結婚を機に退職し、新たなキャリアをスタートさせようとするとき、「履歴書に退職理由をどう書けばいいのか」と悩んでいませんか?「結婚退職と正直に書くと、不利になるかもしれない」「かといって、どう書くのが正解なのだろうか」など、不安を感じてしまいますよね。
この記事では、法務・労務管理の実務とキャリア形成の観点から、履歴書における結婚退職の「最適な書き方」と、採用担当者の懸念を払拭する「戦略的な伝え方」を、具体的な例文とともに解説します。
- 履歴書に結婚退職の具体的な理由を書くべきでない理由
- 採用担当者の懸念を払拭する「一身上の都合」を使った安全な履歴書の書き方
- 面接で結婚退職について質問された際に、意欲を伝える回答方法
1.履歴書に「結婚退職」と書くのは損? 採用担当者の本音と最適な書き方

転職活動において、履歴書は最初の関門です。
ここで採用担当者に不要な懸念を抱かせてしまわないよう、まずは担当者の本音を確認していきましょう。
採用担当者が懸念するのは「長期就業が可能かどうか」
まず理解しておきたいのは、採用担当者が「結婚」というライフイベントそのものを否定的に見ているわけではない、ということです。

企業側が懸念しているのは、「採用後、再びライフイベントを理由に早期離職してしまうのではないか」という点。
つまり、企業が知りたいのは「長期就業が可能かどうか」です。
履歴書に「結婚のため退職」や「寿退社」と記載すると、採用担当者によっては「家庭を優先するのではないか」「すぐにまた辞めてしまうかも」といった先入観や偏見を抱かせてしまうリスクがゼロではありません。
「一身上の都合」が最も安全で合理的な記載
結論から言うと、履歴書の職歴欄には具体的な理由を書かず、「一身上の都合により退職」と記載するのが最も安全かつ合理的です。
これは退職理由をごまかすためではありません。
履歴書という公的な書類において、不要な情報を記載し、自らリスクを負う必要はない、という「リスク管理」の観点からの判断です。
2.【履歴書の書き方】結婚退職を記載する際の基本ルールと例文

ここでは、履歴書のどこに・どのように前職の退職理由を記載すべきか解説します。
基本:「職歴欄」には「一身上の都合により退職」とだけ記載する
退職理由は、職歴欄の最後に記載するのが一般的です。
【職歴欄 記載例】
平成〇〇年〇月 株式会社〇〇 入社
令和〇〇年〇月 株式会社〇〇 退社 一身上の都合により退職現在に至る
このように、最後の行に退職した事実と「一身上の都合により退職」とだけ記載し、改行して右端に「現在に至る」(または「以上」)と記します。
補足:「本人希望欄」や「備考欄」に書く必要はない
履歴書には「本人希望欄」や「備考欄」がありますが、ここにも結婚や退職理由の詳細を書く必要は一切ありません。

この欄は、勤務地や勤務時間、職種など、働く上で「絶対に譲れない条件」がある場合のみに使用します。
特に記載することがなければ、「貴社規定に従います」と記載するのが一般的です。
NG例:「寿退社のため」などの詳細や主観的な表現
以下のような記載は、前述のリスクを高める可能性があるため避けましょう。
NG記載例
- 結婚のため退職
- 寿退社のため退職
- 家庭の事情により退職
(→「一身上の都合」と同じ意味ですが、より詮索を招く可能性があります)
また、近年ではプライバシー保護の観点から、厚生労働省も性別欄を任意とした様式を推奨しています。これらも活用しつつ、退職理由はシンプルに記載しましょう。
3.なぜ「一身上の都合」と書くべきなのか? 3つの明確な理由

「一身上の都合」と書くことに、どこか嘘をついているような罪悪感を覚える必要はありません。これには法務・労務的な観点からも明確な理由があります。
理由1:履歴書は「事実」を伝える公的書類だから
履歴書は、応募者の学歴や職歴といった「客観的な事実」を証明するための公的性格を持つ書類です。
「なぜ退職したのか」という背景や主観的な事情までを詳細に記載する場ではありません。
理由2:不要な情報が「潜在的な偏見」を招くリスクを避けるため
応募書類の段階では、応募者自身が不利になる可能性のある情報をあえて開示する必要はありません。
「結婚」という言葉が、採用担当者の無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を引き起こす可能性を排除するためにも、定型句である「一身上の都合」が最適です。
理由3:労働法規上、詳細な退職理由の記載義務はないため
労働法規の観点からも補足すると、労働基準法やその他の法律において、労働者が転職先の企業に対し、前職の「詳細な退職理由」を報告する義務は定められていません。
「一身上の都合」とは、自己都合による退職全般を指す正式な用語であり、これを用いることは法的に何ら問題のない、正当な記載方法です。
4.「職務経歴書」や「面接」ではどう伝える? 戦略的な二段階アプローチ

