就職活動に臨む新卒の学生にとって、履歴書の作成は避けては通れない最初の関門です。
多くの学生が、「デジタル化が進む現代において、本当に履歴書は手書きで作成する必要があるのだろうか?」という疑問や不安を抱えています。
本記事は、新卒の履歴書作成に関するあらゆる疑問を解消するために、採用担当者や就活生を対象とした最新の調査データ、専門家の知見、そして具体的な状況に応じた判断方法を紹介していきます。
就活生一人ひとりが自信を持って最適な選択ができるように、網羅的に解説します。
- 採用担当者と就活生双方の最新動向がデータでわかる
- 手書きとパソコン作成、それぞれのメリット・デメリットが明確になる
- 企業の特性や状況に応じた最適な履歴書の形式を自分で判断できるようになる
1.データで見る実態:採用担当者と就活生の本音

かつては「履歴書は手書きが常識」という風潮がありましたが、近年では「形式不問」という声も増えてきています。
ここでは、採用担当者と就活生双方の意識調査から、現代における履歴書形式の考え方を紹介していきます。
採用担当者の評価傾向:「形式不問」が多数派だが、手書きを好む層も依然として存在する
履歴書に関して、リクナビNEXTのアンケート調査ではこのような結果が出ています。

出典:リクナビNEXT
複数の調査結果を統合すると、採用担当者の大多数がパソコン作成の履歴書を許容していることがわかります。
しかし、依然として約2割から3割の担当者は手書きの履歴書を好む傾向にあるようです。
その理由として「気持ちがこもっている」「文字から人となりがわかる」といった、手間ひまから応募者の熱意や人柄を読み取ろうとする意図が挙げられます。
応募先の採用担当者がどちらのタイプか事前に知ることはできません。
もちろん、履歴書の形式が面接の評価に大きく左右されることはないと考えられますが、特に志望度の高い「本命企業」においては、少しでもリスクを回避したいなら「手書き」を選択したほうが、無難かもしれません。
就活生の動向:効率性を重視し、パソコン作成が主流に
採用側の意識変化と就職活動の効率化というニーズを背景に、就活生の行動も変化しています。
マイナビ転職の調査では、転職活動者(新卒も含む広義の就職活動者)のうち63.4%がパソコンで履歴書を作成しており、手書き派の36.6%を大きく上回っています。

出典元:マイナビ転職
これは、パソコンでの作成が現代の就職活動における標準的な手法となりつつあることを示しています。
2.徹底比較:手書き vs パソコン作成のメリット・デメリット

どちらの形式を選択すべきか判断するためには、それぞれの長所と短所を正確に理解しましょう。
ここでは、両者の特性を多角的に分析します。
手書き履歴書:「熱意」と「人柄」で勝負する伝統的アプローチ
メリット
- 熱意と誠実さが伝わる
時間と手間をかけて丁寧に作成された履歴書は、それ自体が「入社意欲の高さ」の証として評価されることがあります。 - 人柄を表現できる
文字の丁寧さや力強さといった筆跡から、几帳面さやエネルギッシュさなどの人柄を伝えることができます。 - 差別化と記憶への残りやすさ
多数がパソコンで作成する中、整った手書きの履歴書は採用担当者の印象に残りやすくなります。
デメリット
- 作成に膨大な時間がかかる
一枚仕上げるのに1時間以上かかることも珍しくなく、複数社に応募する際には大きな負担となります。 - 修正が一切許されない
公的書類である履歴書では、修正液や修正テープの使用はマナー違反です。一文字でも間違えれば、最初から全て書き直す必要があります。 - 字の綺麗さが評価に影響する
読みにくい字は「雑な性格」というマイナスイメージに繋がりかねません。 - 業界によっては時代遅れと見なされる
IT業界など、PCスキルや効率性を重視する企業では、かえって評価を下げる可能性があります。
パソコン作成履歴書:「効率性」と「合理性」を重視する現代的アプローチ
💻パソコン作成履歴書
- 圧倒的な作成効率
- 誰でも読みやすく美しい仕上がり
- 修正・更新が容易
- 基本的なPCスキルを証明できる
- 熱意や個性が伝わりにくい
- コピー&ペーストによるミスが発生しやすい
- 多くの応募者の中に埋没する
メリット
- 圧倒的な作成効率
一度テンプレートを保存しておけば、企業ごとに内容を書き換えるだけで済み、作成時間を大幅に短縮できます。 - 誰でも読みやすく美しい仕上がり
統一されたフォントにより、字の上手い下手に左右されず、誰が作成してもプロフェッショナルで読みやすい書類が完成します。 - 修正・更新が容易
書き損じや内容の変更も数秒で修正可能です。 - 基本的なPCスキルを証明できる
WordやExcelで適切にフォーマットされた履歴書を提出すること自体が、ビジネスに必須のPCスキルを持っていることの間接的な証明となります。
デメリット
- 熱意や個性が伝わりにくい
無機質で画一的な印象を与えやすく、「手間をかけていない」と熱意を疑われる可能性があります。 - コピー&ペーストによるミスが発生しやすい
応募先の企業名を修正し忘れるといった致命的なミスが起こりがちです。 - 個性の埋没
多くの応募者が同様のテンプレートを使用するため、内容で際立ったアピールができない場合、その他大勢に埋もれてしまう危険性があります。
3.履歴書の形式はどっちにする?ケースによる判断方法

