エントリーシートや面接で必ず問われる「志望動機」。
いざ書こうとしても、「どうしても思いつかない」「立派な動機なんてない…」と手が止まってしまうことは、決して珍しいことではありません。
むしろ、そのように悩むのは、キャリアに真剣に向き合おうとしている証拠です。
この記事では、志望動機が思いつかない「本当の理由」を解き明かし、無理に「作る」のではなく、自分の中から「発見する」ための具体的な3ステップを解説します。
- なぜ志望動機が思いつかないのか、その4つの主な原因
- ゼロから「自分だけの軸」を発見するための具体的な3ステップ(自己分析・企業研究)
- そのまま使える、伝わる志望動機の「型」(例文あり)とNG例
1.「志望動機がない」は当たり前? まずは不安を受け止めよう

まず大前提として、「志望動機がすぐに出てこない」ことは珍しいことではありません。そのため、劣っているとか、熱意がないと責める必要はないのです。
特に転職活動において、「現職の不満を解消したい」という動機が先行するのは自然なことです。
また、新卒の就職活動であれば、働いた経験がない状態です。
近年の調査(※)でも、企業選択の軸として『安定性』や『ワークライフバランス』を重視する傾向が強まっています。特定分野への『情熱』を最優先に持つ人の方が少ないでしょう。
大切なのは、「志望動機がない」という現状をスタートラインとして認めることです。
そして、そこから「自分を知り」「相手(企業)を知る」プロセスを一歩ずつ進めていきましょう。
そのプロセスこそが、入社後のミスマッチを防ぐ有効な方法となります。
※参考|マイナビキャリアリサーチLab:2026年卒大学生就職意識調査
2.なぜ志望動機が思いつかないのか? 4つの「ない」を自己診断

志望動機が書けない原因は、大きく分けて4つのパターンに分類できます。どれに当てはまるか、まずは自己診断してみましょう。
4つの「ない」を自己診断
1. やりたいこと(Will)が、ない(わからない)
「特に情熱を傾けられる仕事がない」「自分が将来どうなりたいかビジョンが持てない」という状態です。
これは、自己分析が不足しているか、あるいは過去の経験から自分の「好き」や「得意」を言語化できていない可能性があります。
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「そもそもやりたい仕事が見つからない」という悩みは、志望動機以前の根本的な課題です。以下の記事では、その原因を解明し、簡単な自己分析から適職を見つけるための5つのステップを解説しています。
2. できること(Can)が、ない(と思っている)
「自分には特別なスキルや実績がない」「応募先で通用するとは思えない」と、自信を失っている状態です。
これまでの経験を過小評価しているか、経験を「スキル」として整理できていない(キャリアの棚卸し不足)ことが原因です。
3. 企業の魅力(Must)が、ない(見つからない)
「どの会社も同じに見える」「給与や待遇以外に惹かれるポイントがない」という状態です。
これは、表面的な情報だけで判断してしまい、その企業が持つ独自の価値や、そこで働くことの具体的なイメージ(社風、事業の社会的意義など)を深掘りできていない「企業研究不足」が原因です。
4. 転職理由が「不満」だけで、ない
「残業が多い」「人間関係が悪い」といった現職への不満が転職の主たる理由である場合、それは「逃げたい理由」であって、次の会社を「選ぶ理由」にはなりません。
この不満を「次の職場では何を(Must)実現したいか」というポジティブな軸に転換する必要があります。
3.ゼロから「自分だけの軸」を見つけるための3ステップ

