「このまま今の仕事を続けていていいのかな…」「転職も考えてるけど、正直やりたいことがわからない」――そんな悩みを抱えていませんか?
実は、転職を考え始める人のうち、最初から明確な目標を持っている人は少数派です。ある調査では、約7割の人が「これがやりたい!」という軸をまだ持っていない状態でキャリアチェンジに踏み出しているというデータもあります。
この記事では、「やりたいことがわからない=ダメなこと」ではなく、それをきっかけに「自分に合った働き方」や「これからの生き方」を見つめ直すチャンスと捉える考え方を紹介しています。焦らず一歩ずつ、自分らしい道を探すヒントにしてください。
参照:en人事のミカタ「68%の求職者は、転職活動の開始当初「やりたい仕事が決まっていない」!」
- 「やりたい仕事がない…」と悩んでしまう本当の理由がわかる
- 簡単なワークを通して、自分に合う仕事を見つけるヒントが得られる
- 焦らず着実に転職活動を進めるための、具体的なステップがわかる
1.「やりたい仕事がない」は当たり前の悩み

「何かやりたいことを見つけなきゃ」と焦る気持ちは、よく分かります。しかし、それは特別な悩みではありません。みんな同じように悩みながら、自分なりの答えを探しています。
大切なのは、この「わからない」という時間を、ただ不安に思うだけで終わらせないことです。むしろ、自分とじっくり向き合って、これからのキャリアをデザインするための貴重な準備期間ととらえましょう。

ここでどう過ごすかが、焦って転職して後悔する…という失敗を避けるためのカギになります。
2.「やりたい仕事がわからない」を生み出す4つの理由

まずは、「やりたい仕事がわからない」と感じてしまう4つの理由をみていきましょう。自分はどれに当てはまるか、チェックしてみてください。
原因1:「情熱を仕事に!」という思い込み
「好きなことを仕事にしよう」「情熱を捧げられる天職を見つけよう」といった話を耳にすることも多いでしょう。しかしこれは、多くの人を悩ませる「思い込み」の原因にもなります。
最初から仕事に対して燃えるような情熱を持てる人は、ごくわずかでしょう。情熱は、ほとんどの場合、その仕事に深く関わる中で「見つける」ものではなく「育っていく」ものなのです。
原因2:失敗したくない、という気持ち
「ここで間違えたら、一生後悔するかも…」そんなふうに、必要以上に悩みすぎていませんか?「絶対に失敗したくない」「ちゃんと選ばなきゃ」という思いが強くなりすぎると、かえって選べなくなってしまうことがあります。
特に、責任感が強くて真面目な人ほど、慎重になりすぎて身動きが取れなくなってしまうケースも少なくありません。

キャリアの選択に“完璧な正解”はありません。少し肩の力を抜いて考えてみることも大切です。
原因3:情報が多すぎるワナ
今の時代、スマホ一つあれば、求人情報は無限に手に入ります。業種も働き方も多様化し、「どれでも選べる」という自由がある一方で、あまりに情報が多すぎて、かえって疲れてしまう…そんな感覚はありませんか?
実はこれ、「選択肢が多すぎることで、かえって選べなくなる」という心理現象です。選べる自由はあるのに、脳が情報の洪水に押し流され、「もう考えたくない」と感じてしまうのです。
▼選択肢が多いのに選べなくなる理由
これは「選択過多バイアス」と呼ばれる現象です。
一見、選択肢が多いほど「よりよい選択」ができると考えがちですが、選択肢が多すぎることで判断が難しくなり、最終的に決断を先送りしたり、選んだ後に「本当にこれでよかったのか」と後悔しやすくなる傾向があるのです。
原因4:自分と社会、両方の知識不足
「やりたいことがわからない」という悩みの根本には、多くの場合、以下の2つの知識不足が原因として考えられます。
- 自己分析不足:自分のことをよく知らない
- 社会理解不足:世の中にどんな仕事があるかを知らない
自分が何を大事にするかという「物差し」がないまま、限られた選択肢の中から選ぼうするため、迷いが生じるのです。
3.まずは自己分析から!3つの視点で行うワークショップ

