履歴書作成の最終段階で、記述に迷ってしまうのが「健康状態」の欄です。
「正直に書くと、選考で不利になるかもしれない」
「でも、隠して入社した後にトラブルになるのは怖い」
その葛藤を抱えている方は少なくありません。実はこの欄、単に健康かどうかを伝えるだけでなく、入社後のリスク管理や信頼構築のための重要な役割も持っています。
この記事では、個々の状況に合わせた正しい書き方と、「書かない」という選択肢について解説します。
- 「良好」と書いていいラインと、具体的に書くべきケースの判断基準
- 通院中や持病がある場合でも、ネガティブにならずに伝える書き方(例文付き)
- どうしても書きたくない場合に使える「厚生労働省推奨の新様式」という選択肢
1.結論!履歴書の健康状態欄には何を書くべきか?
まず、結論からお伝えします。健康状態欄を書くときの判断基準は、「業務を行う上で支障があるかどうか」が原則となります。
企業がこの欄で知りたいのは、詳しい病名やプライベートな病歴ではありません。「自社に入って、毎日元気に働けるか?」「業務に支障をきたすことはないか?」という点を確認したいのです。
原則は「良好」で問題ありません
判断基準
「業務を行う上で支障があるか?」
現在健康であり、働く上で特に問題がなければ、「良好」または「きわめて良好」と記入しましょう。これが基本の書き方です。
「健康」の定義において、アスリートのような屈強さは求められません。「業務に支障がない」状態であれば、胸を張って「良好」と記載して問題ありません。
花粉症や腰痛、過去の病気はどうする?
ケース別:どう書く?
判断に迷いが生じやすいのが、「完全に健康とは言えないものの、業務遂行は可能」というケースです。
例えば、以下のような場合は、基本的に「良好」と書いて差し支えありません。
- 花粉症やアレルギー: 業務中にくしゃみが出る程度であれば、業務遂行に重大な支障とはみなされません。
- 軽い腰痛や頭痛: 市販薬や湿布で対処でき、仕事を休むほどでなければ記載不要です。
- 過去の病歴(既往歴): すでに完治しており、再発の恐れや通院の必要がなければ、書く必要はありません。
「空欄」のまま提出するのはNG!
これだけは注意!
「空欄」のまま提出するのはNG!
「書くことがないから」「なんとなく書きにくいから」といって、空欄のまま提出することだけは避けてください。
採用担当者は、空欄を見ると「書き忘れているのかな?(注意不足)」「何か隠したいことがあるのかな?(不誠実)」と不安に感じてしまいます。特筆すべきことがなければ、堂々と「良好」と書きましょう。
2.【ケース別】そのまま使える!健康状態欄の書き方・例文集

では、通院が必要な場合や、配慮してほしいことがある場合はどう書けばよいのでしょうか。
ポイントは、「業務に支障はない」という点を強調しつつ、必要な配慮を正直かつ簡潔に伝えることです。
そのまま使える例文をまとめましたので、状況に合わせて調整してください。
| 想定される状況 | 書き方のポイント | 記入例文 |
|---|---|---|
| 特に持病がない | シンプルに記載します。 | 良好 |
| 定期的な通院が必要 | 「業務には影響しない」ことと、必要な配慮(頻度)をセットで書きます。 | 良好(業務に支障はありませんが、持病の定期検診のため月1回の通院休暇を希望します) |
| 業務の一部に制限あり | 「できないこと」だけでなく、「できること」を明確にします。 | 腰痛のため重量物の運搬は困難ですが、デスクワーク等の業務には支障ありません。 |
| 完治した既往歴 | ブランク(空白期間)の説明が必要な場合のみ、完治をアピールします。 | 良好(前職在籍時に療養しておりましたが、現在は完治しており業務に支障はありません) |
| 一時的な怪我(骨折等) | いつ治るかの「見込み」を書き、一時的であることを伝えます。 | 良好(骨折により松葉杖を使用しておりますが、〇月には完治予定です) |
このように、「良好」という言葉の後にカッコ書きで補足する形(「良好+但し書き」)が、最もスマートで誠実な書き方です。
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履歴書全体の書き方を確認したい方は、こちらの記事で基本ルールから採用担当者に響くアピール術まで網羅的に解説しています。
3.精神疾患(うつ病・適応障害など)の場合はどうする?

