アルバイトの応募で誰もが通る道、それが履歴書の作成です。しかし、「何から書けばいいの?」「自分の経歴でアピールできることなんてあるのかな?」と、ペンが止まってしまう方も少なくないでしょう。
履歴書は、採用担当者にあなたという人物を伝える最初のプレゼンテーション。書き方一つで、あなたの印象は大きく変わります。
この記事では、キャリアと労務の専門家が、履歴書作成の基本から採用担当者の心に響くコツ、そしてよくあるお悩みまで、分かりやすく丁寧に解説します。無料のテンプレートもご用意していますので、一緒に自信の持てる一枚を完成させましょう。
- アルバイト用履歴書の基本的な書き方と提出マナー
- 採用担当者に響く志望動機や自己PRの具体的な例文
- 「職歴なし」「ブランク」など、よくある悩みの解決方法
1.まずはここから!アルバイトの履歴書作成を始める前の準備リスト

履歴書を書き始める前に、いくつか準備しておくとスムーズに進みます。基本的なことから、専門家の視点まで、しっかり確認していきましょう。
履歴書はどこで手に入れる?(購入場所、無料ダウンロード)
アルバイト用の履歴書は、さまざまな場所で手に入ります。
購入する
コンビニエンスストア、スーパー、100円ショップ、文房具店、書店、オンラインショップなどで購入できます。アルバイト・パート用のものが多く、急に必要になった時でも手軽に入手できるのがメリットです。
無料でダウンロードする
インターネット上には、無料でダウンロードできる履歴書のテンプレートがたくさんあります。この記事でも後ほどご紹介しますが、WordやExcel、PDF形式で提供されているので、ご自身の使いやすい形式を選んで活用できます。
自宅のプリンターやコンビニのネットプリントサービスを利用して印刷しましょう。
▼あわせて読みたい
以下の記事では、履歴書のコンビニ印刷方法を紹介しています。失敗しないためのサイズや用紙の選び方、さらには個人情報保護の注意点まで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
手書きとパソコン作成、どちらが有利?
「手書きとパソコン、どっちがいいの?」これは非常によくいただくご質問です。結論から言うと、応募先から指定がなければ、どちらでも問題ありません。それぞれのメリットを理解して、自分に合った方法を選びましょう。
これだけは揃えたい!必須アイテム一覧
準備を万全にして、落ち着いて履歴書作成に取り掛かりましょう。

【知っておくと安心】履歴書は、あなたを不当なトラブルから守るお守りに
多くの方が履歴書を「採用されるための書類」とだけ考えていますが、実はもう一つ、とても大切な役割があります。それは、「労働条件の証拠となり、将来のトラブルからあなた自身を守る」という役割です。
例えば、あなたが本人希望欄に「週3日、1日5時間以内の勤務を希望」と書いたとします。これを企業が受け入れて採用した場合、その履歴書は「週3日、5時間勤務」という条件で合意したことの一つの証拠になります。

「もっとシフトに入ってほしい」

(履歴書を提示して)
「こういう条件で合意したはずです」
上のように後になって無理な要求をされた場合に労働条件を主張する根拠になるのです。
実際に、厚生労働省の調査では、学生アルバイトの約6割が何らかの労働トラブルを経験しているというデータもあります。準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった」といった問題も含まれています。
履歴書に希望をきちんと書くことは、こうしたすれ違いを防ぐための、最初の一歩であり、あなた自身を守る大切なお守りになるのです。
参考:厚生労働省 学生のアルバイト実態等把握のためのアンケート調査結果
2.【無料ダウンロード】すぐに使える!アルバイト用履歴書テンプレート

自分に合った履歴書を選んで、作成を始めましょう。ここでは、信頼性が高く、広く使われている2種類のテンプレートをご用意しました。
厚生労働省推奨の履歴書テンプレート(Word/Excel/PDF)
厚生労働省が公正な採用選考のために作成を推奨している様式です。
性別欄が任意記載になっているなど、個人のプライバシーに配慮されているのが特徴です。どのテンプレートを使えばよいか迷ったときは、まずこちらを選べば間違いありません。
「JIS規格」の履歴書はもう古いの?市販のテンプレートについて
JIS規格の履歴書はこれまで日本で最も標準的に使われてきた形式の履歴書です。学歴・職歴欄や自己PR欄のバランスが良く、多くの方にとって使いやすいフォーマットです。
現在ではJIS規格から履歴書の様式例は削除されていますが、一般的に広く使われている履歴書の一つとして認識されており、市販されている履歴書もJIS規格に準じたものが多く見られます。
3.【項目別】採用担当者に響く!アルバイト履歴書の書き方パーフェクトガイド
ここからは、各項目の具体的な書き方を、例文やポイントを交えて詳しく解説していきます。採用担当者はどこを見ているのか、意識しながら書き進めていきましょう。
①基本情報(日付・氏名・住所・連絡先)で意外と見られているポイント
基本情報欄は、あなたの正確さや丁寧さが見られる最初のポイントです。

