この記事では、「介護職はきつい」というイメージと、給与や離職率などの客観的なデータとの間にあるギャップを解説します。
その上で、きつさの原因が仕事自体か職場環境かを見極める方法と、後悔しないための具体的な対処法を提案します。
介護職は、心身への負担や人間関係など、大変な側面があるのは事実です。
しかし、その「きつさ」を理由に介護職を諦めてしまったり、深く考えずに辞めてしまったりすると、後悔してしまうかもしれません。
この記事では、2025年最新の公的なデータを基に、世間のイメージと現実とのギャップを明らかにします。
その上で、今感じている「きつさ」の正体を見極め、後悔しないための具体的な次の一歩を一緒に考えていきます。
- 多くの人が「介護職はきつい」と感じる5つの具体的な理由
- 「きつさ」の原因が今の職場にあるのか、介護の仕事そのものにあるのかを見極める方法
- 後悔しないために、自分に合った働きやすい職場を見つけるための具体的なチェックポイント
1.多くの人が感じる「介護職がきつい」5つの理由
まず、多くの方が「介護職はきつい」と感じる理由は何なのか。
その背景には、主に5つの理由が挙げられます。
「介護職がきつい」5つの理由
心身への負担(身体的・精神的)
給料が見合わないという不満
職場の人間関係
人手不足による業務過多
キャリアパスへの不安
一つずつ詳しくみていきます。
理由1:心身への負担(身体的・精神的)
介護の仕事は、移乗介助や入浴介助などで身体的な負担が伴います。
また、利用者の方の心に寄り添い、時には認知症の方への対応も求められるため、精神的なエネルギーも必要です。
人の「生」に深く関わる仕事だからこそ、心身ともに負担を感じやすい側面があります。
理由2:給料が見合わないという不満
「仕事の大変さに給料が見合わない」という声は、今でも多く聞かれます。
国の処遇改善策によって給与水準は年々上昇傾向にありますが、全産業の平均と比較すると、まだ低い水準にあるのが現状です。
この点が、仕事のモチベーションを維持する上での課題となり得ます。
理由3:職場の人間関係
介護現場は、様々な年代や背景を持つ職員がチームで働く場所です。利用者へのケアの方針を巡って意見が対立したり、相性の良くない同僚がいたりすると、人間関係がストレスの原因になることがあります。
閉鎖的な環境になりやすい職場では、特に問題が深刻化しやすい傾向があります。
理由4:人手不足による業務過多
介護業界は、慢性的な人手不足という課題を抱えています。
職員一人あたりの業務量が多くなり、残業が増えたり、休憩が十分に取れなかったりする職場も少なくありません。
忙しさから丁寧なケアが実践できず、ジレンマを感じる方もいます。
理由5:キャリアパスへの不安
「このまま今の仕事を続けて、将来どうなるのだろう?」というキャリアへの不安を感じる方もいます。
介護福祉士などの資格を取得しても、その先のキャリアプランが描きにくい、役職に就けるポストが少ないといった職場環境が、将来への不安につながることがあります。
2.【2025年最新データ】「介護職はきつい」というイメージと現実のギャップ

ここまで介護職は「きつい」と世間から見なされている理由を見てきましたが、一方で客観的なデータに目を向けると、少し違った景色が見えてきます。
介護職の離職率や給与について紹介します。
事実①:介護職の離職率は全産業平均より低い
「介護職は離職率が高い」というイメージがありますが、実はそうではありません。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度 介護労働実態調査」によると、介護職員(訪問介護員、介護職員)の離職率は12.4%と低く、令和5年度の13.5%よりもさらに改善が進んでいます。
厚生労働省が発表している全産業の平均離職率は14.2%(厚生労働省 令和6年雇用動向調査結果)であることから、一般的な他の職種と比較したとき、介護職の離職率は平均よりも低いということが分かります。
このデータから、イメージと現実には乖離があり、実際には一度介護職に就いた人が長く働いているという現実が明らかになりました。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 令和6年度 介護労働実態調査結果

