遅刻しそうな時の
連絡マナー
どれだけ準備しても、トラブルは起こります。面接官もそれは理解しています。重要なのは、トラブルそのものではなく、その後の「リカバリー対応」です。
音声が聞こえない・届かない時の対処法
相手の声が聞こえない、または自分の声が届いていないと感じたら、慌てずにジェスチャー(耳に手を当てる、×印を作るなど)で伝えます。
それでも改善しない場合は、チャット機能を使いましょう。「申し訳ありません、音声が途切れているようです。一度退室し、再接続させていただいてもよろしいでしょうか?」と文字で送信し、許可を得てから再入室を試みます。
画面がフリーズした・接続が切れた時の再接続手順
完全に接続が切れてしまった場合は、焦らずにすぐに同じURLから再入室を試みます。Wi-Fiの不調であれば、スマホのテザリング機能に切り替えるのも有効な手段です。
再接続できた際は、言い訳をするのではなく「通信トラブルで失礼いたしました。大変申し訳ありません」と潔く謝罪し、面接を再開します。
どうしても遅刻しそうな時の連絡マナー
回線トラブルやPCの更新などで、開始時間に間に合わない可能性がある場合は、開始時刻を過ぎる前に必ず電話で連絡を入れます。
「現在、PCの不具合により接続に時間がかかっております。5分ほど遅れて入室してもよろしいでしょうか。大変申し訳ありません」と状況と見通しを正直に伝えることが、信頼回復への第一歩です。
6.デジタル空間でも「相手への配慮」が本質
オンライン面接のマナーの本質は、対面と同じく「相手への配慮」です。
見にくい映像や聞き取りにくい音声は、面接官に余計な負担を強いてしまいます。だからこそ、照明を整え、マイクを用意し、通信環境を確認するのです。これらはすべて、自分を良く見せるためであると同時に、相手とのコミュニケーションを円滑にするための「思いやり」の表れです。
環境を整えることは、自分の心を守る「鎧」にもなります。不安要素を一つずつ潰し、万全の状態で面接に挑んでください。これからのキャリアの新しい一歩が、実りあるものとなることを願っています。