メンタルヘルスの不調で休職していたり、治療中だったりする場合、履歴書にどう書くべきかは非常に悩ましい問題です。
病名を具体的に書く義務はありません
法的な観点から言えば、プライバシーに関わる具体的な病名まで詳細に申告する義務はありません。
もし、現在は症状が落ち着いていて働くことができるなら、以下のように表現を工夫することも一つの方法です。
- 「体調不良のため退職しましたが、現在は回復しております」
- 「医師の許可が出ており、業務に支障はありません」
ただし、服薬の影響で眠気が出る可能性がある場合や、残業の制限が必要な場合は、入社後のトラブルを防ぐためにも、面接などの場で伝えておくことが望ましいでしょう。
「オープン就労」と「クローズド就労」
障害者手帳をお持ちの場合は、障害を開示して配慮を受けながら働く「オープン就労」と、開示せずに一般枠で働く「クローズド就労」という選択肢があります。
クローズド就労(隠して就労)を選ぶ場合、一般の社員と同じ成果を求められることになるため、体調と相談しながら、慎重に判断することが大切です。
無理をして体調を崩し、早期離職になってしまっては元も子もありません。
4.【重要】あえて「書かない」選択肢!厚労省の新様式とは

近年、「健康状態欄がない履歴書」が増加しています。
「健康状態に不安があるけれど、業務には支障がない。でも、書くと書類選考で落とされるかもしれない……」
そんな不安を持つ方にとって、これは非常に有効な選択肢となります。
なぜ履歴書から「健康状態欄」が消えている?
2020年7月、それまで履歴書の標準とされていたJIS規格(日本産業規格)の様式例から、履歴書の様式が削除されました。
これを受けて厚生労働省が新しく作成した「履歴書様式例」では、健康状態欄が設けられていません。
これは、公正な採用選考の観点から、「業務に関係のないプライバシー情報の収集を防ごう」という流れがあるためです。
戦略的に「フォーマットを選ぶ」という考え方
健康状態の記述に強い懸念がある場合、厚生労働省推奨の「新様式」の履歴書を使用するのも一つの有効な戦略です。
これは何かを隠蔽するわけではなく、公的に認められた様式を使用するだけですので、マナー違反にはあたりません。
ただし、企業側から指定のフォーマットがある場合は、そちらに従う必要がありますのでご注意ください。
5.採用担当者の本音と「健康状態」を確認する3つの理由

最後に、なぜ企業はわざわざ健康状態を聞いてくるのか、その背景を知っておきましょう。
相手の意図がわかれば、過度に恐れる必要はなくなります。
1. 早期離職を防ぎたい
企業が最も避けたいのは、「入社してすぐに体調を崩して辞めてしまう」ことです。採用には多くのコストがかかっているため、長く働いてくれる人を求めています。
そのため、「現在は業務に支障がない」と伝えることが安心材料になります。
2. 安全配慮義務を守るため
企業には、従業員の健康と安全を守る法律上の義務(安全配慮義務)があります。
持病があることを事前に知っておけば、「通院の日は業務を調整する」「負担の少ない部署に配置する」といった配慮が可能になります。
つまり、健康状態を伝えることは、従業員自身が無理なく働くための環境づくりにもつながるのです。
3. 虚偽の申告をするとどうなる?(内定取り消しのリスク)
「バレなければいいや」と嘘をついて入社した場合、後で問題になることはあるのでしょうか。
健康診断の結果ですべての既往歴が判明するわけではありませんが、もし業務に重大な支障が出るような病気を隠して入社し、その結果仕事ができなくなった場合、虚偽申告(重大な経歴詐称に準ずる行為)として解雇や内定取り消しの対象になるリスクがあります。
自分を守るためにも、業務に影響がある事柄については、正直に伝えておくのが安全です。
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転職面接で聞かれる質問の意図と適切な回答方法を知りたい方は、こちらの記事で50の質問例と回答例文を確認できます。
6.健康状態欄は「自分を守る」ためのもの
履歴書の健康状態欄について解説してきました。
- 基本は「良好」でOK。
- 配慮が必要な場合は「良好(ただし~)」の形式で、業務ができることを前提に書く。
- 不安な場合は、健康状態欄のない「厚労省推奨様式」を使うのも賢い戦略。
就職活動において「選考に受かること」はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは「求職者自身が入社後に無理なく、健康に働き続けられること」です。
健康状態欄を、企業に自分を審査される場所としてではなく、「自分が長く活躍するために、必要な配慮を企業とすり合わせるためのツール」として活用しましょう。そうすれば、何を記載すべきかの判断基準が明確になります。