面接や書類選考で必ず問われる「志望動機」。準備した内容が「NG例」に当てはまっていないか、不安に感じることもあるかもしれません。
「企業理念に共感した」「成長したい」といった言葉は、一般的にNG例として紹介されがちです。しかし、本当にその「言葉」が問題なのでしょうか。
この記事では、採用担当者がなぜNGと判断するのか、その背景にある「論理の欠陥」に焦点を当てます。
そして、採用担当者が本当に知りたい意図を理解し、自身の経験に基づいた「伝わる」志望動機を構築する方法を解説します。
- 採用担当者がNGと判断する志望動機の4つの類型
- 採用担当者が志望動機を聞く3つの本音と評価ポイント
- NG例文を評価されるOK例文に書き換える4ステップの構成術
1.志望動機の「NG」とは言葉ではなく「論理の欠陥」

志望動機を考える際、「この言葉は使ってはいけない」というNGワードリストを検索した経験はないでしょうか。
たとえば、「社会に貢献したい」という言葉は、それ自体が悪いわけではありません。
しかし、その言葉がNGと判断される理由は「なぜ、その会社で、社会貢献がしたいのか」という具体的な経験や企業研究に裏打ちされた論理が欠けているためです 。
志望動機を考えるというのは「過去の経験(Can)」と「将来の希望(Will)」、そして「企業からの要求(Must)」を結びつける作業です。
NGと判断されるのは、これらの結びつきが弱く、採用担当者が「それなら、他の会社でも良いのでは?」と感じてしまう場合です。
大切なのは、言葉狩りをすることではありません。自身の経験と企業を結びつける「論理」を構築することです。
2.【自己診断】採用担当者がNGと判断する志望動機の4類型
まずは、採用担当者から「志望度が低い」「企業研究が足りない」と判断されやすい、代表的な4つの論理類型を見ていきましょう。
類型1:抽象的・受動的(「理念に共感」「社会貢献したい」)
NG例
「御社の企業理念に共感しました」「社会に貢献したいと思いました」
これらは一見すると立派な動機ですが、それだけではNGと判断されがちです。なぜなら、どの企業に対しても言えてしまう、具体性に欠ける言葉だからです。
採用担当者が知りたいのは、「理念の“どの部分”に、自身の“どの経験”が共鳴したのか」という具体的な接点です。
そこを十分に説明できないと、「企業研究が不十分だ」と受け取られてしまう可能性があります。
類型2:利己的・学習意欲のみ(「成長したい」「学ばせてほしい」)
NG例
「御社で成長したいです」「たくさんのことを学ばせてほしいです」
向上心は大切ですが、企業は学校ではありません 。企業がコストをかけて人材を採用するのは、その人に「価値を提供し、貢献してもらう」ためです。
「学びたい」「成長したい」という言葉が、貢献(アウトプット)ではなく、自身の学習(インプット)で終わっていると、「受け身な姿勢だ」と判断されることがあります 。
類型3:企業研究の不足(「地元で働きたい」「貴社の魅力」)
NG例
「地元で働きたいからです」「御社の安定性に魅力を感じました」
なぜ、他の地元企業ではなく、その企業でなければならないのか。その企業が持つ独自の強みや事業内容と、自身がどう関わりたいのかを繋げる論理が必要です。
働く場所や条件は、企業選びの重要な軸の一つです。しかし、それだけが理由だと、「地元で働けるなら、他の会社でも良いのでは?」という疑問を持たれてしまいます。
類型4:一貫性の欠如と早期離職リスク(「将来は独立したい」)
NG例
「将来は独立するための経験を積みたい」「自己PRと志望動機の内容が矛盾している」
採用担当者は、採用した人に「長く働いてほしい」と願っています。早期離職は、企業にとって大きな損失となるためです。
特に次のような場合、長期的な定着性に疑問を持たれる可能性があります。
- 「独立したい」という目標が、その会社で働く目的とどう繋がるのかを明確に説明できない場合
- 自己PRで語った強みと、志望動機に一貫性がない場合
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3.採用担当者はなぜ志望動機を聞くのか? 人事担当者の3つの本音

