ダブルワークの履歴書の書き方が分からず、応募をためらっていませんか?「ダブルワークは印象が悪い?」「本業に集中しないと捉えられ、採用にマイナスでは?」「かといって、副業を隠して後からトラブルになったら怖い…」と、悩むお気持ちもあるかと思います。
採用担当者にマイナスの印象を与えずに、スマートにダブルワークの現状を伝えておくには?
この記事では、履歴書の作成についてお悩みの方に、失敗しないダブルワークの履歴書の書き方について解説します。大切なのは、採用担当者が抱くであろう不安を先回りして解消し、自己管理能力や仕事への熱意を的確に伝えることです。
ダブルワークの応募に関する疑問や不安を解消し、自信を持って履歴書を作成するためのポイントを解説します。
- 履歴書を書く前に知っておきたいこと
- 採用担当者がダブルワーク応募者に抱く懸念点と、それを払拭する履歴書の書き方
- 職歴欄や本人希望欄など、ダブルワークの状況を的確に伝える具体的な記入例
1.【準備編】履歴書を書く前に知っておきたいこと

ダブルワーク(副業・兼業)とは、主となる仕事のほかに別の仕事を持つことです。これは国の「働き方改革実行計画」に基づき、人生100年時代に合った、自らが希望する多様な働き方の実現を目指す、国が認めた働き方です。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にも示されているとおり、労働者のキャリア形成や所得増加の観点から、国としてもダブルワークを推奨しています。
ただし、企業によってダブルワークに対する姿勢は異なるため、履歴書を書く前に注意点を確認しておきましょう。

企業がダブルワークをどう捉えているかを理解することが、応募の際に最適なアピール方法を見つける鍵となります。
①本業の就業規則で副業が許可されているか
まず、現在勤務している本業の会社で、ダブルワークが認められているかを確認する必要があります。企業によってはダブルワークが認められていないケースもあるため、兼業先を探すよりも先に、まずは現在勤めている会社にダブルワークの可否を確認しましょう。
また、ダブルワーク自体は認められていても、事前・事後に届け出ることを要件としている企業もあるため、この機会に兼業に関する規定を確認しておきましょう。就業規則で確認ができます。
また、ダブルワークを条件付きで許可/禁止している企業もあります。たとえば、競合他社での就業、情報漏洩のリスクがある業務を禁止している可能性があり、注意が必要です。また、公務員のように法律で禁止されている場合もあります。
ダブルワークが就業規則で許可されていれば、何も問題ありません。ただし禁止されている場合は、副業を始めること自体、慎重に判断しましょう。
就業規則に反した行為は、会社との信頼関係を損ねる行為として捉えられます。就業規則違反による減給、出勤停止、降格などの懲戒処分を受ける可能性があり、最悪の場合は、懲戒解雇や損害賠償請求を受けるおそれもあります。
②労働基準法の「労働時間通算」ルールとは?
労働者の健康を守るため、本業と副業(ダブルワーク)の労働時間を合算し、管理することが定められています。これを「労働時間の通算」と言います。この考え方は、労働基準法第38条第1項に基づいています。
第38条 第1項
労働時間は、事業所を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
つまり、ダブルワークによって複数の事業所で働く場合も、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働く場合は、超えた分は時間外労働(残業)となり、割増賃金が発生します。
もし超えてしまった場合、原則として、後から労働契約を締結した会社(副業先)が、時間外労働の割増賃金を支払う必要が生じます。(ただし、本業・副業の会社間で労働時間をどのように管理・申告するかによって、実務上の取り扱いが異なる場合があります。)
会社側としては、自社での労働時間以外についても残業代を払うのは負担が大きいため、ダブルワークで法定労働時間を超える可能性がある人の雇用を避ける傾向にあります。
そのため、面接時には労働時間について質問されることがあります。これは、会社側が労働時間の管理を適切に行うためです。ダブルワークを希望する際は、自身の労働時間を正確に把握し、会社に伝えることが重要です。
2.ダブルワークは隠すべき?正直に書くべき?

