履歴書は、入社後の活躍をイメージしてもらうための重要なコミュニケーションツールです。
しかし、記入欄を前に、「伝えたいことはあるのに、うまく言葉にできない」とペンが止まってしまった経験はないでしょうか。
この記事では、採用担当者の視点を踏まえ、転職や就職活動を成功に導くための履歴書作成の考え方と具体的な例文を解説します。
- 履歴書を作成する上での本質的な3つの心得
- 転職・新卒・パートなど状況別の履歴書の例文
- 自己PRや志望動機など項目別の具体的な書き方
1.履歴書作成の前に押さえるべき3つの心得

心得1:履歴書は「公的書類」と「自己PR資料」の二面性を持つ
履歴書は、学歴や職歴といった事実を正確に記載する「公的な性格を持つ書類」です。
誤字脱字や情報の不備は、基本的な注意力が欠けているという印象を与えかねません。
一方で、限られたスペースの中で自身の強みや入社意欲を伝える「自己PRのためのマーケティング資料」という側面も持ち合わせています。
この二面性を理解し、正確性とアピール力を両立させることが、最初の関門を突破する鍵となります。
心得2:採用担当者は「事実」と「未来の価値」を見ている
採用担当者は、履歴書から2つの情報を読み取ろうとします。一つは「学歴・職歴・資格」といった客観的な事実です。
これは、募集要件を満たしているかどうかの最低限のスクリーニングに使われます。
もう一つは、その事実の裏側にある、あなたの「入社後の貢献可能性」という未来の価値です。特に自己PRや志望動機では、過去の経験が応募先企業でどのように活かせるのかを具体的に示す必要があります。
心得3:職務経歴書との役割分担を意識する
履歴書と職務経歴書は、セットで提出を求められることが多いですが、それぞれ役割が異なります。
履歴書が「応募者の基本情報を網羅的に示すダイジェスト」であるのに対し、職務経歴書は「これまでの仕事における実績やスキルを具体的にアピールするプレゼン資料」です。
履歴書では要点を簡潔にまとめ、詳細な実績やエピソードは職務経歴書に譲るという役割分担を意識することで、より効果的な応募書類となります。
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2.すぐに使える履歴書(志望動機・自己PR)の例文18選

ここでは、応募する状況に合わせた履歴書の書き方のポイントと例文を紹介します。
ご自身の状況に近いものを参考にしてください。
【正社員】転職者向け例文
志望動機の例文
例文1:同業種への転職(経験を活かす)
これまで5年間、IT業界で法人営業として経験を積んでまいりました。中でも、業界トップの技術力を誇る貴社の〇〇というサービスに将来性を感じております。私の持つ△△業界の顧客ネットワークと課題解決の経験を活かし、貴社のサービスをさらに多くの企業に届けることで、事業拡大に貢献できると確信しております。
例文2:異業種への転職(ポータブルスキルを活かす)
現職の販売職で培った、お客様のニーズを深く理解し、信頼関係を築く「傾聴力」と「提案力」は、異業種である貴社のコンサルティング営業においても不可欠なスキルだと考えております。貴社の「顧客第一主義」という理念に強く共感しており、私の強みを活かして顧客の成功に貢献したいです。
例文3:キャリアアップを目指す
現職では〇〇の業務を担当し、□□という実績を上げることができました。しかし、より大規模なプロジェクトに挑戦し、自身のマネジメントスキルを高めたいという思いが強くなりました。業界をリードする貴社で、これまでの経験を活かしつつ、より大きな裁量と責任を持ってプロジェクトを成功に導きたいと考えております。
自己PRの例文
例文1:課題解決力をアピールする(企画職)
現職では、主力商品の売上減少という課題に対し、顧客データの再分析を実施しました。結果、30代女性という新たな顧客層を発見し、SNSと連動した新プロモーションを企画・実行。これにより、6ヶ月で対象層の売上を前年同期比150%に向上させることに成功しました。
この経験で培った分析力と企画実行力を活かし、貴社の事業成長に貢献できると考えております。
例文2:協調性とリーダーシップをアピールする(チームリーダー)
5名のチームリーダーとして、情報共有の非効率性が課題でした。
そこで、週1回の定例会とチャットツールを導入し、円滑な意思疎通の仕組みを構築。結果として、チーム内の残業時間を月平均10時間削減し、プロジェクトの納期遵守率は100%を維持しました。メンバーの意見を引き出し、目標達成に導く調整力を、貴社のチームマネジメントで活かしたいです。