②証明写真で「会ってみたい」と思わせるコツ
写真はあなたの第一印象を左右する重要な要素です。清潔感と明るい表情を心がけましょう。

その他
スピード写真でも問題ありませんが、3ヶ月以内に撮影したものを使用しましょう。万が一剥がれてしまった時のために、写真の裏には氏名を書いておくのがおすすめです。
③「学歴」はいつから書くのが正解?
一般的に、中学校卒業から書くのが基本です。「〇〇市立△△中学校 卒業」「〇〇県立△△高等学校 入学」のように、入学と卒業の両方を書きましょう。学校名は「高校」と略さず、「高等学校」と正式名称で記載します。
④「職歴」の正しい書き方と効果的なアピール術
職歴は、あなたの経験とスキルを伝える大切な項目です。
- 基本の書き方
会社名、雇用形態(アルバイト、パートなど)、簡単な業務内容、入社・退社の年月を時系列で書きます。在職中の場合は「現在に至る」と書き、最終行の右端に「以上」と記載します。 - 職歴がない場合
初めてのアルバイトなどで職歴がない場合は、空欄にせず「なし」と一言書きましょう。 - アピール術
応募先の職種と関連性の高い経験は、具体的な業務内容を少し詳しく書くと良いアピールになります。(例:「カフェでの接客業務(レジ、ホール担当)」)
⑤「免許・資格」でアピールできる意外なスキル
応募する仕事に直接関係なさそうな資格でも、あなたの個性や努力を伝える材料になります。
・正式名称で書く
「英検2級」ではなく「実用英語技能検定2級」、「普通免許」ではなく「普通自動車第一種運転免許」のように、必ず正式名称で書きましょう。
・勉強中の資格もOK
「〇〇資格取得に向けて勉強中」と書けば、向上心や意欲をアピールできます。
⑥【例文あり】「志望動機」で熱意と人柄を伝える方法
志望動機は、採用担当者が最も重視する項目の一つです。「なぜ、他の店(会社)ではなく、ここで働きたいのか」が伝わることが重要です。
例文:カフェの場合
「以前から貴店のコーヒーが好きで、よく利用させていただいております。
特に、スタッフの皆様がいつも笑顔で丁寧に対応されている姿が印象的で、私もお客様が心からリラックスできる空間作りの一員になりたいと強く思いました。
未経験ではありますが、人と接することが好きなので、その気持ちを活かして一日も早くお店に貢献できるよう努力いたします。」
⑦【例文あり】「自己PR」で”あなたらしさ”を伝える方法
自己PRでは、あなたの強みや長所が、応募先でどう活かせるかを具体的に伝えます。
例文:強みが「継続力」の場合
「私の強みは、目標に向かってコツコツと努力を続けられる継続力です。
高校時代は3年間、吹奏楽部で毎日練習に励み、未経験から担当楽器のパートリーダーを任されるまでになりました。
この経験で培った継続力を活かし、貴店でも一つひとつの業務を確実に覚え、粘り強く仕事に取り組みたいと考えております。」
⑧「本人希望記入欄」で賢く希望を伝える書き方
この欄は、あなたの働く上での「譲れない条件」を伝える重要な項目です。特に希望がない場合は「貴社(貴店)の規定に従います。」と書くのが一般的です。希望を伝える場合は、具体的かつ丁寧に書きましょう。
「本人希望記入欄」記入例
【例文:シフトの希望】
「大学の授業があるため、平日は17時以降、土日は終日の勤務を希望いたします。週3日程度の勤務を希望しております。」
【例文:扶養内勤務の希望】
「扶養控除の範囲内での勤務を希望いたします。(例:週20時間未満、年間収入103万円以内など)」
このように具体的に記載することで、採用後のミスマッチを防ぎ、安心して働き始めることができます。
4.【お悩み別】こんな時どうする?履歴書の疑問・トラブル解決Q&A