事実②:国の処遇改善で給料は毎年上がっている
給料が低いというイメージも根強いですが、国が主導する「介護職員処遇改善加算」などの施策により、給与水準は着実に上昇しています。
介護職員処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善を目的として、事業所が一定の要件を満たした場合には、介護報酬に加算される制度のことです。
2024年(令和6年)6月からは、従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが「介護職員等処遇改善加算」として一本化され、事務負担の軽減と柔軟な運用が可能になりました。
もちろん、職場によって差はありますが、業界全体としては働く人の待遇を良くしようという大きな流れがあることは、知っておくべき重要な事実です。
データから見える本当の課題とは?
これらのデータから言えるのは、「介護職=離職率が高く、待遇が悪い」という画一的なイメージは、必ずしも現状を正確に反映していないということです。
実際には全業種と比べるとむしろ離職率は低く、また賃金においても業界として加算をしようという前向きな方向性に向かっている状態なのです。
もちろん、課題がなくなったわけではありません。
問題は「介護業界全体」というより、「働きやすい職場と、そうでない職場が混在している」という構造にあるのかもしれません。
3.「介護職」の問題?「職場」の問題?限界を感じた時の見極め方と対処法

今、介護職を「きつい」と感じているなら、その原因を冷静に分析してみることが、次の一歩を踏み出すために非常に重要です。
ステップ1:「きつさ」の原因を客観的に分析するチェックリスト
まず、以下の質問に答えて、悩みの原因を切り分けます。
気持ちの整理をするための質問
- 身体的な負担は、今の職場の介助方法や人員配置に問題があるから?
- 給料の不満は、業界水準と比べて明らかに低いから?
- 人間関係の悩みは、特定の人物や今の職場の風土が原因?
- 仕事のやりがいは感じているか?(利用者からの「ありがとう」を嬉しく思えるか)
- もし、今の職場の給料や人間関係、労働時間が改善されたら、介護の仕事を続けたいと思うか?
最後の質問に「はい」と答えたのなら、その悩みは「介護職」そのものではなく、「今の職場環境」に原因がある可能性が高いと言えます。
「介護職」だからつらいのではなく、「今の職場環境」ならではの辛さを抱えているのなら、次は、今の職場環境を自分で変えるのか、はたまた会社を変える(転職する)のか、という方向性の判断が必要になります。
ステップ2:「今の職場」に原因がある場合の改善アクション
原因が職場にあると感じたら、すぐに転職を考える前に、まずは今の職場で改善できることがないか試してみます。
信頼できる上司や同僚に相談する、労働組合に相談窓口があれば活用するなど、一人で抱え込まずに外部に助けを求めることが大切です。
特に、ハラスメントや法律違反が疑われる場合は、専門機関への相談も視野に入れることが重要です。
ステップ3:「介護職との相性」に悩んだ時のキャリア相談
もし、チェックリストを試した結果、「利用者と接すること自体がストレス」「そもそも介護の仕事にやりがいを感じられない」といった気持ちが強いのであれば、介護職との相性自体を考え直す時期なのかもしれません。
その場合は、キャリアコンサルタントなどの専門家に相談し、自分の興味や価値観を再確認してみることをお勧めします。
▼合わせて読みたい
やりたい仕事ってなんだろう?と行き詰ってしまった方に。こちらの記事では自己分析を5ステップで行うことができます。
視点を変えることで、自分に合う他の仕事が見つかる可能性があるのはもちろん、今の仕事との向き合い方にも変化が生まれるかもしれません。
4.きついだけじゃない!介護職のやりがいと魅力

悩みや課題に焦点が当たりがちな介護職ですが、他では得られない大きなやりがいや魅力があることも忘れてはいけません。
利用者からの直接の感謝
自分のケアによって利用者の生活が支えられ、「ありがとう」という言葉を直接もらえることは、何物にも代えがたい喜びです。
人の役に立っているという実感を日々得られるのは、この仕事ならではの魅力です。
社会貢献度の高さと専門性
超高齢社会である日本において、介護は社会に不可欠なエッセンシャルワークです。
社会を支えているという誇りを持てます。また、介護福祉士などの資格は、専門性の高い国家資格であり、一度取得すれば全国どこでも通用する強みになります。
安定した需要とキャリアの可能性
介護サービスの需要がなくなることはなく、常に安定した求人があります。
また、経験を積むことで、ケアマネジャーや施設長、あるいは介護分野の教育やコンサルティングなど、多様なキャリアパスを描くことも可能です。
5.【重要】「きつい職場」を避けるための見極めポイント

