履歴書の最後に設けられている「本人希望欄」。何を書けばいいのか、あるいは何も書かないほうがいいのか、迷う方も多いのではないでしょうか 。
実は、この欄は単なる連絡事項の記載場所ではありません。
一般的には、求職者が「組織のルールを尊重し、ビジネスパーソンとしてどう適応しようとしているか」を示す最初のプレゼンテーションの場と捉えられています 。
本記事では、採用担当者に安心感を与え、ミスマッチを防ぐための「本人希望欄」の書き方を、具体的な例文とともに解説します。
1.履歴書の本人希望欄、「特になし」や空欄はなぜ避けるべきか

履歴書の本人希望欄において、空欄のまま提出することや「特になし」とだけ記載することは、原則として避けるべきです 。
採用実務の視点では、この欄は応募者のコミュニケーション能力や、組織に適応しようとする意欲を確認する項目の一つとされています。
空欄のままでは「記載漏れ」と判断されるリスクがあり、また「特になし」という表現は、人によっては「自社への関心が低い」「無機質な印象」と受け取られる可能性があるためです 。
キャリアプランニングの理論に基づくと、キャリア形成は個人と組織のマッチングの場です。この欄に適切に記述することは、組織の一員になる準備ができているという積極的な意思表示になります。
2.基本の書き方:黄金律「貴社規定に従います」の意味
特に勤務条件に希望がない場合の最も適切で標準的な書き方は、「貴社規定に従います」の1行です 。
この自己希望欄の書き方は、慣習として浸透しているだけではありません。
厚生労働省、職業安定局都道府県労働局、ハローワーク(公共職業安定所)が発行している「応募書類の作り方」にも明記されています。

「ルールを尊重し、適応する」という意思表示
この一言には、「私は貴社の就業規則やルールを尊重し、その範囲内で最大限のパフォーマンスを発揮する準備があります」というメッセージが込められています。
ビジネスシーンにおける標準的なマナーとして、採用担当者に安心感を与える「黄金律」といえる表現です。
1行で簡潔に記述するマナー
本人希望欄は、結論を簡潔に伝えることが重要です。
枠いっぱいに長々と書くのではなく、中央に1行で「貴社規定に従います」と記述するのが最も視認性が高く、スマートな印象を与えます 。
3.【ケース別】マナーを守った具体的な記入例

特定の事情がある場合でも、相手への配慮を忘れずに記載することで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
人事労務管理の実務において一般的とされる記入例を紹介します 。
在職中で連絡時間に制限がある場合
在職中のため、平日の日中は電話に出られないことがございます。恐れ入りますが、ご連絡は18時以降、またはメールにていただけますと幸いです。
このように、「なぜ制限があるのか(=在職中のため)」という理由と、「いつなら対応可能か」という代替案をセットで伝えるのがスマートな時間指定のマナーです 。
転職活動中は在職中であることも多く、連絡時間の希望を伝えておくのはごく一般的です。
複数の職種が公募されており、希望がある場合
募集されております職種のうち、『営業職』を希望いたします。
職種が複数ある場合は、ミスマッチを防ぐために希望を明記します。ただし、それ以外の職種を頑なに拒否するニュアンスにならないよう注意しましょう。
第一希望は営業職ですが、これまでの経験を活かせるようであれば、他職種についても柔軟に検討させていただきます。
その企業自体への志望度が高く、ほかの職種も検討できる場合にはこのような記載方法もおすすめです。
勤務地に複数の候補があり、希望を伝える場合
家族の介護の都合により、東京都内のオフィスでの勤務を希望いたします。
勤務地の希望を伝える際は、具体的な理由を添えることで採用側の理解を得やすくなります。
4.育児・介護・通院など、配慮を依頼する際の伝え方

育児や介護、持病の通院など、働き方に一定の配慮が必要な場合(※病歴や通院事情は「要配慮個人情報」に該当するため、開示範囲は慎重に検討する必要があります)、本人希望欄での伝え方が重要になります。
「貢献するための条件」として提示する
キャリアコンサルティングの理論に基づくと、配慮事項を「権利の主張」としてではなく、「最大限に貢献するための調整条件」として定義することを推奨します 。
育児のため、誠に勝手ながら18時までの勤務を希望いたします。その分、限られた時間内で効率的に成果を出せるよう努めます。なお、緊急時には在宅での対応も可能です。
単にお願いをするだけでなく、「この条件であれば最高のパフォーマンスを発揮できる」という貢献の姿勢をセットにすることで、心理的なハードルを下げることができます。
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5.本人希望欄に書いてはいけないNG項目と対処法

本人希望欄は、あくまで「最低限譲れない条件」や「業務遂行上の連絡事項」を記す場所であり、条件交渉を行う場ではありません 。
以下のような記載、表現方法は避けましょう。
給与、休日、福利厚生の希望は避ける
書類選考の段階でこのような記述があると、「条件のみで会社を選んでいる」というネガティブな印象を与えてしまう可能性が高いためです。
待遇交渉は「オファー面談」を活用する
求職者の悩み別分析によると、内定後に本当にこの会社でいいのか不安になる「内定ブルー」の原因の多くは情報不足です 。
待遇やリアルな働き方に関する深い相談は、選考が進んだ段階や、内定後の「オファー面談(条件提示面談)」の場で行うのが、労働法規や実務上の観点からも最も適切です 。
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6.本人希望欄は「最初の合意形成」の場

本人希望欄は、採用担当者が最初に行うスクリーニングにおいて、応募者のビジネスマナーと誠実さを測る重要な指標です 。
基本は「貴社規定に従います」とし、もし特別な事情がある場合でも「組織への貢献」を前提とした前向きな表現を心がけましょう。
面接や書類は「企業と自分が相互に評価し合う対等な対話の場」です。
伝えるべきことを伝えずにいて、後からミスマッチを引き起こすのは両社にとってマイナスになるため、この欄を適切に活用するのがおすすめです。
自分らしく働ける環境を整えつつ、採用側からの信頼を得るための準備を進めていきましょう。