新卒の就活で意外と迷うのが履歴書の学歴欄。
「どこから書く?」「浪人や留学はどうする?」といった疑問や、書き間違いで不利にならないかという不安は多いものです。
そこでこの記事では、学歴欄の正しい書き方を基本から特殊なケースまで網羅的に解説します。データに基づく人事の視点も紹介し、自信を持って履歴書を提出できるよう、不安を完全に解消します。
- 採用担当者が学歴欄で本当にチェックしているポイント
- 浪人・留学・中退など、ケース別の正しい書き方の見本
- 提出前にミスをなくすための最終チェックリストと便利なツール
1.なぜ学歴欄の記入は重要?採用担当者が厳しくチェックする3つの理由

「たかが学歴欄」と侮ってはいけません。採用担当者は、学歴欄からも応募者の様々な側面を見て取ろうとしています。
ここでは、なぜ学歴欄が採用選考において大切なのか、その背景にある3つの理由を解説します。
この理由を知ることで、ただの作業だった学歴欄の記入が、効果的な自己PRの一環なのだと理解できるはずです。
採用担当者が学歴欄で見る3つの理由
社会人としての
基礎的な注意力を見ている
経歴の真実性と
一貫性を確認している
専門性やポテンシャルを
探るヒントにしている
理由1:社会人としての基礎的な注意力を見ている
学歴欄は、定められたルールに沿って正確に情報を記載する、ごく基本的な作業です。
しかし、ここを間違うということは、「指示やルールを正確に理解し、実行する能力に疑問があるかもしれない」という印象を与えかねません。
例えば、学校名を略称で書いたり、和暦と西暦が混在していたりといった単純なミスは、「仕事における注意不足や雑さにつながるのでは」と判断される可能性があります。
採用担当者は、毎日多くの履歴書に目を通しているため、こうした細かな点によく気がつきます。
丁寧に正しく書くことは、基本的なビジネスマナーと誠実さを示す第一歩です。
理由2:経歴の真実性と一貫性を確認している
学歴は、その人がこれまでどのような環境で何を学んできたかを示す客観的な事実です。
採用担当者は、学歴欄と面接で話す内容に矛盾がないかを確認し、応募者の人となりや経歴の信頼性を判断しています。
例えば、空白期間がある場合、それが浪人や留学、あるいは休学によるものなのかを正直に記載しなければいけません。
正直に記載することで、その期間に何を経験し、何を学んだのかを前向きに説明する機会にもつながります。
正直かつ正確な情報提供は、信頼関係を築く上で不可欠な要素なのです。
理由3:専門性やポテンシャルを探るヒントにしている
近年、新卒採用市場は売り手市場が続いており、企業は一人ひとりの経験やスキルをより重視する傾向にあります。
学歴欄に記載された学部・学科、専攻、研究テーマなどは、応募者がどのような分野に専門性や興味を持っているのかを知るための重要な手がかりとなります。
特に、専門職や技術職の募集、あるいは社内での配属先を検討する際に、学歴欄の情報が活かされるケースは少なくありません。
学歴は単なる学校名ではなく、自身の学習歴やポテンシャルをアピールする材料にもなり得るのです。
2.履歴書の学歴欄、基本の書き方7つのルール【見本付き】

学歴欄の重要性を理解したところで、ここからは具体的な書き方の基本ルールを7つのポイントに分けて解説します。
どの履歴書にも共通する普遍的なルールなので、ここでしっかりとマスターしておきましょう。
一つひとつのルールは決して難しくありません。見本を参考にしながら、正確に記入する習慣をつけることがポイントです。
これらの基本を押さえるだけで、採用担当者に好印象を与え、無用な減点を避けることができます。
1. 1行目の中央に「学歴」と記載する
まず、学歴・職歴欄の1行目、中央に「学歴」と忘れずに記載します。この一行があることで、情報が整理され、見やすくなります。
職歴も同じ欄に書く場合は、学歴をすべて書き終えた後、一行空けてから中央に「職歴」と記載するのが一般的です。
【見本】

2. 学歴は「中学校卒業」から書くのが一般的
新卒の場合、学歴は「中学校の卒業年月」から書き始めるのが一般的です。小学校卒業から書く必要はありません。
高校、専門学校、短期大学、大学、大学院と、時系列に沿って「入学」と「卒業(または卒業見込み)」をそれぞれ一行ずつ使って書いていきましょう。
【見本】

3. 年号は「和暦」か「西暦」に統一する
履歴書全体で、年号の表記は和暦(令和、平成など)か西暦(2025年、2024年など)のどちらかに統一するのがルールです。
学歴欄で和暦を使ったなら、職歴欄や資格欄など、他の項目もすべて和暦で統一してください。
どちらを選んでも有利不利はありませんが、外資系企業やIT企業などでは西暦が好まれる傾向にあります。迷った場合は、提出する企業に合わせて選ぶと良いでしょう。
4. 学校名は省略せず、必ず「正式名称」で書く
学校名は、「〇〇高校」のような略称ではなく、必ず「〇〇県立〇〇高等学校」のように、都道府県名から含めた正式名称で記載します。
私立の場合は「私立」と、公立の場合は「〇〇区立」「〇〇県立」のように記載します。学部や学科、コース名、専攻名まで、省略せずに正確に書きましょう。