履歴書を作成する上で、最初に悩むのが「ダブルワークについて正直に書くべきか」という点かと思います。月に数時間程度だから、黙っておけば問題がないのでは?と考える場合は、この章でリスクとリターンを改めて確認する必要があります。
結論:正直に申告するのが基本
結論から言うと、上記したとおり、会社側は労働基準法上の問題から、ダブルワークの通算の業務時間数を把握する必要があります。会社側が状況を正確に把握できないと、労働時間や社会保険の手続でトラブルに見舞われる可能性があります。
現在お勤めの会社に対しても、新たに応募する会社に対しても、誠実な姿勢で接することが、円滑なダブルワークの第一歩と言えるでしょう。
総務省統計局の調査によると、ダブルワークをする人の数は2022年に305万人で、10年前に比べ90万人増加しています。
ダブルワークをする人は年々増加しており、決して特別なことではありません。ダブルワークをしていることを同僚に話す必要はないため、実は同僚のなかにも、すでにダブルワークしている人がいるかもしれません。
ダブルワーク応募者に対して採用担当者が懸念すること
ダブルワークの応募者に対して、採用担当者は、主に以下の3つの懸念点があります。履歴書では、これらを払拭することを意識しましょう。
① スケジュール管理は大丈夫か
「本業を理由に、急なシフト変更や欠勤があるのではないか」という懸念
② 健康・体調面は問題ないか
「無理な働き方で、体調を崩し欠勤しないか」という、健康状態への憂慮
③ 業務への支障はないか
「疲労が原因で、仕事のパフォーマンスが落ちないか」という、業務品質に関する懸念
これらの懸念に対し、履歴書で「自己管理能力が高く、計画的に両立できる人材である」と示すことが採用率アップにつながります。
これらの懸念点を払拭できれば、ダブルワークをしている=「多方面で活躍する有能な人材」であると評価されることもあります。ダブルワークを隠すのではなく、上手にアピールする姿勢が大切だといえます。
3.【項目別】ダブルワークの履歴書の書き方と記入例

それでは、具体的に履歴書の各項目をどのように書けばよいのでしょうか。例文とともに解説します。
①職歴欄|就業状況を正確に伝える書き方(現在ダブルワーク中/過去の経験など)
職歴欄は、現在の就業状況を正確に伝えるための重要な項目です。
【記入例:現在、正社員として働きながら応募する場合】
令和〇〇年 4月 株式会社〇〇 入社(現在に至る) 事業内容:〇〇 職種:営業職 雇用形態:正社員 ※現在、上記の会社で週5日・40時間勤務しております。 貴社での勤務は、上記の業務に支障が出ない範囲で行います。

②志望動機|目的をポジティブに伝える例文集(収入増/スキルアップなど)
志望動機では、なぜダブルワークをしたいのか、この応募先を選んだのかを明確に伝えます。
「収入を増やしたい」という理由も正直に伝えても問題はありません。それに加えて仕事への意欲や貢献したい気持ちを表現することが大切です。
【例文:収入アップが目的の場合】
現在の〇〇の仕事に加え、将来の〇〇(目標)の資金を貯めるため、収入を増やしたいと考えております。貴社の「〇〇」という理念に共感し、私もチームの一員として貢献したいと強く感じました。現在の仕事で培った〇〇のスキルを活かし、貴社の発展に貢献できるよう努めてまいります。
【例文:スキルアップが目的の場合】
現在、〇〇として勤務しておりますが、将来的に〇〇の分野でキャリアを築きたいと考えております。貴社では、未経験からでも〇〇の業務に挑戦できると拝見し、大変魅力に感じました。本業で培った〇〇の経験を活かしながら、一日も早く新しい業務を覚え、貴社に貢献できるよう精一杯努力いたします。
③本人希望欄|勤務可能な曜日・時間を具体的に伝える書き方
本人希望欄は、採用担当者がシフトを組む上で重要な情報源です。
勤務可能な曜日や時間帯を具体的かつ明確に記載しておくと、「計画性があり、安心してシフトを任せられる」という印象を与えられます。
【記入例】
現在、他社にて週5日(月~金、9:00~18:00)勤務しております。
貴社での勤務は、以下の曜日・時間帯を希望いたします。
・平日:19:00~22:00
・土日祝:10:00~18:00の間で4~6時間程度
本業との両立のため、繁忙期(毎年7月下旬、1月下旬)は、シフトについてご相談できますと幸いです。