志望動機とは、この「Will(やりたい)」「Can(できる)」「Must(企業の魅力・求めるもの)」の3つが重なり合う「接点」を見つける作業です。

ここからは、その接点を発見するための具体的な3ステップをご紹介します。
ステップ1:【自己分析】過去の経験から「Will (やりたい)」と「Can (できる)」を発掘する
まずは自分自身の棚卸しです。
「Will(やりたいこと・価値観)」の見つけ方
過去の経験(仕事、アルバイト、学生時代の活動など)を振り返り、「楽しかったこと」「夢中になったこと」「やりがいを感じた瞬間」を書き出します。
なぜそう感じたのかを深掘りすると、「人の役に立ちたい」「コツコツと何かを完成させるのが好き」「新しい知識を学ぶことにワクワクする」といった、ご自身の価値観や興味の方向性(Will)が見えてきます。
「Can(できること・強み)」の見つけ方
過去に「うまくいったこと」「人から褒められたこと」「困難を乗り越えた経験」を書き出します。
その時、具体的にどのような行動を取り、どのような結果(スキル)が身についたのかを整理します。「主体的に行動した」「周囲を巻き込んだ」「効率化を工夫した」なども立派な「Can」です。
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ここで発掘した「Can(できること)」は、志望動機だけでなく「自己PR」の核にもなります。採用担当者の心をつかむ自己PRへ昇華させるための書き方テクニックを、以下の記事で詳しく紹介しています。
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ここで洗い出した過去の経験やスキルは、転職活動の必須書類である「職務経歴書」の素材そのものです。整理した情報を無駄にしないよう、以下の記事を参考に、この段階でテンプレートを使って下書きを作成しておくことをおすすめします。
ステップ2:【企業研究】その企業だけの「Must (魅力)」を見つける
次に、応募先企業のことを深く知るステップです。次の情報をチェックしておきましょう。
- 企業の採用ページや求人票
- IR情報(上場企業の場合)
- 業界ニュース
- 社員のインタビュー記事(可能であれば)
注目すべきは、以下の3点です。これらが、企業の「Must」にあたります。
企業の「Must(魅力)」
- その企業が社会に対してどのような価値を提供しようとしているか(理念やミッション)
- 他社と比べて何が優れているのか(独自の技術やサービス)
- どのような人材を求めているか(求める人物像)
ステップ3:【接点発見】Will・Can・Mustが重なる「ここだ!」という点を見つける
最後のステップが最も重要です。ステップ1と2で見つけた要素を照らし合わせます。
- ステップ1の「Will(やりたいこと)」は、ステップ2の「Must(企業の理念や事業内容)」とどこかで共鳴しませんか?
- ステップ1の「Can(できること)」は、ステップ2の「Must(企業が求める人物像や課題)」の解決にどう役立てられそうでしょうか?
例えば、「(Will)人の役に立つ実感が得たい」と「(Can)コツコツと正確に作業するのが得意」という方が、「(Must)顧客の細かなニーズに応えるサポート体制」を強みとする企業を見つけたとします。
この時、「貴社の『顧客第一』の姿勢に共感します。私の『正確な事務処理能力(Can)』を活かして、その強固なサポート体制の一翼を担い、顧客満足度の向上に貢献したい(Willの実現)」
という、一貫性のある「志望動機」が生まれるのです。
4.【例文あり】伝わる志望動機の「型」とNG例

接点が見つかったら、それを伝わる形に整えます。
基本の構成:PREP法(結論→理由→具体例→結論)
志望動機は、PREP法(プレップ法)という論理的な型で構成するのが基本です。

PREP法
- Point(結論):「貴社を志望する理由は〇〇です」と、まず結論から述べます。
- Reason(理由):「なぜなら、貴社の〇〇という点に強く惹かれたからです」と、企業研究(Must)に基づいた理由を述べます。
- Example(具体例):「私は前職で〇〇という経験(Can)があり、〇〇という価値観(Will)を大切にしています。この強みが貴社の〇〇という点で活かせると考えます」と、自己分析に基づいた具体的な接点(エピソード)を伝えます。
- Point(結論):「以上の理由から、貴社で〇〇として貢献したく、強く志望いたします」と、入社後の貢献意欲で締めくくります。
ありがちなNG例と改善ポイント
NG例1:どの企業にも言える内容
「貴社の安定性に惹かれました」「成長できる環境だと思いました」
→(改善)なぜ「その会社」なのか、ステップ2で見つけた具体的な事業内容や理念と結びつける必要があります。
NG例2:「学びたい」という受け身の姿勢
「貴社で多くのことを学ばせていただきたいです」
→(改善)企業は学校ではありません。「貢献できること(Can)」を先に示しましょう。その上で「さらに〇〇の分野で成長したい」と意欲を見せるのが正しい順序です。
NG例3:待遇や条件のみ
「給与が高いから」「残業が少ないから」
→(改善)重要な要素ですが、志望動機で伝えるべきではありません。ステップ3で見つけた「Will・Can・Mustの接点」を主軸に据えてください。
【補足】志望動機欄のない履歴書は使っても良い?
履歴書フォーマットによっては、志望動機欄が設けられていないものもあります。
結論として、企業側から指定がない限り、それを使用しても問題ありません。
ただし、面接では必ず聞かれる項目であるため、この記事で解説した「自分だけの軸」の準備は必須です。
5.どうしても志望動機が書けない企業、どうする?

上記のステップを踏んでも、どうしてもその企業と自分との接点(Will・Can・Mustの重なり)が見つからないこともあります。しかし、無理に志望動機をひねり出す必要はありません。
それは、シンプルに「ご縁がなかった」ということです。
自己分析と企業研究を深めた結果として「合わない」と判断できたなら、それは転職・就職活動の大きな前進です。
無理に入社しても、ミスマッチから早期離職につながる可能性が高いでしょう。
気持ちを切り替えて、次の企業のリサーチに進みましょう。
6.志望動機探しは「自分を知る」大切なプロセス
「志望動機がない」という悩みは、決してネガティブなものではありません。
それは、「自分は本当は何がしたいのか(Will)」「自分には何ができるのか(Can)」「自分はどんな環境で働きたいのか(Must)」という、自身のキャリアの「軸」を見つめ直す機会です。
焦らず、一つひとつのステップを踏んで自己分析と企業研究を進めれば、「ここだ!」と思える接点が見つかります。