新卒の就職活動で多くの学生が悩む、履歴書の「自己PR」。特別な経験がないと不安に感じていませんか?
この記事では、自己分析から企業の目に留まる書き方の黄金法則「PREP法」、豊富な例文までを徹底解説します。
単なるテクニックではなく、あなた自身の経験から強みを見つけ出し、自信を持って語れるようになるための、具体的で実践的なステップを踏みながら進めていきましょう。
- 採用担当者に響く自己PRの基本的な考え方と、論理的な文章構成(PREP法)
- 自身の経験を強みに変えるための自己分析の方法と、すぐに使える50の例文
- 自己PRでやりがちな失敗例と、文字数や面接での伝え方といったよくある疑問への回答
1.そもそも自己PRとは?採用担当者は「未来の活躍」を見ている

「自己PR」と聞くと、何か特別な実績をアピールする場だと考えがちです。
しかし、採用担当者が本当に知りたいのは、その人が持つ人柄やポテンシャル、そして自社でいきいきと活躍してくれる未来の姿です。
ここでは、まず自己PRの本当の目的と、混同しがちな「自己紹介」や「長所」との違いを明確にし、採用担当者が何を評価しているのかを解き明かします。
自己PRの目的:自分を売り込む「プレゼン資料」
自己PRとは、自分という人材が、応募先企業にとって「採用する価値がある」ことをアピールするためのプレゼンテーション資料です。
採用担当者は、履歴書に書かれた自己PRから、応募者がどのような強みを持ち、その強みを活かして入社後にどう貢献してくれるのかを判断します。
単に自分の言いたいことを書くのではなく、相手(企業)が求める人物像を理解し、そのニーズに対して自身の経験やスキルがどう応えられるかを具体的に示すことなのです。
「自己紹介」「ガクチカ」「長所」との決定的な違い
就職活動では、自己PR以外にも様々な言葉が登場します。それぞれの違いを理解し、正しく使い分けるようにしましょう。
自己PRと他の言葉の違い
自己PR
強み+具体例+入社後の貢献
自己紹介
氏名・大学など基本情報
ガクチカ
経験から得た学びや行動特性
長所
協調性など人柄そのもの
- 自己紹介
氏名や大学名など、自分に関する基本的な情報を伝えるものです。面接の冒頭で求められることが多く、コミュニケーションのきっかけとなる部分です。 - ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)
特定の経験に対して、どのような目標を立て、どう行動し、何を学んだのかを伝えるものです。思考のプロセスや行動特性が評価されます。 - 長所
自身の優れている性格や性質を指します。「協調性がある」「真面目である」といった、人柄そのものを表す言葉です。 - 自己PR
長所を裏付ける具体的なエピソードを用いて、その強みが入社後にどう活かせるのかをアピールするものです。つまり、「長所」という人柄に、「ガクチカ」のような具体的な経験を結びつけ、入社後の貢献という未来の視点を加えたものが自己PRと言えます。
採用担当者が評価する3つのポイント(人柄、ポテンシャル、企業文化との適合性)
採用担当者は、自己PRを通じて主に以下の3つのポイントを評価しています。
採用担当者が評価する3つのポイント
人柄
Humanity
ポテンシャル
Potential
企業文化との適合性
Culture Fit
2.新卒の履歴書自己PR作成を始める前の3つの準備

優れた自己PRは、いきなり書き始めても完成しません。説得力のある内容にするためには、しっかりとした準備が必要です。
効果的な自己PR作成は、自分自身を深く理解することから始まります。
ここでは、具体的な3つの準備ステップを通じて、自己PRの土台を固める方法を解説します。
自己PR作成を始める前の3つの準備
1
「自己分析」で強みを発見する
Will (やりたいこと), Can (できること), Must (求められること) を通じて、自分の価値観や得意なこと(強みの種)を見つけます。
2
「企業研究」でニーズを把握する
企業の理念や事業内容を深く理解し、どのような人材が求められているのか(Must)を正確に把握します。
3
強みとニーズを結びつける
自分の「強み(Can)」と企業の「ニーズ(Must)」が合致するエピソードを選び出し、自己PRに一貫性を持たせます。
Step 1: 「自己分析」で自分の強みと価値観を発見する(Will-Can-Must)
自己PRの核となる「強み」を見つけるためには、まず自己分析が欠かせません。数あるフレームワークの中でも特に有効なのが「Will-Can-Must」です。

まずはWillとCanを書き出し、自分の内面を深く掘り下げます。特別な経験である必要はありません。
「サークル活動で後輩の相談に乗るのが好きだった(Will)」、「アルバイトで商品の在庫管理を正確に行うことができた(Can)」といった些細なことでも大丈夫です。
この自己分析を通じて、自分の根源的な価値観や得意なこと(=強みの種)を発見することができます。
参考:alue フレームワーク「Will Can Must」とは?
Step 2: 「企業研究」で求められる人物像を正確に把握する
次に行うのが、応募先企業がどのような人材を求めているのか(Must)を正確に把握するための企業研究です。
企業の採用サイトやパンフレット、IR情報、社長メッセージなどを読み込み、企業が掲げる理念や事業内容、求める人物像を深く理解します。
OB・OG訪問やインターンシップに参加するのも、企業のリアルな姿を知る上で非常に有効です。この段階で、企業の「Must」を具体的に言語化しておくことが、後のステップで重要になります。
Step 3: 自身の強みと企業のニーズを結びつけるエピソードを選ぶ
最後の準備は、Step1で見つけた自分の「強み(Can)」と、Step2で把握した企業の「ニーズ(Must)」を結びつけることです。
自分の数ある経験の中から、企業の求める人物像に合致する強みを発揮したエピソードを選び出します。
例えば、企業が「主体的に課題を解決できる人材」を求めているのであれば、アルバイト先で業務効率を改善するために自ら提案し、実行した経験などが有力な候補となるでしょう。
この作業によって、自己PRに一貫した論理性が生まれます。
3.必ず評価される自己PRの黄金構成「PREP法」