モヤモヤから抜け出す最初のステップは、自分の心の中を整理し「自分だけの判断基準」という羅針盤を作ることです。ここからは、誰でも簡単にできる3つの自己分析方法を紹介します。
「やりたくないことリスト」で自分の価値観を探る
「やりたいこと」が分からない場合は、「これだけはやりたくないこと」から考えてみるのがおすすめです。
■例えば…
- 人と話さない仕事は嫌だ
- 数字を細かく管理するのは苦手
- 会社のルールが厳しすぎるのは無理
- 体力に自信がないから立ち仕事は辛いなど
思いつく限り、具体的に書き出してみましょう。この「NO」のリストは、あなたの本音を映す鏡です。「ルールが厳しいのが嫌」であれば「自分のペースで自由に働きたい」という「YES」の裏返しといえるでしょう。
こうして、あなたが本当に大切にしたい価値観が見えてきます。
「Will-Can-Must」で頭の中をスッキリさせる
これは、自分の状況を3つの輪で考える、とても有名なフレームワークです。
- Will(やりたいこと):興味があること、こうなりたいという理想
- Can(できること):今持っているスキル、得意なこと、経験
- Must(すべきこと/求められること):会社や周りから期待されていること
仕事の満足度は、この3つの円が重なる部分を大きくすることで高まります。まずは難しく考えず、それぞれの円に当てはまることを書き出して、自分の現状を客観的に眺めてみましょう。
「キャリア・アンカー」で絶対に譲れないものを見つける
キャリア・アンカーとは、仕事選びで「これだけは譲れない!」と感じる、あなたの価値観の「いかり」のことです。船がいかりで流されないように、あなたのキャリアがブレないよう支えてくれます。
次の8つのタイプのうち、自分はどれを一番大事にするだろう?と考えてみてください。
- 専門・職能別能力
その道のプロとして認められたい - 全般管理能力
チームや組織をまとめて、大きな成果を出したい - 自律・独立
自分のやり方やペースで自由にやりたい - 保障・安定
安心できる環境で、長く安定して働きたい - 起業家的創造性
新しいものをゼロから生み出したい - 奉仕・社会貢献
人の役に立ったり、社会を良くしたりしたい - 純粋な挑戦
難しい問題やライバルに挑戦すること自体が楽しい - 生活様式(ライフスタイル)
仕事だけでなく、プライベートも含めた全体のバランスを大事にしたい
自分のタイプが分かると、「なんとなくこっちがいい」という感覚に「自分は安定を求めているんだな」といった具体的な名前がつき、仕事選びのハッキリした基準になります。
▼あわせて読みたい
就職活動で「やりたい仕事が見つからない」と悩んでいる方は、以下の記事もおすすめです。自己分析の方法や自分に合った仕事を見つけるヒントなどを詳しく紹介しています。
4.リスクゼロで始めるキャリアの挑戦

自己分析で自分の「軸」が見えてきたら、次は小さなリスクで試してみる「挑戦」のステップです。どのような方法があるか、以下で具体的にみていきましょう。
今の職場で試す「ジョブ・クラフティング」
転職の前に、今の仕事を少しでも面白くできないか工夫してみましょう。これを「ジョブ・クラフティング」と言います。例えば、以下のような方法がよく用いられます。
- 自分から仕事に新しい意味を見出す
例えば、いつもの資料作成も「得意な分析スキルを活かしてチームのために新しい資料を作る」といった意識を持つことでやりがいに繋がる。 - 人間関係や仕事内容を変える
社内公募などを利用した「部署異動」で、人間関係や仕事内容をガラッと変えるのも良い選択肢です。
副業という名の「お試しキャリア」
興味のある分野を体験するのに、副業やボランティアは最高の「実験の場」です。お金をもらいながら、あるいは社会貢献をしながら新しいスキルを身につけ、人脈を広げることができるでしょう。