履歴書の形式選択は、応募先企業の文化をできるかぎり理解し、最適な方法を選択するとよいでしょう。
以下のフローチャートで、最適な形式を導き出しましょう。
最適な履歴書形式を見つけるフローチャート
応募先と自分を分析して戦略的に判断しよう!
1. 企業の募集要項に形式の指定はありますか?
2. 応募先は「伝統的」or「現代的」?
3. 職種で重視されるスキルは?
4. 応募する企業数は?
5. 自分の字に自信はありますか?
手書き履歴書が有利に働くケースもある
歴史ある伝統的企業や、高級サービス業、福祉・介護といった人柄や温かみを重視する職種では、手書きが有効な手段となり得ます。
また、競争率の非常に高い「本命企業」に対して、熱意を伝える最終手段として強力な武器になることや、自身の美しい字をアピールポイントとして活用できる場合も考えられます。
パソコン作成履歴書を推奨するケース
IT・Web・ベンチャー・外資系といった効率性やデジタルへの適応能力を評価する企業や、PCスキルが必須の職種ではパソコン作成が合理的です。
また、多数の企業に応募する場合の効率化や、データでの提出が求められる場合、そして自身の字に自信がない場合には、パソコンで作成した方が確実に良い印象を与えられます。
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履歴書の形式を決めたら、次はいよいよ内容の作成です。学歴や資格、自己PRなど、各項目で採用担当者はどこを見ているのでしょうか。こちらの記事では、履歴書全体の書き方を項目ごとに徹底解説しています。見本とNG例を参考に、選ばれる一枚を完成させましょう。
4.完璧な手書き履歴書を作成するためのマニュアル

手書きを選択した場合、その効果を最大化するためには細心の注意と丁寧な作業が求められます。
一つ一つの作業を確実に進めていきましょう。
ステップ1:履歴書作成のための道具を揃える
まずは以下のものを用意しましょう。
- 質の良い履歴書用紙を複数枚
- 0.5mmから0.7mmの黒色・油性のボールペン
- 下書き用のシャープペンシルと消しゴム
- そして3ヶ月以内に撮影した清潔感のある証明写真
ステップ2:パソコンで下書きを作成する
ペンを握る前に、まずはWordなどで全ての記入内容を打ち込み、文章を完成させます。誤字脱字をチェックし、各記入欄に収まるように文字数を調整することが、完成度を大きく左右します。
特に志望動機や自己PR欄は、手書きでは修正が困難なため、この段階で表現を練り上げておきましょう。
また、実際の履歴書用紙と照らし合わせて、文字数が適切かどうかを事前に確認しておくことで、清書時のミスを大幅に減らすことができます。
ステップ3:丁寧な文字で清書する
完成した文章を、履歴書用紙にシャープペンシルでごく薄く書き写します。この下書きは、後で消しゴムで消すことを前提としているため、薄めに書くことがポイントです。
字の上手い下手よりも、一字一字を丁寧に、文字の大きさや間隔を揃えることを意識するだけで、全体の印象は格段に向上します。
特に漢字とひらがなのバランス、行の間隔を統一することで、読みやすく整った印象を与えることができます。
急いで書かず、時間をかけて丁寧に仕上げることが成功の鍵です。
ステップ4:最終確認と仕上げ
インクが完全に乾いてから下書き線を消しゴムで消します。焦って消すとインクがにじむ恐れがあるため、最低でも5分程度は待ちましょう。
万が一失敗した場合、修正液や修正テープは絶対に使用せず、潔く新しい用紙に書き直してください。これは日本のビジネス文書における鉄則です。完成後は、第三者にチェックしてもらうと万全です。
誤字脱字はもちろん、日付や連絡先に間違いがないか、証明写真がまっすぐ貼られているかなど、細部まで確認することで、プロフェッショナルな印象を与える履歴書が完成します。
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5.効率的でプロフェッショナルなPC作成履歴書の究極ガイド