これは、正確な情報を伝えるという基本姿勢を示す上で非常に重要です。
【見本】
(誤) | 〇〇大学 経済学部 入学 |
(正) | 私立〇〇大学 経済学部 経済学科 入学 |
5. 在学中は「卒業見込み」と正しく記載する
大学や専門学校などに在学中の場合は、卒業予定年月の欄に「卒業」ではなく「卒業見込み」と記載します。すでに卒業している場合は「卒業」と書きます。
大学院に在学中であれば「修了見込み」と記載するのが一般的です。この表記を間違うと、経歴を誤解される可能性があるので注意しましょう。
【見本】
令和5年 | 4月 | 私立〇〇大学 経済学部 経済学科 入学 |
令和9年 | 3月 | 私立〇〇大学 経済学部 経済学科 卒業見込み |
6. 予備校や語学スクールは学歴に含めない
基本的に、予備校や塾、語学スクールなどは学歴には含まれません。これらは文部科学省などが認可した正規の学校教育機関ではないためです。
ただし、そこで身につけたスキルや語学力をアピールしたい場合は、自己PR欄や資格欄に「〇〇語学学校にてビジネス英会話を1年間学習」のように記載すると良いでしょう。
7. 最後に「以上」と右詰めで記載する
学歴をすべて書き終えたら、その次の行の右端に「以上」と記載します。これは、学歴の記述がここで終わりであることを明確に示すためのものです。
職歴がない場合も、学歴を書き終えた後に「職歴」と中央に記載し、次の行に「なし」と記入、さらにその次の行に「以上」と右詰めで書くのが丁寧な書き方です。
【見本】
令和9年 | 3月 | 私立〇〇大学 経済学部 経済学科 卒業見込み |
以上 |
履歴書は学歴欄以外にも、写真の撮り方や志望動機など欄も重要です。履歴書写真のおすすめ無料アプリや、新卒向けの履歴書の全体的な書き方のポイントについては、以下の記事内で詳しく解説しています。
3.【ケース別】これってどう書くの?浪人・留学・中退…迷いやすい学歴の書き方
就職活動生の中には、浪人や留学、あるいは休学や中退など、様々な経歴を持つ方がいるでしょう。こうした少し特殊な経歴をどう書けばいいのか、悩んでしまうことも多いかと思います。
しかし、心配する必要はありません。大切なのは、事実を隠さず、正直に、そして分かりやすく記載することです。
ここでは、そうした迷いやすいケース別の書き方を、具体的な見本とともに詳しく解説していきます。
浪人・留年した場合
浪人や留年をした場合、その事実を履歴書に直接書く必要はありません。
中学校卒業から大学入学までの期間が1年空いていれば、採用担当者は「浪人したのだな」と理解します。同様に、大学の在籍期間が5年以上になっていれば、留年したことが分かります。
大切なのは、面接で理由を聞かれた際に、その経験から何を学び、どう成長できたのかを前向きに語れるように準備しておくことです。
例えば、「目標達成のために、粘り強く努力する大切さを学びました」といった形で、ポジティブな学びに転換して伝えましょう。
【見本:一浪した場合】
平成31年 | 3月 | 〇〇県立〇〇高等学校 普通科 卒業 |
令和2年 | 4月 | 私立〇〇大学 法学部 法律学科 入学 |
休学した場合
病気や経済的な理由、あるいはボランティア活動などで大学を休学した場合も、その事実を正直に記載します。
学校名の次の行に「〇〇のため1年間休学」のように、理由を簡潔に書き加えましょう。
こちらも、面接で質問された際に、休学期間中の経験が自分にとってどのようなプラスになったのかを具体的に説明できるようにしておくといいです。
【見本】
令和5年 | 4月 | 私立〇〇大学 文学部 英文学科 入学 |
病気療養のため、令和6年4月より1年間休学(現在は完治し、学業に支障なし) | ||
令和10年 | 3月 | 私立〇〇大学 文学部 英文学科 卒業見込み |
中途退学した場合
大学などを中途退学した場合は、その事実を明確に記載します。
「卒業」ではなく「中途退学」と書きましょう。理由についても「経済的な理由により」や「目標変更のため」など、簡潔に添えるのが親切です。
ネガティブな印象を恐れて事実を隠すのは絶対にやめましょう。中退という決断を経て、次に何を学んだのか、どう行動したのかを誠実に伝えることが、信頼を得る鍵となります。
【見本】
令和4年 | 4月 | 私立〇〇大学 商学部 商学科 入学 |
令和5年 | 9月 | 私立〇〇大学 商学部 商学科 中途退学 |
(かねてより興味のあったIT分野への進路変更のため) |
留学した場合
留学経験は、語学力や国際感覚、主体性をアピールできる機会です。
1年以上の正規留学(単位取得を伴うものなど)であれば、学歴欄に記載しましょう。1年未満の短期留学や語学研修の場合は、学歴欄ではなく自己PR欄や語学力欄に書くのが一般的です。
【見本:1年間の交換留学】
令和5年 | 4月 | 私立〇〇大学 国際教養学部 入学 |
令和7年 | 9月 | 〇〇大学(アメリカ)へ1年間交換留学(令和8年8月まで) |