NG例を避けるには、まず「採用担当者が何を知りたがっているのか」という意図を理解することが近道です。
採用担当者が志望動機を聞く理由とは?
人事担当者の3つの本音
1. 志望度の高さ(熱意)
「本当にウチに来たいのか?」という純粋な熱意の量を確認しています。
2. 企業文化へのマッチング
候補者の価値観や働き方が、会社の社風やチームに合うかを見ています。
3. 長期的な貢献と定着
早期離職のリスクを排除し、長く活躍・貢献してくれる人材か判断します。
志望動機は人事労務管理の実務においては、志望動機は以下の3点を見極めるために聞かれると考えられています。
1. 志望度の高さ(熱意)の確認
採用担当者は、「本当にうちの会社に来たいと思ってくれているか」という熱意を確かめたいと考えています。
ポケット就活の人事担当者へのアンケート調査では、「採用したい」と感じる志望動機として、「やる気があり、入社意欲が高い」「熱い想いがある」といった点が挙げられています。
つまり、「どの会社でもよかったのではないか」という疑念を払拭できるだけの、具体的な理由が求められます 。
参考|ポケット就活 【人事担当者アンケート54名に聞いた】「こんな志望動機は採用したい」について
2. 企業文化(社風)へのマッチング確認
どれほど優秀なスキルを持っていても、企業の文化や価値観と合わなければ、早期離職に繋がってしまう可能性があります。
採用担当者は、志望動機の内容から、「自社の文化や方針にマッチするか」を見極めようとしています。
アンケートでも、「企業研究をしっかり行なっている」「同業他社との比較までできている」応募者は、会社を深く理解していると評価されています。
3. 長期的な貢献と定着可能性(早期離職リスクの排除)
企業は、「入社後に活躍し、長く働いてくれる人材か」を重視しています 。
同じアンケート調査で、「将来のビジョンを持っている」「入社してからのイメージができている」ことが評価ポイントとして挙げられています。
その理由は、ビジョンが明確であればミスマッチが少ないと判断されるためです。
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志望動機は書類選考だけでなく、面接でも必ず深掘りされる項目です。こちらの記事で採用担当者がどのような意図で質問を投げかけるのか、頻出質問50選とその回答例を事前にチェックし、面接本番に備えましょう。
4.NGをOKに変える「評価される」志望動機の4ステップ構成術

採用担当者が知りたい3つの本音(熱意・マッチング・定着性)に応えるため、志望動機を以下の4つのステップで組み立てていきましょう。
志望動機構成の4ステップ
STEP 1:
結論(その企業で実現したいこと)
STEP 2:
理由と具体例(過去の経験との接続)
STEP 3:
「なぜ、その企業なのか」(他社との差別化)
STEP 4:
入社後の貢献意欲(活躍イメージ)
これは、キャリアコンサルティングにおける自己分析や、相手に分かりやすく伝える論理構成(PREP法など)にも通じる考え方です 。

PREP法とは?
PREP法とは、結論・理由・具体例・結論の流れで相手に話を伝える方法です。
- Point(結論):「貴社を志望する理由は〇〇です」と、まず結論から述べます。
- Reason(理由):「なぜなら、貴社の〇〇という点に強く惹かれたからです」と、企業研究(Must)に基づいた理由を述べます。
- Example(具体例):「私は前職で〇〇という経験(Can)があり、〇〇という価値観(Will)を大切にしています。この強みが貴社の〇〇という点で活かせると考えます」と、自己分析に基づいた具体的な接点(エピソード)を伝えます。
- Point(結論):「以上の理由から、貴社で〇〇として貢献したく、強く志望いたします」と、入社後の貢献意欲で締めくくります。
STEP1:結論(その企業で実現したいこと)
まず、「私は御社で〇〇を実現したい(貢献したい)」という結論から簡潔に伝えます。
採用担当者に最も伝えたい「入社後のビジョン」を最初に示すことで、話の全体像が明確になります。
STEP2:理由と具体例(過去の経験との接続)
次に、STEP1の結論に至った「理由」を、過去の具体的な経験(学生時代の活動、前職での実績など)と結びつけて説明します。
ここが、志望動機に説得力を持たせるための土台となります。
STEP3:「なぜ、その企業なのか」(他社との差別化)
STEP2で語った経験や思いが、「なぜ他社ではなく、その企業でなければならないのか」を説明します。
企業の独自の強み、事業内容、社風などを挙げ、STEP1の結論と繋げる、重要な部分です。
STEP4:入社後の貢献意欲(活躍イメージ)
最後に、自身のスキルや経験を活かし、「入社後、具体的にどのように貢献できるか」を伝えて締めくくります。これにより、採用担当者は「活躍イメージ」を具体的に持つことができます。
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5.NG例文をOK例文に書き換えるリフレーズ(書き換え)事例