例文3:専門スキルをアピールする(ITエンジニア)
PythonとAWSを用いた業務効率化ツールの開発経験が3年あります。
前職では、手作業で行っていたデータ集計作業を自動化するツールを開発し、月間40時間の工数削減を実現しました。貴社のインフラ環境においても、私のプログラミングスキルとクラウド知識を活かし、サービスの安定稼働と開発プロセスの効率化に貢献いたします。
新卒者向け例文
志望動機の例文
例文1:企業の理念に共感
貴社の「テクノロジーで人々の生活を豊かにする」という理念に深く共感しております。
大学で学んだ情報工学の知識を活かすだけでなく、サークル活動で培ったチームで目標を達成する力を発揮し、人々の日常に新しい価値を生み出すサービス開発に挑戦したいです。
例文2:商品・サービスへの熱意を伝える
以前、貴社の運営するホテルを利用した際、スタッフの方の心温まるおもてなしに深く感動いたしました。
マニュアル通りではない、一人ひとりに寄り添ったサービスを追求する貴社の姿勢に魅力を感じ、私もチームの一員として、お客様に最高の体験を提供する仕事に携わりたいと考え、志望いたしました。
例文3:自身の成長と企業の将来性を結びつける
説明会で、貴社が若手社員にも積極的に挑戦の機会を与えていると伺い、魅力を感じました。
私は、失敗を恐れずに挑戦し、成長し続けたいという強い思いがあります。最先端の技術で業界をリードする貴社の環境に身を置くことで、自身の成長を加速させ、その力を貴社の更なる発展に還元したいと考えております。
自己PRの例文
例文1:学業での経験をアピール
大学のゼミで、〇〇というテーマの共同研究に取り組みました。
私はリーダーとして、メンバーの意見調整や進捗管理を担当。意見が対立した際には、双方の意見を尊重しつつ、データに基づいた客観的な議論を促すことで、最終的にチームを一つにまとめ、教授からA評価をいただくことができました。
この経験で培った調整力とリーダーシップを、貴社でも活かしたいと考えております。
例文2:サークル活動での経験をアピール
所属していたテニスサークルで、新入部員がすぐに辞めてしまうという課題がありました。
そこで、初心者向けの練習メニューを作成し、上級生がマンツーマンで指導する制度を提案・実行。結果、新入部員の定着率を前年の50%から80%に改善しました。
この経験から、課題を発見し、周囲を巻き込みながら解決する力を学びました。
例文3:アルバイトでの経験をアピール
カフェのアルバイトで、お客様に快適な時間を過ごしていただくための「気配り」を学びました。
例えば、雨の日にはタオルをお渡ししたり、勉強されているお客様には静かな席をご案内したりといった工夫を自主的に実践。お客様アンケートで「接客が丁寧」というお褒めの言葉をいただくことが増え、仕事へのやりがいを感じました。
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アルバイト・パート向け例文
志望動機の例文
例文1:仕事内容への興味
以前から貴社の〇〇という商品に興味があり、どのような方がどのような思いで作っているのか関心を持っておりました。
求人情報を拝見し、その一端を担える機会があることを知り、大変嬉しく思っております。好きなことに関わる仕事だからこそ、高いモチベーションで貢献できると考えております。
例文2:勤務条件と両立
子育てと両立できるお仕事を探しており、貴店の勤務時間や曜日の条件が、私の希望と合致しておりました。
また、自宅から近く、地域に貢献したいという思いもあります。限られた時間の中でも集中して効率的に働き、チームの一員としてお役に立ちたいです。
例文3:ブランクからの復帰
出産・育児のため3年間仕事から離れておりましたが、子育てを通じて、効率的な時間管理能力と、マルチタスクをこなすスキルが向上したと実感しております。
以前経験した経理事務の知識を活かし、限られた時間の中でも正確かつ迅速に業務を遂行し、貴社に貢献したいと考えております。
自己PRの例文
例文1:コミュニケーション能力をアピール
以前の接客業で、幅広い年代のお客様と円滑なコミュニケーションを築く能力を培いました。
お客様の表情や声のトーンからご要望を察し、先回りした対応を心がけておりました。この経験を活かし、貴店のチームの一員として、お客様にもスタッフの方々にも気持ちよく過ごしていただける環境づくりに貢献したいです。