令和10年 | 3月 | 私立〇〇大学 国際教養学部 卒業見込み |
転校・編入した場合
高校や大学で転校(転入学)や編入をした場合も、時系列に沿って分かりやすく記載します。どの学校からどの学校へ移ったのかが明確に分かるように書きましょう。
【見本:大学編入】
令和4年 | 4月 | 私立〇〇短期大学 英語科 入学 |
令和6年 | 3月 | 私立〇〇短期大学 英語科 卒業 |
令和6年 | 4月 | 私立〇〇大学 文学部 英文学科 3年次編入学 |
令和8年 | 3月 | 私立〇〇大学 文学部 英文学科 卒業見込み |
4.データで読み解く「学歴」の今。企業は学校名より「学習歴」を見ている
「就職活動では、やはり有名大学でないと不利になるのでは…」といった、いわゆる「学歴フィルター」に関する不安を抱えている方も少なくないかもしれません。
しかし、近年の採用市場のデータを見ると、企業の視点が大きく変化していることが分かります。
ここでは、客観的なデータに基づき、現代の採用活動で「学歴」がどのように捉えられているのかを解説します。
この実態を知ることで、学歴欄をより戦略的に活用するヒントが見つかるはずです。
企業の視点は「何を学んだか」へシフト
リクルートワークス研究所の調査によると、2025年卒の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.75倍と高い水準にあり、学生優位の「売り手市場」が続いています。
こうした状況の中、企業は単に多くの学生を集めるだけでなく、自社に本当にマッチする人材を厳選したいと考えています。

出典:リクルートワークス研究所 第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)【大卒求人倍率1.75倍】引き続き高い採用意欲が続く見込み
その結果、採用のあり方は「一人ひとりの学生の経験やスキルを重視したものに変わりつつあります」と報告されています。
つまり、どの大学を卒業したかという「学校名」そのものよりも、大学で何を専門的に学び、どのような知識やスキルを身につけてきたかという「学習歴」への関心が高まっているのです。
学歴欄は、その学習歴をアピールするための最初のステップと言えるでしょう。
学歴欄は「専門性」を伝える第一印象
学歴欄に記載された学部・学科、専攻名を見て、採用担当者は「この学生は〇〇の分野に詳しいかもしれない」「自社のこの部門で活躍できるポテンシャルがあるかもしれない」といった仮説を立てます。
例えば、「情報理工学部」とあればITスキルを、「国際教養学部」とあれば語学力や異文化理解力を期待するでしょう。
エントリーシートや面接で詳しくアピールする前に、学歴欄があなたの専門性や興味の方向性を示す「第一印象」となっているのです。
そのため、学部・学科名は省略せず、正確に記載することが、自身の強みを正しく伝える上で非常に重要になります。
5.便利な卒業年度早見表と、提出前の最終チェックリスト
履歴書の作成は、正確性が求められる一方で、意外と手間がかかる作業です。特に、和暦と西暦の変換や、入学・卒業年度の計算は間違いやすいポイントの一つ。
ここでは、そうした手間を少しでも減らし、ミスなく完璧な履歴書を仕上げるためのサポートツールを用意しました。
卒業年度の早見表と、提出前に必ず確認してほしい最終チェックリストです。これらを活用して、自信を持って応募に臨みましょう。
入学・卒業年度 早見表
生年月日を基に、一般的な入学・卒業年度を一覧にしました。浪人や留年などをした場合は、ご自身の経歴に合わせて年数を調整してください。
入学・卒業年度 早見表
生年月日を基に、一般的な入学・卒業年度を一覧にしました。浪人や留年などをした場合は、ご自身の経歴に合わせて年数を調整してください。
- 中学校卒業 2019年 (H31) 3月
- 高等学校卒業 2022年 (R4) 3月
- 4年制大学卒業 2026年 (R8) 3月
- 中学校卒業 2018年 (H30) 3月
- 高等学校卒業 2021年 (R3) 3月
- 4年制大学卒業 2025年 (R7) 3月
- 中学校卒業 2017年 (H29) 3月
- 高等学校卒業 2020年 (R2) 3月
- 4年制大学卒業 2024年 (R6) 3月
- 中学校卒業 2016年 (H28) 3月
- 高等学校卒業 2019年 (H31) 3月
- 4年制大学卒業 2023年 (R5) 3月
履歴書をメール添付する際にもマナーがあります。メール添付のマナーやスマートフォンからの送付方法などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
提出前の最終チェックリスト
記入ミスは、それだけで「注意力が足りない」という印象を与えかねません。提出前に、必ず以下の項目を一つずつ指差し確認しましょう。
提出前の最終チェックリスト
記入ミスは、それだけで「注意力が足りない」という印象を与えかねません。提出前に、必ず以下の項目を一つずつ指差し確認しましょう。
- 1行目の中央に「学歴」と書いていますか?
