「職務経歴書の書き方が分からない」「自分の経歴でアピールできる?」そんな悩みを抱える看護師さんへ。
この記事では、自身の価値を最大限に伝える職務経歴書の書き方を、見本や例文を交えて徹底解説します。自信を持って転職活動の第一歩を踏み出すための、戦略的なノウハウが満載です。
- 見本を見ながら、職務経歴書の基本的な書き方
- 経験や強み別に、そのまま使える魅力的な自己PRの例文
- 転職回数が多い、ブランクがあるといった個別の悩みの解決法
1.まずは知っておきたい、看護師の「転職市場」のリアル

転職活動を始めると、「本当に次の職場は見つかるだろうか」という不安に駆られることがあるかもしれません。特に、今の職場に不満があったり、自信をなくしていたりすると、その気持ちは一層強くなることでしょう。
しかし、まずは客観的なデータを見て、ご自身の立ち位置を冷静に確認してみませんか。実は、看護師の皆さんは、社会から非常に強く求められている貴重な専門職なのです。
看護師は売り手市場の職業
厚生労働省の調査によると、看護職員の有効求人倍率は常に高い水準で推移しており、明確な「売り手市場」であることが示されています。実際に、2025年には最大で27万人もの看護職員が不足する可能性があると予測されているほどです。
これは、看護師である貴方が持つ専門知識やスキル、そして何よりもその経験が、いかに社会にとって不可欠であるかが分かります。
出典元:厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会中間とりまとめ案
2.なぜ重要?履歴書と職務経歴書の決定的な違い

転職活動で必ず求められる「履歴書」と「職務経歴書」。この二つの書類を同じようなものだと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はその役割は全く異なります。この違いを正しく理解することが、自身の魅力を効果的に伝えるための第一歩です。
それぞれの書類が持つ目的を知ることで、何をどのように書くべきかが明確になり、採用担当者の心に響く応募書類を作成することができるようになります。
一言でいうと、履歴書は「あなたの基本情報を証明する公的な書類」、そして職務経歴書は「あなたの経験とスキルをアピールするためのプレゼンテーション資料」です。
履歴書は、氏名や学歴、資格といった「変えられない事実」を正確に伝えるため、職務経歴書は、あなたがこれまでどのような環境で、何を考え、どう行動し、どんな成果を上げてきたのかという「あなたの価値」を自由に表現する書類です。
3.誰でも簡単!看護師の職務経歴書の基本的な書き方

