転職活動で履歴書を作成する際、「出向」の経験をどう書けばよいか迷う方は少なくありません。「転籍とはどう違うのか」「不利になるのではないか」といった不安もあるでしょう。
この記事では、出向の正しい書き方や法的な違い、出向経験を強みに変えるアピール方法を例文付きで解説します。
- 「出向」「転籍」「派遣」の法的な違い
- ケース別の履歴書職歴欄への「出向」の書き方(例文付き)
- 出向経験を転職の「強み」としてアピールする方法
1.「出向」「転籍」「派遣」の法的な違いとは?

履歴書に正確に記載するため、まずは「出向」「転籍」「派遣」の違いを整理しましょう。
これらは混同されがちですが、法律(労働契約)の観点では明確に異なります。
違いの核心は「元の会社との雇用契約」
「出向」「転籍」「派遣」それぞれの言葉の意味は、以下のとおりです。
出向(在籍型出向)
元の会社との雇用契約を維持したまま、別の会社(出向先)の指揮命令下で勤務することです。
一定期間後に元の会社に戻る(帰任する)ことが一般的です。
転籍(移籍型出向)
元の会社との雇用契約を終了させ、新しく別の会社(転籍先)と雇用契約を結ぶことです。
実質的には「転職」と同じ状態を指します。
派遣(労働者派遣)
派遣会社(派遣元)と雇用契約を結び、別の会社(派遣先)の指揮命令下で勤務します。
給与の支払いや社会保険の手続きは、勤務先である派遣先ではなく、雇用主である派遣会社が行います。

最も大きな違いは、「元の会社(在籍していた会社)との雇用契約が続いているか」という点です。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 配転と出向・転籍
一目でわかる「出向」「転籍」「派遣」の違い
この3つの違いを表にまとめると、以下のようになります。
| 形態 | 元の会社との雇用契約 | 勤務先(指揮命令) | 給与支払・社会保険 |
|---|---|---|---|
| 出向 | あり(維持) | 出向先 | 元の会社 (or 出向先) |
| 転籍 | なし(終了) | 転籍先 | 転籍先 |
| 派遣 | 派遣会社と契約 | 派遣先 | 派遣会社 |
履歴書の職歴欄には、この雇用契約の事実関係を正確に反映させる必要があります。
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「出向」や「転籍」の違いを押さえたら、次は応募書類全体での書き分け方をマスターしましょう。こちらの記事では履歴書と職務経歴書、それぞれの役割を理解することで、あなたのキャリアをより効果的に伝えることができます。
2.【ケース別】履歴書の職歴欄への「出向」の書き方

出向経験を履歴書に記載する際は、「いつ」「どの会社から」「どの会社へ」出向したのかを明記するのが基本です。
ケース1:出向し、元の会社に帰任した場合
最も一般的なケースです。出向の開始と終了(帰任)を時系列で記載したものが、以下の例です。
【記入例:出向し、元の会社に帰任した場合】
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇(元の会社) 入社 |
| 平成〇年 5月 | 株式会社△△(出向先)へ出向 (株式会社〇〇 在籍のまま) 営業部にて新規開拓営業に従事 |
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇(元の会社)へ帰任 営業企画部 配属 |
ケース2:出向し、そのまま出向先へ転籍した場合
出向から転籍へ切り替わったパターンです。「出向」した事実と、その後に「転籍」した事実を明確に分けます。
転籍は「退職」と「入社」として扱います。
【記入例:出向先へ転籍した場合】
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇(元の会社) 入社 |
| 平成〇年 5月 | 株式会社△△(出向先)へ出向 (株式会社〇〇 在籍のまま) |
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇(元の会社) 退職 (株式会社△△へ転籍のため) |
| 平成〇年 4月 | 株式会社△△(転籍先) 入社 (出向先へ転籍) 営業部長としてマネジメントに従事 |
ケース3:会社都合(合併・分社化)で異動した場合
合併や分社化による異動は、厳密には出向や転籍と異なる場合があります。書き方は転籍のケースに準じます。
会社都合であることを、カッコ書きで補足すると丁寧です。
【記入例:会社都合(合併・分社化)で異動】
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇 入社 |
| 平成〇年 10月 | 株式会社△△へ転籍 (株式会社〇〇の分社化に伴う異動) |
職歴が多くて書ききれない場合の対処法
職歴が多く、すべてを詳細に書くと枠内に収まらない場合もあります。その際は、出向の詳細をカッコ書きで簡潔に記載する方法もあります。
【記入例:職歴が多くて書ききれない場合】
| 平成〇年 4月 | 株式会社〇〇 入社 営業部 配属 (平成〇年5月~平成〇年4月まで株式会社△△へ出向) |