パソコンで作成する場合、その利便性が仇となり、誤字脱字や変換ミスに繋がることがあります。
以下の点を守り、洗練されたデジタル履歴書を目指しましょう。
ステップ1:最適なテンプレートを選ぶ
最も無難なのは、厚生労働省が推奨する様式です。
これは、性別欄が任意になるなど、公正な採用選考に配慮した設計になっています。各就職情報サイトが提供するテンプレートも使いやすく工夫されています。
テンプレート選択時は、記入欄の大きさや配置が自分のアピールポイントに適しているかを確認することが重要です。
例えば、資格を多く持っている場合は資格欄が充実したもの、職歴をアピールしたい場合は経歴欄が広いものを選びましょう。
また、応募先企業の業界に合わせて、シンプルで堅実な印象を与えるデザインを選択することで、より効果的な履歴書が作成できます。
参考:厚生労働省 厚生労働省が新たに作成した「履歴書様式例」を掲載しました。
ステップ2:フォーマットの基本ルールを守る
フォントは「MS 明朝」など読みやすいものを選び、サイズは本文を10.5pt~11ptに設定するなど、文書全体で統一感を持たせることが重要です。
適度に改行を入れ、見やすいレイアウトを心がけましょう。
項目名は太字にして内容との区別を明確にし、行間は1.0~1.15程度に設定することで、圧迫感のない読みやすい文書になります。また、余白も適切に確保し、文字がぎっしり詰まった印象を避けることが大切です。
色は基本的に黒色を使用し、装飾的な要素は控えめにして、ビジネス文書としての品格を保ちながら、採用担当者が読みやすい履歴書を目指しましょう。
ステップ3:内容作成と「使い回し」の罠を回避する
学歴や資格といった基本情報以外、志望動機や自己PRは必ず企業ごとに内容を最適化してください。
企業の事業内容や求める人物像を事前に調査し、それに合わせた内容に調整することが重要です。
提出前には、企業名が間違っていないか、変換ミスはないかなどを最低3回は見直しましょう。使い回しが露呈した履歴書は、即座に不合格となる可能性が高いです。
また、コピー&ペーストを行う際は、前回応募した企業の情報が残っていないか細心の注意を払い、志望動機では具体的な企業名や事業内容に言及することで、真剣度の高さをアピールできます。
ステップ4:提出形式を整える
提出する際は、必ずPDF形式に変換します。これにより、相手の環境に左右されずにレイアウトが保持され、意図しない編集を防ぐことができます。
PDF変換時は、フォントが正しく埋め込まれているか、画像や表が崩れていないかを必ず確認しましょう。
ファイル名は「履歴書氏名提出日.pdf」のように、誰の何の書類かが一目でわかるように設定するのがビジネスマナーです。
また、ファイルサイズが大きすぎないか(通常2MB以下が望ましい)を確認し、メール添付する場合は件名も「履歴書送付の件(氏名)」など明確にして、採用担当者が管理しやすい形で提出することが重要です。
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6.履歴書はあなたの最初の戦略的プレゼンテーション
新卒の就職活動において、履歴書を手書きにするかパソコンで作成するかという選択は、単なる作業方法の決定ではありません。
それは、応募先企業への深い理解と、自身の強みを最大限に活かすための、戦略的な意思決定といえるかもしれません。
最も重要なのは、形式そのものではなく、その選択の背景にある思考プロセスと、最終的に提出される書類の完成度です。
どちらの形式を選んだとしても、成功の鍵は共通しています。それは、誤字脱-字のない正確さ、論理的で説得力のある内容、そして相手への配慮が感じられる丁寧なプレゼンテーションです。
履歴書作成を単なる「作業」と捉えず、自身のプロフェッショナリズムと戦略的思考をアピールする最初の機会と位置づけ、自信を持って就職活動の第一歩を踏み出してください。