NGとされがちな言葉も、先ほどの4ステップ構成術を使い、論理を補強することで「OK」な志望動機に変えることができます。
次の2つの例を参考に。NGな表現を言い換え、具体的なエピソードに結びつけるようにしましょう。
NG例:「成長したい」→ OK例:「貢献」と「成長」を繋げる
NG例文
「私は成長意欲が高く、御社の研修制度に魅力を感じました。御社で多くのことを学び、成長したいと考えています。」
(→ なぜNGか:企業が求める「貢献(アウトプット)」への言及がなく、受け身に聞こえるため)
OK例文(リフレーズ)
「(結論)私は、御社の〇〇という事業において、自身の△△のスキルを活かして貢献したいと考えています。
(理由)前職で△△の業務を行う中で、より高度な〇〇の領域に挑戦したいと強く感じました。
(なぜ御社か)中でも御社は、業界に先駆けて〇〇の技術開発に取り組んでおられます。
(貢献)まずは△△のスキルで貢献しつつ、御社の環境で〇〇の知見を成長させることで、将来的には〇〇事業の拡大に貢献したいです。」
(→ OKな理由:「成長」が目的ではなく、「貢献」するための手段として位置付けられているため )
NG例:「理念に共感」→ OK例:「具体的な経験」と理念を繋げる
NG例文
「『人々の生活を豊かにする』という御社の企業理念に深く共感しました。私も御社の一員として、社会に貢献したいです。」
(→ なぜNGか:どの理念に、なぜ共感したのかという「個人の経験」との繋がりが見えないため)
OK例文(リフレーズ)
「(結論)私は、御社の『人々の生活を豊かにする』という理念に基づいた〇〇のサービス開発に携わりたいです。
(理由)私は学生時代、生協の組織部で、組合員の声を反映した企画運営に携わりました。その際、自分たちの企画が『人の役に立つ』ことの素晴らしさを実感しました。
(なぜ御社か)御社の〇〇というサービスは、まさに利用者の声に寄り添って改善を続けており、私の経験が活かせると確信しています。
(貢献)入社後は、まず〇〇の業務を通じて、人々の生活を豊かにするという目標に貢献したいです。」
(→ OKな理由:「理念」と「個人の具体的な経験(生協の活動)」が論理的に結びついているため)
6.なぜ企業は志望動機を重視するのか?

最後に、企業が志望動機を重視する背景について解説します。
厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」
採用選考は、応募者の「適性・能力」に基づいて行われるべき、というのが国の基本方針です。
厚生労働省のガイドラインでは、就職差別につながるおそれがあるため、採用選考時に配慮すべき事項(例:出生地、家族、宗教、支持政党など)を定めています 。
これらは、本人の適性・能力とは関係のない事柄です。
「適性・能力」を判断する公正な手段としての志望動機
上記のように、企業が応募者の価値観や人柄を知るためにプライベートな質問をすることは、厳しく制限されています。
その結果、企業が応募者の「価値観(=社風とのマッチ度)」や「適性・能力」を公正に判断する方法が、「本人の経験に基づき、企業研究と将来のビジョンを問う『志望動機』」なのです。
採用担当者が志望動機をしつこく深掘りするのは、応募者を困らせるためではありません。
公正な選考のルールの中で、応募者の適性を見極めようとしているため、という側面があります。
7.NGを恐れず、企業研究と貢献意欲を論理的に伝えよう
志望動機に「絶対に使ってはいけない言葉」はありません。NGと判断されるのは、その言葉の背景にある「論理の欠陥」です。
採用担当者は、志望動機を通じて「熱意」「マッチング」「定着性」の3点を確認しようとしています。
不安を感じる場合は、ぜひ「4ステップの構成術」を試してみてください。
- 結論(〇〇したい)
- 理由(〇〇の経験から)
- 企業(御社の〇〇だから)
- 貢献(〇〇で役に立ちたい)
この論理的な流れを意識し、自身の言葉で伝えることが、採用担当者に伝わりやすい志望動機への第一歩となります。