「営業のノルマに疲れ、サポート業務に回りたい」「事務職なら定時で帰れそう」
もし、このような本音を抱えて総務の志望動機を書こうとしている場合は、一度立ち止まって再考する必要があります。
総務職は、一般事務とは異なり、組織全体の運営に関わるプロフェッショナルな仕事です。そのため、「楽そうだから」という動機は採用担当者にすぐに見透かされてしまいます。
しかし、逆に言えば、総務の役割を正しく理解し、これまでの経験を論理的に結びつけることができれば、未経験からでも採用を勝ち取ることは十分に可能です。
本記事では、キャリアコンサルティングの理論と人事労務管理の実務的視点を交え、採用担当者が「会ってみたい」と思う総務の志望動機の書き方を、具体的な例文とともに徹底解説します。
- 一般事務とは違う「総務職」のリアルな業務内容と求められる役割
- 採用担当者が履歴書でチェックしている「志望動機」の3つの評価ポイント
- 【未経験・新卒・経験者別】そのまま使える志望動機例文と、合格へ導く書き方のコツ
1.総務とは?「何でも屋」ではないプロの仕事

まずは、志望動機を書く前の前提知識として、「総務」という仕事の定義を明確にしましょう。
多くの人がイメージする「何でも屋」という認識だけでは、書類選考を突破する説得力のある志望動機は書けません。
一般事務との決定的な違いと残業の実態
月平均残業時間の比較
総務職 vs 一般事務職
出典:doda 平均残業時間ランキング(職種別)
総務職と一般事務職は、明確に異なる職種です。
一般事務が「特定の部署の定型業務(データ入力や書類作成)」を行うのに対し、総務職は「組織全体の非定型業務(株主総会運営、施設管理、社内イベント、トラブル対応など)」を担います。
この違いは、労働環境のデータにも表れています。dodaの調査データによると、一般事務の月平均残業時間は11.0時間であるのに対し、総務・法務・広報事務は18.4時間となっています。
突発的なトラブル対応や、全社的なプロジェクトの進行管理を任される総務職は、決して「定時で帰れる楽な仕事」ではないのが現実です。
志望動機では、この忙しさを理解した上で、それでも挑戦したいという覚悟を示すことが評価につながります。
企業規模で変わる総務の役割
応募する企業の規模によって、求められる総務の役割は大きく異なります。ここを履き違えると、「自社の実情を理解していない」と判断される要因となります。
大企業の総務
業務が細分化・専門化されています。
株主総会の運営、リスクマネジメント、ファシリティマネジメント(施設管理)など、特定の分野での深い専門知識や、大規模な組織を動かす調整能力が求められます。
中小・ベンチャー企業の総務
いわゆる「兼務型」です。
人事、労務、経理、法務、秘書、時には営業アシスタントまで、バックオフィス全般を少人数で担当します。
未経験の業務にも柔軟に対応する「マルチタスク能力」と、自ら業務フローを構築する「主体性」が強く求められます。
厚生労働省の定義から見る「組織の守り神」としての役割
公的な定義を確認してみましょう。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、総務事務を「組織全体に関係する仕事に従事する」とし、具体的には文書管理、資産管理、行事運営などを挙げています。
法務や労務の観点から見ると、総務は企業の「ガバナンス(統治)」を守る重要なポジションです。契約書の管理やコンプライアンスの遵守など、会社の信頼を守る「守備の要」としての役割を担っています。

志望動機において、単なる「サポート」ではなく、「組織の基盤を支え、事業成長に貢献したい」という視点を持つことが重要です。
参考:総務事務|厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)
2.採用担当者が総務の志望動機で見ている3つのポイント