職務経歴書や面接では、採用担当者の懸念を払拭したうえで、勤務意欲を積極的にアピールすることがポイントです。

履歴書を「守り」の書類とするならば、職務経歴書や面接は「攻め」の場です。
具体的なアプローチ方法を見ていきましょう。
ステップ1:職務経歴書での補足(書いても良い場合)
基本的には職務経歴書にも詳細を書く必要はありません。
ただし、退職からブランク(離職期間)があり、その間にスキルアップなどをしていた場合は、自己PR欄などで簡潔に触れることも有効です。
【職務経歴書 自己PR欄 記載例(ブランクがある場合)】
前職退職後、結婚に伴う転居と並行し、貴社の業務においても即戦力となるよう、Webデザイン(Photoshop, Illustrator)の専門スクールにて学習してまいりました。
納得感のある離職期間の過ごし方をしてきたことをアピールすると、企業側から「信頼に値する、前向きな人材だ」という評価を得やすくなります。
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職務経歴書の書き方が知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。結婚退職をネガティブに捉えられないようにするのはもちろん、採用担当者に「会いたい」と思わせる職務経歴書の書き方を紹介しています。
ステップ2:面接で「懸念」を「安心」に変える伝え方【例文付き】
面接で退職理由を尋ねられた場合は、アピールチャンスです。
ここで重要なのは、「結婚」という事実だけを伝えるのではなく、「長期的に働く意欲と体制が整っていること」をセットで伝えることです。
【面接での回答例】

はい、前職は結婚に伴う転居のため、やむを得ず退職いたしました。
転居も落ち着き、生活基盤が整いましたので、心機一転、これまでの〇〇(職種)の経験を活かして、腰を据えて長く貴社に貢献したいと考えております。
このように、
①事実を簡潔に認め、
②現在は就業に全く支障がなく、
③むしろ長期的に貢献したい
という前向きな意欲を明確に示すことで、採用担当者の懸念を「安心」に変えることができます。
5.【ケース別Q&A】結婚退職にまつわる履歴書の疑問

最後に、応募者からよく寄せられる疑問についてお答えします。
Q1:結婚によるブランク(離職期間)がある場合は?

履歴書には事実(退職日)を記載するのみで問題ありません。
ただし、面接では必ずブランク期間について質問されます。
その際は、「結婚に伴う手続きや転居で忙しかった」と正直に伝えましょう。
「その間に、〇〇の資格取得に向けて勉強していた」「家事と両立できる体制を整えていた」など、ブランク期間を無為に過ごしていたわけではないことを補足できると、より説得力が増します。
Q2:婚約中・結婚予定の段階ではどう書く?

履歴書を作成している時点でまだ在職中であれば、退職理由は記載する必要はありません(「現在に至る」のみ)。
もしすでに退職済みで、その理由が「結婚準備のため」であっても、履歴書には「一身上の都合により退職」と記載するのが最も安全です。
Q3:面接で結婚や子供の予定など、不適切な質問をされたら?

本来、企業が採用選考において、結婚や出産、家族計画といった応募者のプライバシーに関わる質問をすることは、職業安定法や男女雇用機会均等法に基づき不適切とされています。
このような事実はあるものの、表立って「プライベートなことですので、回答は差し控えさせていただきます」と答えると、角が立つ可能性も否定できません。
そこで、「私事ではございますが、業務に支障がないよう体制を整えておりますのでご安心ください」のように、やんわりと回答をかわしつつ、業務遂行能力に問題がないことを伝えることをお勧めします。あくまでも「仕事への意欲」を軸に回答するのが賢明な対応と言えます。

【例】
・現時点では仕事に集中したいと考えております
・将来的には考えておりますが、まずは貴社で一日も早く戦力となれるよう尽力する所存です
6.履歴書は「リスク管理」、面接は「意欲表明」の場と心得よう

結婚退職という経歴は、決して不利になるものではありません。大切なのは、伝える「場所」と「方法」を戦略的に使い分けることです。
履歴書(守り)
「一身上の都合」とだけ記載し、不要な偏見を招くリスクを徹底的に管理する。
面接(攻め)
退職理由を尋ねられたらチャンスと捉え、「就業環境は万全であること」と「長期的に貢献したい意欲」を前向きに表明する。
結婚というライフイベントを前向きな転機として捉え、しっかりと準備すれば、採用担当者にもその意欲は必ず伝わります。不安に感じる必要はありません。
この2段階のアプローチで採用担当者の懸念を払拭し、自信を持って次のキャリアへ進むことができます。
7.攻守を使い分けて採用担当者に上手にアピールしよう

本記事で解説した通り、履歴書は「一身上の都合」として事実を端的に記す「守り」、面接は長く働きたい熱意を伝える「攻め」と、明確に役割を使い分けることが重要です。
結婚というライフイベントは、決してキャリアの障害ではありません。法的なルールと戦略的な伝え方を味方につければ、採用担当者の懸念は十分に払拭できます。自信を持って、新たな一歩を踏み出してください。