「ちょっと気になる」くらいの軽い気持ちで始められるのも魅力です。
国の制度を賢く使う「リスキリング(学び直し)」
もし、転職に向けて新しいスキルを身に着けたいと考えているなら、国が費用の一部を補助してくれる「教育訓練給付制度」の活用も検討しましょうです。お得に専門スキルを身につけることができ、キャリアチェンジの大きな武器になります。
教育訓練給付制度とは?
雇用保険法に基づく「失業等給付」のひとつです。
厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講した場合、入学料や受講料などの一部について、ハローワークから給付金を受け取ることができます。
参照:政府広報オンライン「教育訓練給付金があなたのキャリアアップを支援します」
働いている人に直接話を聞く「OB/OG訪問」
気になる業界や会社が見つかったときは、実際にそこで働いている人に話を聞くのがいちばんの近道です。ネットの情報や口コミサイトも参考にはなりますが、リアルなやりがいや大変さを知るには、やはり現場の声に勝るものはありません。
「その仕事が自分に合っているか」を見極めるうえでも、実体験に基づいた話は何倍もの価値があります。口コミサイトでは得られないような、生きた情報が聞けるはずです。
5.「やりたい仕事がない」を強みに変える転職活動

いくつか候補が見えてきたら、いよいよ転職活動をスタートしましょう。ここでは「やりたい仕事がない」と悩んだ経験を、強みに変えるための方法をご紹介します。
転職エージェントを「パートナー」として活用する
転職エージェントは、単に求人を紹介するだけの存在ではありません。あなたの目標や希望に合った企業の選定から、選考対策、条件交渉まで、幅広くサポートしてくれる心強いパートナーです。
特に自己分析を重ねて「やりたいこと」が明確になっている方にとっては、その軸をぶらさず進めるうえで、第三者の客観的なアドバイスが大いに役立つでしょう。一人で悩みを抱え込まず、プロと二人三脚で、希望を実現するための戦略的な転職活動を進めていきましょう。
「何がしたいですか?」には「価値観」で答える
「入社したら何がしたいですか?」は、面接でよく聞かれる代表的な質問です。この時、無理に「〇〇がしたいです」と答える必要はありません。自己分析で見つけた、あなたの「価値観」や「強み」をベースに答えるのがベストです。
回答例:
自己分析をした結果、私はチームで協力して何かを達成することにやりがいを感じるタイプだと分かりました。特に、人の意見をまとめて形にしていくのが得意です。
御社の〇〇というポジションは、まさにそうした私の強みを活かして貢献できるのではないかと考えています。
悩んだ経験を自分のストーリーにする
「やりたいことが分からなかった」という経験は、弱みではありません。「キャリアに迷っていた」のではなく、「自分に本当に合う仕事を見つけるため、じっくり自己分析や情報収集をしていました」という、前向きなストーリーとして語りましょう。
面接や履歴書の自己PRで活用すれば、あなたが物事を深く考え、計画的に行動できる人物だというアピールに繋がります。
▼あわせて読みたい
職務経歴書の自己PRに悩む方は、こちらの記事にも目を通しておきましょう。採用担当者の視点から自己PR欄の書き方を例文付きで解説しています。「何を書けば良いのか迷う」という方はぜひ参考にしてください。
6.「最高の仕事」より「最高の働き方」を目指す
今回は、「転職したいけれど、やりたい仕事がない」という方に向けて、その原因や自己分析の方法を詳しくご紹介しました。
転職で本当に大切なのは、理想的な「天職」を追い求め続けることではありません。どんな状況でも自分らしく前に進んでいける力を身につけることこそが重要です。「やりたい仕事がない」という悩みは、自分自身を深く見つめ直す貴重なきっかけになるはずです。
ご紹介した自己分析の手法などは、これからのキャリアや人生でも繰り返し活用できるでしょう。ぜひ、今後の指針として役立ててみてください。