採用担当者は、応募者の志望動機から以下の3点を確認しようとしています。これらを網羅することで、論理的で納得感のある文章になります。
「なぜ総務か」の論理的な理由(キャリアの一貫性)
「なぜ営業ではなく総務なのか」「なぜ経理ではなく総務なのか」。この問いに明確に答える必要があります。
単に「事務作業が好きだから」では不十分です。
「前職でチームの業務効率化に取り組んだ際にやりがいを感じ、専門的に組織運営に携わりたいと思った」など、これまでのキャリアの延長線上に総務があるというストーリー(一貫性)を提示しましょう。
スキルと実務の親和性(事務処理力・調整力・改善力)
採用基準は「どこで働いていたか」よりも「実際に何ができるか」にシフトしています。
特に総務で求められるのは以下の3つのスキルです。
- 正確な事務処理能力
ミスなく迅速に業務を遂行する力(Excel等のPCスキル含む)。 - 調整力・コミュニケーション能力
他部署や外部業者と円滑に連携する力。 - 改善提案力
現状の課題を見つけ、より良くするための提案を行う力。
未経験であっても、これらのスキルを前職でどのように発揮してきたかを具体的に伝えることが不可欠です。
ストレス耐性と柔軟性(突発業務への対応)
総務は「会社の便利屋」として、クレーム対応や備品の故障など、予期せぬトラブルに直面することが多々あります。
そのため、想定外の事態にも動じず、冷静に対応できる「ストレス耐性」や「柔軟性」があるかどうかも、隠れた評価ポイントとなります。
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志望動機を書く前に、自己分析で「自分の強み」を明確にしましょう。自己分析の具体的な方法を解説しています。
【状況別】総務の志望動機 例文集と添削解説

ここからは、具体的な例文を見ていきましょう。
多くの人が陥りがちな「NGパターン」もあわせて解説しますので、作成した文章と照らし合わせ、推敲に役立ててください。
総務未経験(営業・販売職から)の志望動機の書き方:数値を活かす
営業や販売の経験者は、「顧客対応力」と「数字への意識」が強みになります。これを総務の業務(社内顧客への対応、コスト削減)に変換します。
【Bad例文:楽そう・安定志向が見える】
前職の営業はノルマが厳しく、精神的に辛かったため、コツコツ取り組める事務職を志望しました。
御社は安定しており、残業も少ないと伺っています。
PCスキルには自信があり、サポート業務で御社のお役に立ちたいと考えています。
上記の志望動機は、最も避けるべきパターンです。
「ノルマが辛い」「残業が少ない」といった言葉は、採用担当者に「権利主張が強い」「仕事への熱意が低い」と判断されます。
「待遇への欲求(本音)」は書かず、「環境が整うことで、より高いパフォーマンスを発揮したい(建前)」という前向きなロジックに変換しましょう。
【Good例文:実績を総務の価値に変換】
現職の法人営業では、顧客への提案だけでなく、チーム内の見積書作成フローの見直しを主導し、月間作業時間を10時間削減しました。
この経験から、組織全体の生産性を高める環境作りに強いやりがいを感じております。
貴社を志望したのは、社員の「働きやすさ」を追求する理念に共感したからです。
営業で培った「課題解決力」と「交渉力」を活かし、コスト削減や業務効率化の面から、貴社の事業成長を支える総務のプロとして貢献したいと考えております。
新卒(学生)の志望動機の書き方:エピソードの選び方
実務経験がない新卒の場合、サークルやアルバイトでの「役割」と「行動」に焦点を当てます。抽象的な言葉ではなく、具体的なエピソードで語りましょう。
【Bad例文:受け身・テイカー思考】
私は大学のサークルで副代表を務め、メンバーをまとめる役割をしていました。
昔から人を支えることが好きで、「縁の下の力持ち」として役に立ちたいと思っています。
未経験ですが、貴社で一から勉強させていただき、成長したいと思い志望しました。
「勉強させてほしい」という姿勢は、謙虚に見えて実はNGです。企業は学校ではありません。
「教えてもらう(テイク)」のではなく、「今の自分にできることで貢献しながら、自走してキャッチアップする(ギブ)」という姿勢が必要です。
また、「縁の下の力持ち」という表現も使い古されており、具体性に欠けます。
【Good例文:具体的な行動事実を提示】
大学の学園祭実行委員会において、備品管理と当日のトラブル対応係を務めました。
予算内で必要な資材を調達するために業者と交渉を行ったり、当日の急な機材トラブルに冷静に対応して代案を出したりした経験があります。
組織が円滑に回るよう裏方として動くことに喜びを感じ、またその重要性を学びました。
貴社の総務職として、社員の皆様が業務に集中できる環境作りに尽力し、組織の活性化に貢献したいと考えております。
経験者(キャリアアップ)の志望動機の書き方:専門性の提示
経験者の場合、即戦力性をアピールしつつ、前職への不満ではなく「より高度な業務への挑戦」を動機にします。
【Bad例文:現状への不満が先行】
現職では総務を担当していますが、ルーチンワークばかりで成長実感がなく、給与も低いため転職を決意しました。
これまでの経験を活かして、貴社では即戦力として定型業務を正確にこなしていきたいと考えています。
転職理由が「不満(給与、業務内容)」であると、入社してもまた不満を持つのでは?」と懸念されます。
また、「定型業務」に固執すると、総務に求められる「変化への対応力」がないと判断されます。
【Good例文:企業のフェーズに合わせた提案】
現職では3年間、総務として備品管理や社内行事の運営に従事してまいりました。
しかし、ルーチンワークが中心であり、より経営に近い視点で組織作りに携わりたいという思いが強くなりました。
貴社は現在、IPO(新規上場)を目指して急成長フェーズにあると伺っております。
これまでに独学で学んだ労務管理の知識や、衛生管理者の資格を活かし、コンプライアンス体制の強化や就業環境の整備を通じて、貴社のさらなる発展に貢献したいと考え志望いたしました。
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職務経歴書の自己PRでも総務職への適性をアピールできます。効果的な自己PRの書き方を詳しく解説しています。
3.志望動機に説得力を持たせる「自己分析」と「企業研究」
魅力的な志望動機を作るには、テクニックだけでなく、深い自己理解と企業理解が必要です。
自分の経験を「総務用語」に変換する魔法のメソッド
「Will-Can-Must」で考える自分のキャリア軸
Will
(やりたいこと)
Can
(できること)
Must
(求められること)
自己分析には、「Will-Can-Mustフレームワーク」が有効です。
自分の「やりたいこと(Will)」と「できること(Can)」を整理し、それが企業の「求めていること(Must)」と重なる部分を見つけ出します。
また、前職のスキルを「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」として再定義しましょう。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 「営業でお客様の話を聞いた」→「相手の意図を汲み取るヒアリング能力」
- 「店舗で在庫発注をした」→「コスト意識を持った資産管理能力」
- 「クレーム対応をした」→「問題解決能力とリスク対応力」
このように表現を変換することで、異業種からの転職でも「総務としての適性」を強くアピールできます。
応募先企業の「総務の特色」を見抜く方法(求人票の読み解き)
求人票は情報の宝庫です。特に以下の点に注目してください。
- 必須要件(Must)
ここ書かれているスキルは、最低限クリアしているか、学習意欲を示す必要があります。 - 求める人物像
「フットワークの軽い方」なら行動力を、「緻密な作業が得意な方」なら正確性をアピールします。 - 待遇面(固定残業代など)
法的な観点から見ると、固定残業代(みなし残業代)が含まれている場合、その時間分に相当する業務量が見込まれている、あるいは一定の残業が前提となっている可能性があります。
これをネガティブに捉えるのではなく、「効率的に業務を行い、成果を出す」という意欲につなげて語るのも一つの戦略です。
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4.総務への転職を成功させるためのプラスアルファ