履歴書作成には、人それぞれ特有の悩みがあるものです。ここでは、よくあるお悩みに専門家の視点からお答えします。
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初めてのアルバイトで職歴がありません…
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全く問題ありません。誰にでも「初めて」はあります。職歴欄には正直に「なし」と書きましょう。
その代わり、自己PRや志望動機で、学業や部活動、サークル活動などで培った経験や、仕事への熱意を具体的にアピールすることが大切です。
「未経験ですが、学ぶ意欲は誰にも負けません」という前向きな姿勢を伝えましょう。
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バイト経験が多くて職歴欄に書ききれません!
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職歴が多いのは、それだけ多くの経験を積んだ証です。ネガティブに捉える必要はありません。
書ききれない場合は、応募する仕事内容と関連性の高い職歴を優先して3〜4つほど書き、「詳細は職務経歴書に記載」と添えて、別途職務経歴書を準備するのがおすすめです。
もしくは、同じ業種のアルバイトはまとめて「〇〇系列の飲食店にて、3年間で計4店舗を経験」のように記載する方法もあります。
職務経歴書の自己PRの書き方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
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ブランク期間(働いていない期間)について、どう説明すればいい?
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ブランク期間があること自体が、即座に不利になるわけではありません。
大切なのは、その期間に何をしていたかを正直に、そして前向きに説明することです。
例えば、「資格取得のために勉強していました」「育児に専念していました」など、明確な理由があれば堂々と伝えましょう。
もし特に理由がない場合でも、「今後のキャリアについて考える時間としていました」のように、正直に伝え、これからの仕事への意欲を示すことが重要です。
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現在もアルバイト中に、次の応募をする場合の書き方は?
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現在も在職中であることを正直に書きましょう。職歴欄の最後を「〇〇株式会社 アルバイトとして入社」とし、次の行に「現在に至る」と記載します。
本人希望欄や面接で、いつから勤務可能なのか(例:「採用決定後、2週間後から勤務可能です」)、現在のアルバイトの退職交渉にどれくらい時間がかかるかを伝えておくと、採用側もスケジュールが立てやすく親切です。
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高校生・大学生が特に気をつけるべきポイントは?
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高校生の場合、保護者の同意が必要な場合が多いため、履歴書に「保護者記入欄」があれば、必ず保護者の方に署名・捺印してもらいましょう。
大学生は、学業との両立が前提となるため、本人希望欄に勤務可能な曜日や時間帯を具体的に書いておくことが、採用後のスムーズな勤務につながります。
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主婦・主夫が扶養内で働きたい希望の伝え方は?
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これは非常に重要なポイントです。
前述の「本人希望記入欄」の書き方を参考に、「扶養控除の範囲内での勤務を希望します」と明確に記載しましょう。 そうすることで、年収の壁(103万円や130万円など)を意識していることを採用側に伝えられ、シフト調整などの配慮をしてもらいやすくなります。
リクルートの調査でも、パート・アルバイトの女性の約半数が「年収の壁」を意識しているというデータがあり、これは決して特別な希望ではありません。
5.履歴書を提出する前に!最終チェックリストと提出時のマナー
丁寧に書き上げた履歴書も、最後の詰めで印象が変わってしまうことがあります。提出前にしっかり確認しましょう。
誤字脱字はない?専門家が教える最終確認7つのポイント
一度書き終えたら、声に出して読んでみるなどして、客観的にチェックしましょう。

封筒の選び方と宛名の書き方
封筒の選び方
履歴書を折らずに入れられる「角形2号」(A4サイズ用)か「角形A4号」の白い封筒が一般的です。
宛名の書き方
表面には会社の住所と正式名称、採用担当部署名(分からなければ「採用ご担当者様」)を黒のペンで書きます。左下に赤字で「履歴書在中」と書き、四角で囲みましょう。裏面には自分の住所と氏名を書きます。
郵送する場合のマナーと注意点
履歴書はクリアファイルに入れてから封筒に入れます。これは、雨などで濡れたり、折れたりするのを防ぐためです。切手は料金不足がないように郵便局の窓口で確認すると確実です。締め切りに余裕を持って送りましょう。
手渡しする場合のマナーと注意点
持参する場合も、封筒に入れて持っていくのがマナーです。受付などで渡す際は封筒のまま渡しますが、面接官に直接渡す際は、封筒からクリアファイルごと取り出し、相手が読みやすい向きにして両手で渡しましょう。
6.自信を持って、あなたらしい一歩を踏み出そう
ここまでお疲れ様でした。アルバイトの履歴書作成は、確かに手間がかかる作業かもしれません。しかし、一つひとつの項目に丁寧に向き合うことは、あなた自身の経験や強みを再発見し、働くことへの意欲を確かめる大切な時間になります。
今回作成した履歴書は、あなたの魅力と熱意が詰まった、世界に一枚だけの大切な書類です。それはきっと、あなたの素晴らしいキャリアの第一歩を後押ししてくれるはずです。この記事が、あなたが自信を持って次の一歩を踏み出すための、ささやかな助けとなれば幸いです。