④自己PR欄|ダブルワーク経験を「強み」に変えるアピール方法
自己PRでは、ダブルワークで求められる以下の能力をアピールすると効果的です。過去のダブルワーク経験があれば、それを具体例として盛り込みましょう。
- 自己管理能力
- タイムマネジメント能力
- 複数の業務をこなす対応力
【例文】
私の強みは、自己管理能力と計画性です。大学時代には、学業と2つのアルバイトを両立させていました。それぞれの役割や締め切りを常に意識し、タスクを細分化して優先順位をつけることで、どちらの仕事も責任を持ってやり遂げることができました。この経験で培ったタイムマネジメント能力を活かし、貴社でも本業と両立しながら、貢献できると考えております。
履歴書の書き方・例文・テンプレートをもっと幅広く知るには、こちらの記事もご参照ください。
4.【応用編①】ダブルワークの面接でよくある質問と回答例

履歴書が無事に通過したら、次は面接です。
ダブルワークの面接では、履歴書の内容をさらに深掘りする質問がされます。事前に回答を準備しておくと安心です。
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なぜダブルワークをしようと思ったのですか? (質問意図:志望動機と仕事への意欲の確認)
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回答例:現在の収入に加えて、将来の〇〇という目標に向けた資金を貯めたいと考えております。また、〇〇のスキルを活かせる貴社で働くことで、自身の成長にも繋げたいです。
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本業との両立は本当に可能ですか?体力的に大丈夫ですか?(質問意図:スケジュール管理能力と健康状態の確認)
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回答例:はい、問題ございません。本業は基本的に残業がなく、土日祝日が休みのため、生活リズムは安定しております。また、体力維持のために週2回の運動を習慣にしており、健康管理には自信があります。
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本業の会社はダブルワークを許可していますか?(質問意図:コンプライアンス意識の確認)
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回答例:はい。現在の勤務先の就業規則で、副業が認められていることを確認済みです。
5.【応用編②】税金や社会保険はどうなる?確定申告の基本

ダブルワークをする上で、税金や社会保険の手続きも気になるところです。最後に、基本的なルールを簡単に解説します。
ダブルワークで得た所得(収入から経費を引いたもの)が年間20万円を超える場合
原則として自分で確定申告を行い、所得税を納める必要があります。確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの間に、前年1年間の所得を税務署に申告する手続きです。
※これは主に、給与を1か所から受けている方が、副業で「事業所得」や「雑所得」を得た場合のルールです。副業先からも「給与」として支払いを受けている場合は、この「20万円ルール」が適用されないケースがあるなど、条件が異なります。
社会保険(健康保険・厚生年金)
本業の会社で加入している場合、ダブルワーク先の労働時間や日数によっては、そちらでも加入要件を満たすことがあります。

詳しい条件は複雑なため、不明点があれば、年金事務所や会社の労務担当者に確認することをおすすめします。
参考|国税庁:所得税の確定申告
6.ダブルワークでも履歴書の書き方のポイントを押さえれば大丈夫

本記事では、ダブルワークで応募する際の、履歴書の書き方について解説しました。
応募時は、ダブルワークがマイナスに捉えられないか不安かもしれません。しかし、ポイントを押さえた履歴書であれば、採用担当者にもしっかりと伝わります。
- 採用する側の懸念点について、きちんと説明できるようにする
- 本業の就業状況、応募先での勤務可能な日数や時間を具体的に書く
- ダブルワークを選択した理由をポジティブに伝える
これらのポイントを意識し、採用につながる履歴書を作成するのがおすすめです。ダブルワークの履歴書の書き方が分かったところで、次は職務経歴書の書き方についても知りたい場合には、こちらの記事もご参照ください。