最後に、ライバルに差をつけるためのポイントを紹介します。
書類通過率を上げる有利な資格(簿記、衛生管理者、MOS)
未経験からの転職では、意欲を客観的に証明する資格が強力な武器になります。
- 日商簿記(3級・2級)
経理業務を兼任する場合に必須級。数字に強い証明にもなります。 - MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
ExcelやWordの実務スキルを証明します。 - 衛生管理者
従業員50人以上の事業場で選任義務がある国家資格。
取得難易度はやや高いですが、総務としての価値が飛躍的に高まります。
転職エージェントの活用と非公開求人の重要性
総務職は人気が高く、一般の求人サイトに出ると応募が殺到するため、「非公開求人」として転職エージェント経由で募集されるケースも少なくありません。
エージェントを活用することで、非公開求人にアクセスできるだけでなく、応募書類の添削や、企業ごとの面接対策といったサポートを受けることができます。

自分一人で抱え込まず、プロの力を借りることも戦略の一つです。
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5.未経験から総務職をつかみ取るために
総務職は、単なる「何でも屋」ではなく、組織を支える重要なプロフェッショナルです。
未経験からの挑戦は難しく感じるかもしれませんが、これまでの経験を「ポータブルスキル」として再定義し、企業の課題解決にどう貢献できるかを論理的に伝えれば、キャリアの可能性は大きく広がります。
本記事で紹介したポイントと例文を参考に、自信を持って第一歩を踏み出してください。