「役割の違いは分かったけれど、具体的にどう書けばいいの?」と感じている方も、ご安心ください。ここからは職務経歴書の具体的な作成手順を、項目ごとに分かりやすく解説していきます。
職務経歴書には決まった形式はありませんが、採用担当者が読みやすいように、一般的に使われる構成があります。この基本の型に沿って情報を整理していけば、初めての方でも、あなたの経験が伝わる職務経歴書をスムーズに作成することができます。
① 日付・氏名
まず、書類の一番上に、提出日と氏名を記入します。
履歴書のふりがな欄が「ふりがな」ならひらがなで、「フリガナ」ならカタカナで合わせるのがマナーです。日付は、郵送の場合は投函日、メールの場合は送信日、持参する場合は面接日を記入するのが一般的です。和暦でも西暦でも構いませんが、履歴書と統一するようにしましょう。
氏名の横には、捺印も忘れないようにしてください。最後に押す印鑑も、かすれや傾きがないよう丁寧に。こうした細部への気配りが、あなたの誠実な人柄を伝えます。
② 職務要約
職務要約は、いわば「職務経歴書の顔」であり、採用担当者が最初に目を通す最も重要な部分です。ここで興味を持ってもらえるかどうかで、その後の評価が大きく変わることもあります。
あなたのこれまでのキャリア、得意なこと、そして最もアピールしたい実績を、3~5行程度の短い文章に凝縮して伝えましょう。長々と書くのではなく、あなたの強みが簡潔に伝わるようにまとめるのがポイントです。
【職務要約 例文】
「大学病院の急性期病棟で5年間、看護師として従事してまいりました。循環器内科・心臓血管外科の混合病棟にて、周術期管理から終末期ケアまで幅広く経験してまいりました。
プリセプターとして新人指導にも2年間携わり、チーム全体の看護の質向上に貢献しました。これまでの経験を活かし、患者様一人ひとりに寄り添った質の高い看護で、貴院の地域医療に貢献したいと考えております。」
③ 職務経歴
ここが職務経歴書の本体ともいえるセクションです。あなたのこれまでの仕事の経歴を、時系列に沿って具体的に記述します。
一般的には、現在に近い経歴から遡って書く「逆編年体式」が、直近の実績やスキルをアピールしやすいため推奨されています。どこで、何を、どのように行ってきたのかが、第三者にも分かるように書くようにしましょう。
特に看護師の場合、以下の情報を具体的に記載すると、あなたの経験価値がより正確に伝わります。
職務経歴で押さえるべきポイント
- 勤務先の概要
病院名だけでなく、施設形態(大学病院、一般病院、クリニックなど)、病床数、職員数を記載することで、採用担当者はあなたがどのような規模の環境で働いていたかを具体的にイメージできます。 - 所属部署・診療科
「内科病棟」だけでなく、「循環器内科・呼吸器内科の混合病棟」のように、担当した診療科を詳しく書きましょう。 - 業務内容
日常的な看護業務(バイタルサイン測定、注射、点滴など)に加えて、リーダー業務、委員会活動、プリセプター経験、カンファレンスの運営、業務改善の取り組みなど、あなたならではの役割や実績を箇条書きで分かりやすく整理します。 - 実績
例えば「業務改善提案により、残業時間を月平均5時間削減した」「マニュアルを作成し、新人看護師の独り立ち期間を2週間短縮した」など、具体的な成果を数字で示すと説得力が格段に増します。
④ 活かせる経験・知識・技術
職務経歴でアピールした内容を補足し、応募先で即戦力になることを具体的に示すセクションです。
看護スキル(採血、注射、各種カテーテル管理、心電図モニター読解など)はもちろん、PCスキルや語学力などもアピールポイントになります。
スキルを書く際は、「Excelが使えます」といった曖昧な表現ではなく、「Excel(VLOOKUP関数、ピボットテーブルを用いたデータ集計が可能)」のように、習熟度を具体的に記述すると評価が高まります。
⑤ 保有資格・免許
看護師免許のほか、専門・認定看護師、保健師、助産師の資格は、専門分野での高い能力を示す強力なアピールになります。また、訪問看護ステーションやクリニックへの応募を考えるなら、普通自動車運転免許も忘れずに記載しましょう。
保有資格・免許記載例
2020年4月 看護師免許 取得
2023年5月 普通自動車第一種運転免許 取得
もし現在取得に向けて勉強中の資格があれば、「〇〇の資格取得に向け勉強中」と一言添えることで、あなたの向上心を効果的に伝えることができます。
⑥ 自己PR
職務経歴書の締めくくりとして、あなたの強みや仕事に対する姿勢、そして「なぜこの職場で働きたいのか」という熱意を伝える非常に重要な項目です。
職務経歴で示した事実に基づき、あなたの強みが応募先でどのように活かせるのかを、具体的なエピソードを交えてアピールします。ここでは、具体的な行動と結果を示す「STARメソッド」を意識すると、説得力のある文章が作りやすくなります。

このフレームワークに沿って経験を整理することで、あなたの行動特性や貢献度を論理的に伝えることができます。詳しい例文は次のセクションでご紹介します。
職務経歴書のフォーマットはどんなものを選べばいいのかお悩みの方は、選び方をこちらの記事で詳しく解説しています。
4.採用担当者の心をつかむ!経験・強み別の自己PR例文集

自己PRは、あなたの「人となり」や「仕事への熱意」を伝える絶好の機会です。しかし、「自分の強みをどう言葉にすれば良いか分からない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
このセクションでは、そんな悩みに応えるため、看護師の皆さんがアピールしやすい「強み」や「経験分野」に応じた自己PRの例文を豊富にご紹介します。これらの例文を参考に、あなただけのエピソードを盛り込み、オリジナルの自己PRを作成してみてください。
【強み別】自己PR例文
あなたの性格や仕事のスタイルに合わせて、強みをアピールしましょう。
【経験分野別】自己PR例文
あなたの経験が、応募先でどう活かせるかを具体的に示しましょう。
職務経歴書を作成ツールで作ろうとお考えなら、こちらの記事がおすすめです。
5.【お悩み別】ケーススタディQ&A