ただし、この場合、出向先での具体的な業務内容が伝わりにくくなります。詳細は別途「職務経歴書」で補足しましょう。
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出向期間中の詳しい業務内容や成果は、職務経歴書でアピールするのが正解です。こちらの記事では基本の書き方から採用担当者の目に留まるレイアウトのコツまで、テンプレート付きで分かりやすく解説します。
3.「出向=不利」は誤解?出向経験のポジティブな実態

転職を考えている方の中には、「出向」と聞くと、「左遷されたのでは?」とネガティブな印象を抱かれ、不利になるのではないかと心配される方もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそのように捉えられるわけではありません。
データで見る出向の目的:「人材育成」が多数
実際には、多くの企業がポジティブな目的で出向制度を活用しています。
例えば厚生労働省や産業雇用安定センターの調査では、出向目的として「雇用調整」よりも「人材育成」「若手・中堅社員の能力開発」「グループ企業間の連携強化」といった項目が上位に挙げられることが多くあります。
つまり、ネガティブな理由ではなく、むしろキャリアアップの一環として出向が命じられるケースも多いのです。
参考|公益財団法人産業雇用安定センター:人材育成型出向・キャリアアップ型出向 アンケート調査結果報告
採用担当者は「出向の事実」より「そこで何をしたか」を見ている
採用担当者は、「出向した」という事実だけで合否を判断することはありません。重要なのは、「出向先という新しい環境で、どのような役割を果たし、何を学び、どんな成果を出したか」です。
出向経験は、見方を変えれば「元の会社と出向先の、2つの異なる環境・文化を経験した」という貴重な実績です。この経験をどう伝えるかが鍵となります。
4.職務経歴書で出向経験を「強み」に変えるアピール方法

履歴書が「職歴の事実」を書く場所であるのに対し、職務経歴書は「経験の価値」をアピールする場所です。
出向経験は、職務経歴書でこそ「強み」として具体的に記述しましょう。
環境適応力や調整能力をアピールする
出向経験者は、新しい環境や人間関係、異なる仕事の進め方に順応する必要に迫られます。この経験は、「環境適応能力」や「柔軟性」の証拠となります。
また、元の会社と出向先の「橋渡し役」として動いた経験があれば、それは「調整能力」や「コミュニケーション能力」として高く評価されます。
【職務経歴書でのアピール例】
「出向先では、親会社(元の会社)と異なる業務フローや文化に直面しましたが、双方の意図を汲み取り、新たな業務マニュアルの作成を主導。結果として、連携ミスを前年比20%削減することに貢献しました。」
出向理由を面接で説明する際のポイント
面接官に出向の経緯を尋ねられた場合は、ネガティブな表現を避け、客観的な事実と、そこから得た学びを前向きに伝えましょう。
【面接での回答例】
「はい、前職ではグループ会社間の連携強化という目的で、〇〇社へ2年間出向いたしました。出向先では、それまで経験のなかった〇〇という業務を担当し、新しいスキルを習得できました。
また、立場の異なる両社の調整役を担ったことで、調整力も鍛えられたと自負しております。」
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5.出向経験は事実を正確に、前向きに伝えてアピールしよう!
履歴書に出向経験の記載することは、転職活動における不安要素の一つかもしれません。
しかし、ポイントを押さえれば、有効なアピール材料に変えることができます。
まずは、履歴書に「出向」なのか「転籍」なのか、雇用契約の事実を正確に記載しましょう。
その上で、職務経歴書や面接では、その経験から得た「環境適応能力」や「調整能力」を、具体的なエピソードと共に前向きに伝えてください。