- 年号は履歴書全体で「和暦」か「西暦」に統一されていますか?
- 中学校卒業から時系列で正しく並んでいますか?
- 学校名は「〇〇県立」「私立」から、学部・学科名まで正式名称で書いていますか?
- 「卒業」と「卒業見込み」を正しく使い分けていますか?
- 留学や休学など、特殊な経歴は分かりやすく補足説明できていますか?
- 誤字・脱字はありませんか?
- 学歴を書き終えた後、右詰めで「以上」と書いていますか?
6.履歴書の学歴に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、履歴書の学歴欄に関して、多くの就職活動生から寄せられる質問とその回答をまとめました。
基本的なルールだけではカバーしきれない細かな疑問や、多くの人が不安に感じるポイントについて解説します。ここで疑問点をすべて解消し、スッキリした気持ちで履歴書作成を終えましょう。
万が一、ここにない疑問があれば、大学のキャリアセンターなどに相談するのも有効な手段です。
Q. 予備校や職業訓練校は学歴に書けますか?
A. 原則として、学歴には含めません。
履歴書の学歴欄に記載するのは、学校教育法に定められた中学校、高等学校、大学などの教育機関です。予備校や職業訓練校、語学スクールなどはこれに含まれないため、学歴欄への記載は避けます。
ただし、そこで得た知識やスキルは立派な自己PRの材料になります。自己PR欄や資格欄、スキル欄などを活用して、「〇〇職業訓練校にてWebデザインを6ヶ月間習得」のように具体的にアピールしましょう。
Q. 学部や学科名は省略してもいいですか?
A. いいえ、絶対に省略してはいけません。
必ず正式名称で、学部、学科、専攻、コース名まで正確に記載してください。
前述の通り、採用担当者は学部・学科名から、応募者の専門性や学んできた内容を推測します。ここを省略すると、自身のアピールポイントを一つ失うことになりかねません。大学の学生証や卒業証明書などで、正確な名称を確認しておきましょう。
Q. 書き間違えたら、修正テープを使ってもいいですか?
A. 原則として、修正テープや修正液の使用は避けるべきです。
履歴書は公的な書類であり、修正された箇所があると、丁寧さに欠ける印象や、場合によっては文書改ざんを疑われるリスクもゼロではありません。
もし書き間違えてしまったら、手間を惜しまず、新しい用紙に一から書き直すのが最も確実で、誠実な姿勢が伝わります。下書きをしてから清書する、時間に余裕を持って作成するなどの工夫で、ミスを防ぎましょう。
Q. 最終学歴はどこからになりますか?
A. 最終学歴とは、最も高い水準の教育機関の経歴を指します。
大学を卒業(または卒業見込み)であれば、その大学が最終学歴です。大学院を修了(または修了見込み)であれば、その大学院が最終学歴となります。
高校卒業後に就職した場合は、高校が最終学歴です。履歴書には最終学歴だけを書くのではなく、中学校卒業から順に記載するのが一般的です。
7.学歴欄を「信頼される自己PR」に変える総仕上げ
履歴書の学歴欄は、単なる経歴ではなく、自身の誠実さや注意深さ、そして専門性への関心を示す重要な自己PRの場です。
基本的なルールを確実に守り、浪人や留学といった個別の経歴も、正直かつ前向きに記載することが信頼につながります。
この記事で紹介したポイントとチェックリストを活用し、自信を持って履歴書を提出してください。万全の準備が、納得のいく就職活動への第一歩となります。