もし転職を決意した場合、次の職場で同じ思いを繰り返さないために、応募先を慎重に見極めることが何よりも大切です。
求人票で確認すべきこと
介護職の求人票を見る際は、以下の点を詳しくチェックすることが大切です。
- 給与体系
基本給や各種手当の内訳が明確に記載されているか確認が必要です。
特に「固定残業代」が含まれているかどうか確認が必要です。固定残業代とは、あらかじめ一定の残業時間を見込んで残業代を給与に含めるものです。
また、実際の残業時間が見込みを上回った場合、その超過分は別途支払われなければなりません。そのほか賞与や昇給の有無、退職金制度についても確認しておくことが重要です。
- 人員配置
入居者に対する介護職員の配置基準(例:入居者3人に対して職員1人など)が明記されているか確認することをおすすめします。
人員配置が手薄だと、職員一人ひとりの負担が大きくなり、質の高いケアの提供が難しくなります。夜勤の人数や頻度についても確認が必要です。
- 研修制度
未経験者やブランクのある人でも安心して働けるよう、入職後の研修制度が整っているか確認することが大切です。
OJT(職場内訓練)だけでなく、Off-JT(職場外研修)の機会があるとより望ましいです。研修期間中の給与体系についても明記されていると安心です。
- 資格取得支援
介護福祉士や介護支援専門員などの資格取得を目指す場合、施設側の支援体制を確認することが大切です。
資格取得のための金銭的な補助(受験料の全額または一部補助など)があるか、また資格取得のための学習時間を確保するためのシフト調整に配慮があるかどうかチェックするのがおすすめです。
キャリアアップの道筋が明確な施設は、長く働き続けられる環境といえます。
以上の4点は、介護職の求人票でぜひ確認しておきたいポイントです。各施設の方針や待遇面の違いを比較することで、自分に合った職場を見つけられる可能性が高まります。
わからないことがあれば、面接の際に遠慮なく質問することをおすすめします。
面接で質問すべきこと
面接は、企業が求職者を評価するだけでなく、求職者側が企業を見極める場でもあります。臆せずに質問するのがおすすめです。質問の例をこちらで紹介します。
「職員の方の平均的な残業時間はどのくらいですか?」
「どのような方がこの職場で活躍されていますか?」
「教育・研修はどのような形で行われていますか?」
「(可能であれば)職場の見学をお願いすることはできますか?」
聞きたいことを遠慮して、曖昧なままで決めてしまうと後からミスマッチが生まれることがあります。
早期退職すれば双方にデメリットがあるため、求職者の質問には事業所も真摯に答えてくれます。しっかりと質問をすることが重要です。
施設見学で見るべきポイント
もし見学が許可されたら、以下の点をチェックすることをお勧めします。
施設見学チェックリスト
- 職員の表情
- 職員がいきいきと働いている
- 職員が疲弊した表情をしていない
- 職員同士のコミュニケーション
- 職員同士が挨拶や声かけを自然に行っている
- ギスギスした雰囲気や冷たい雰囲気が漂っていない
- 施設の清潔感
- 施設内が整理整頓されている
- 清掃が行き届いている
- 利用者の様子
- 利用者が穏やかな表情で過ごしている
- 利用者が楽しそうに活動に参加している
その他
- 施設内の雰囲気が明るい
- 施設内に不快な臭いがない
- 利用者のプライバシーが守られている
- 職員と利用者の関係性が良好である
- 施設内の設備や備品が適切に管理されている
施設内の雰囲気を感じ取るのはなかなか難しいかと思いますが、職場見学をして実際の職員と利用者の姿を見ることで、働きたい職場かどうかを見極めるヒントが得られるはずです。
見学の機会をできるだけもらい、存分に活用するのがおすすめです。
6.介護職はきつい、の本当の意味を考えよう

「介護職はきつい」という言葉の裏には、様々な要因が隠されています。
大切なのは、そのイメージだけで判断するのではなく、客観的な事実を知り、自分自身の状況を冷静に分析することです。
今感じている「きつさ」は、本当に「介護の仕事」そのものが原因なのか。それとも、「今の職場環境」が原因なのか。
この記事が、その問題点を切り分け、後悔のないキャリアを築くための一助となれば幸いです。