例文2:PCスキルをアピール
Wordでの文書作成やExcelでのデータ入力、集計作業は日常的に行っており、スムーズに業務を遂行できます。特にExcelでは、基本的な関数を用いて効率的に作業を進めることが得意です。
正確かつ迅速な事務作業で、皆様をサポートできると考えております。
例文3:真面目さ、継続力をアピール
前職では3年間、一度も無断欠勤や遅刻をすることなく、責任を持って業務に取り組みました。
任された仕事は最後まで丁寧にやり遂げることを信条としております。真面目にコツコツと取り組む姿勢で、貴店のお仕事にも貢献できると確信しております。
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こちらの記事でもアルバイトの志望動機や自己PRの具体的な例文を紹介していますので参考にしてください。
3.【項目別】履歴書の書き方と例文

基本情報(氏名・住所・連絡先など)
氏名は戸籍に登録されている文字で正確に記入します。
住所は都道府県から書き始め、アパートやマンション名も省略せずに記載しましょう。
連絡先は、日中連絡がつきやすい電話番号とメールアドレスを記入します。
学歴・職歴
学歴は、義務教育以降(高等学校入学から)を記入するのが一般的です。
学校名は「〇〇高校」と略さず、「〇〇高等学校」と正式名称で書きます。職歴は、すべての入社・退社歴を時系列で記載します。
最後に「現在に至る」と書き、その一行下に右寄せで「以上」と記入します。
免許・資格
免許・資格は、取得した年月順に正式名称で記入します。
応募する職種に関連性の高いものから優先して書くと良いでしょう。現在勉強中のものがあれば、その旨を記載することで意欲をアピールできます。
例文
令和〇年〇月 実用英語技能検定2級 取得
令和〇年〇月 TOEIC公開テスト 750点 取得
現在、日商簿記検定2級取得に向け勉強中
志望動機
数ある企業の中で、「なぜこの会社でなければならないのか」を明確に伝えます。企業の理念や事業内容に共感した点と、自身の経験やスキルをどう活かしたいかを結びつけて書くことが重要です。
自己PR
これまでの経験から得たスキルや強みが、応募先企業でどのように貢献できるかを具体的に記述します。実績を伝える際は、「売上を〇%向上させた」のように、具体的な数字を入れると説得力が増します。
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自己PRって何を書けばいいのだろう?とお悩みの方はこちらの記事が参考になります。自己PRを作る方法を4ステップで解説しています。
本人希望記入欄
特に希望がない場合は「貴社規定に従います。」と記入するのが一般的です。
職種や勤務地、勤務時間など、どうしても譲れない条件がある場合は簡潔に記載します。給与に関する希望は、最終面接などの場で伝えるのがマナーとされています。
4.履歴書作成でよくある質問(Q&A)

手書きとパソコン、どちらが良い?
企業からの指定がなければ、どちらでも問題ありません。手書きの場合は丁寧な字で書くことで誠実な印象を与えられます。
一方、パソコン作成は修正が容易で、ITスキルを示すことにも繋がります。外資系企業やIT業界ではパソコン作成が一般的です。
写真の適切なサイズや服装は?
写真は一般的に縦4cm×横3cmのサイズで、3ヶ月以内に撮影したものを使用します。服装は黒や紺などの落ち着いた色のスーツが基本です。
清潔感のある髪型や表情を心がけ、写真の裏には氏名を記入してから貼り付けましょう。
「貴社」と「御社」の使い分けは?
履歴書などの書き言葉では「貴社(きしゃ)」、面接などの話し言葉では「御社(おんしゃ)」を使います。混同しないように注意しましょう。
性別欄の書き方はどうすればいい?
近年、厚生労働省が推奨する履歴書の様式例では、性別欄は任意記載となっています。未記入で提出することも可能ですし、もし記載する場合は「男・女」のいずれかを選択する形式が一般的です。
5.まとめ
履歴書は、あなたの第一印象を決める大切な書類です。
今回ご紹介した心得と例文を参考に、あなた自身の経験や強みを効果的にアピールする履歴書を作成してください。
単に空欄を埋める作業ではなく、自身のキャリアを戦略的に編集するという視点を持つことが、希望の会社に就ける第一歩となるでしょう。