「私の経歴、正直に書いても大丈夫だろうか…」キャリアは人それぞれで、誰もが順風満帆な道を歩んできたわけではありません。
ここでは、多くの看護師さんが抱えがちな、職務経歴書に関する個別の悩みについて、Q&A形式でお答えします。少し視点を変えるだけで、あなたの悩みは強みに変わるかもしれません。
Q1. 転職回数が多いのですが、不利になりますか?
A. 不利になるとは限りません。伝え方次第で「経験豊富」という強みに変えられます。
転職回数の多さを心配される気持ち、よく分かります。しかし、採用担当者は回数そのものよりも、「なぜ転職したのか」という理由と「一貫性」を見ています。もし、キャリアアップやスキル獲得など、前向きな目的での転職が続いているのであれば、それはむしろ多様な環境への適応能力や学習意欲の高さを示す証拠となります。
職務経歴書では、すべての職歴を同じ熱量で書くのではなく、直近の1~2社や、応募先と関連性の高い経歴を手厚く記述し、それ以前は簡潔にまとめるといった工夫が有効です。
また、職務要約や自己PRで「多様な医療現場で培った幅広い知識と柔軟な対応力を活かしたい」といったように、転職経験をポジティブな強みとして一言でまとめておくと良いでしょう。
Q2. 育児などでブランク期間があるのですが、どう書けばいいですか?
A. 正直に記載し、ブランク期間中の経験もアピールにつなげましょう。
育児や介護などによるブランクは、決してマイナス評価にはなりません。むしろ、就業していない看護師資格保有者(潜在看護師)は全国に約70万人以上いると推計されており、復職を目指すあなたは非常に貴重な存在です。
職務経歴には「2020年4月~2023年3月 育児のため離職」のように事実を正直に記載しましょう。大切なのは、ブランク期間を「何もしていなかった期間」としないことです。
例えば、「育児を通じて、急な体調変化に対応する冷静な判断力や、効率的な時間管理能力が身につきました」のように、看護の仕事にも通じるスキルとしてアピールすることができます。また、復職に向けて勉強していたこと(研修への参加、関連書籍の読破など)があれば、学習意欲の高さを示す絶好の材料になります。
Q3. 未経験の診療科に挑戦したい場合、どうアピールすれば?
A. 「ポータブルスキル」をアピールし、熱意と学習意欲を伝えましょう。
未経験分野への挑戦は、素晴らしい意欲の表れです。専門知識や技術はこれから学ぶ必要がありますが、これまでの看護師経験で培った「持ち運び可能なスキル(ポータブルスキル)」は、どんな分野でも必ず活かせます。
例えば、コミュニケーション能力、リーダーシップ、問題解決能力、教育・指導スキルなどがそれにあたります。自己PRでは、「急性期病棟で培った多職種連携の経験を活かし、貴院の地域包括ケア病棟においても、円滑なチーム医療に貢献できます」といったように、今あるスキルが新しい分野でどう役立つのかを具体的に示しましょう。
そして何よりも、「なぜその分野に挑戦したいのか」という強い動機と、新しいことを貪欲に学んでいく姿勢を熱意をもって伝えることが大事です。
Q4. 正直、アピールできるような特別な強みや実績がありません…。
A. 「特別なこと」は必要ありません。日々の業務にこそ、あなたの強みは隠されています。
「自分にはアピールできる実績なんてない」と感じるのは、多くの場合、ご自身の経験を「強みとして言語化できていない」だけです。華々しい成果や役職経験はなくても、日々の業務の中であなたが当たり前のように行っていることの中に、採用担当者が評価する強みは必ず眠っています。
まずは「キャリアの棚卸し」をしてみましょう。これまでの業務で「工夫したこと」「後輩に感謝されたこと」「患者様に喜んでもらえたこと」「大変だったけれど乗り越えたこと」などを思い出せるだけ書き出してみてください。
例えば、「インシデント防止のために、確認手順をダブルチェックするよう後輩に指導した」という経験は、「高い安全意識」と「指導力」という立派な強みです。特別な経験を探すのではなく、日常の誠実な仕事ぶりにこそ、あなたの価値が光っています。
6.看護師の職務経歴書作成は、最高の自己分析の機会です
職務経歴書を作成するプロセスは、あなたがこれまで何を学び、何に悩み、何を大切にして看護に取り組んできたのかを再確認する「最高の自己分析の機会」です。過去の経験を一つひとつ言葉にしていく中で、自分でも気づかなかった強みや、これから本当にやりたい看護の形が見えてくることでしょう。
この書類は、過去を記録するためだけのものではありません。あなたが未来に進むための羅針盤を作る作業なのです。この記事が、あなたが自信を持って新たな一歩を踏み出し、あなたらしいキャリアを実現するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。