自己分析と企業研究で伝えるべき内容が固まったら、次はその内容を「伝わる形」に構成するステップです。
どんなに素晴らしい経験も、構成が分かりにくければ採用担当者には響きません。ここで非常に有効なのが、多くのビジネスシーンで用いられる論理的な文章構成法「PREP法」です。
このフレームワークに沿って組み立てることで、誰でも驚くほど分かりやすく、説得力のある自己PRを作成できます。
必ず評価される自己PRの黄金構成「PREP法」
P
Point (結論)
私の強みは〇〇です。
R
Reason (理由)
なぜなら〇〇という経験があるからです。
E
Example (具体例)
数字を交えた具体的なエピソードを話します。(例:売上を20%向上させました)
P
Point (結論)
この強みを活かして貴社に貢献します。
P oint(結論):私の強みは〇〇です
まず最初に、アピールしたい強みを一文で明確に述べます。
例えば、「私の強みは、目標達成に向けた課題解決能力です」のように、結論から始めることで、採用担当者は話の全体像をすぐに掴むことができます。ここが曖昧だと、その後の話がどれだけ具体的でも印象に残りません。
R eason(理由):なぜなら〇〇という経験があるからです
次に、結論で述べた強みがなぜ自分にあると言えるのか、その根拠となる経験の概要を述べます。
ここでは、具体的なエピソードの導入部として、「大学時代の〇〇という活動で、〇〇という課題を解決した経験があるからです」のように、簡潔に状況を説明します。
E xample(具体例):数字を交えた具体的なエピソード
話の最も中核となる部分です。Reasonで触れた経験について、具体的な状況や自身の行動を詳細に描写します。
ここで重要なのは、客観的な事実、特に「数字」を用いて具体性を持たせることです。
例えば、「売上向上に貢献しました」ではなく、「SNSの運用方法を見直し、月間の新規来店者数を20%増加させました」のように、定量的なデータを示すことで、一気に説得力が増します。
P oint(結論):この強みを活かして貴社に貢献します
最後に、これまでの話を締めくくります。改めて自身の強みを述べた上で、その強みを入社後にどのように活かし、企業に貢献していきたいかという未来への意欲を示します。
企業研究で得た知識を踏まえ、「この課題解決能力を、貴社の〇〇という事業で活かし、目標達成に貢献したいと考えております」のように、具体的な貢献イメージを伝えることができれば、入社意欲の高さもアピールできます。
4.【言い換え例文30選】抽象的な自己PRを「具体的」に変えるテクニック

自己PRで多くの学生が陥りがちなのが、抽象的な言葉で終わってしまうことです。
「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」といった言葉だけでは、採用担当者には何も伝わりません。
ここでは、そうした「ありがち」な表現を、具体的な行動や成果が伝わる「魅力的な」表現に言い換える例を30パターン紹介します。自身の自己PRを見直し、より説得力のある表現に磨き上げましょう。
今は自己PRを作成するツールがいくつもあります。どのようなツールがあるのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
5.人事の目を引くための+αテクニック

基本的な構成や例文を踏まえた上で、他の就活生と一歩差をつけるためのテクニックをご紹介します。
これらのポイントを意識することで、自己PRの説得力と信頼性をさらに高めることができます。
特に、公的な情報源を参照する姿勢は、誠実さや情報リテラシーの高さをアピールすることにも繋がります。少しの工夫で、採用担当者の印象は大きく変わるものです。
具体的な「数字」を入れて説得力を倍増させる
前述の通り、自己PRにおいて「数字」は非常に強力な武器です。客観的な事実である数字を用いることで、主張の信頼性が飛躍的に高まります。
例えば、「リーダーとしてチームをまとめました」という表現を、「10人のチームでリーダーを務め、週1回のミーティングを主催し、プロジェクトの進捗率を30%改善しました」と変えるだけで、具体性と実績が明確に伝わります。
自身の経験を振り返り、数値化できる要素がないか探してみましょう。
第三者からの客観的な評価を盛り込む
自分の視点だけでなく、他者からの評価を盛り込むことも有効なテクニックです。
例えば、「アルバイト先の店長から『君の提案のおかげで、新人スタッフの教育時間が半分になった』と言われました」のように、第三者の言葉を引用することで、アピール内容の客観性が増します。
ゼミの教授やサークルの仲間、アルバイト先の同僚など、自分を客観的に見てくれた人の言葉を思い出してみましょう。
【重要】厚生労働省が推奨する最新の履歴書フォーマットとは
自己PRの内容だけでなく、提出する書類の形式にも配慮が必要です。厚生労働省は、公正な採用選考を実現する観点から、新たな履歴書の様式例を公開しています。
例えば、性別欄が任意記載になっていたり、通勤時間や扶養家族数の記入欄が削除されていたりといった変更が加えられています。
このような公的なガイドラインに準拠したフォーマットを使用することは、社会的な動向への理解度やコンプライアンス意識の高さを示すことにも繋がります。
こちらの記事でも自己PRの書き方や例文を紹介しています。
6.新卒の自己PRでこれはNG!避けるべき自己PRの注意点

自己PRは、強みをアピールする場であると同時に、社会人としての基礎的な注意力を試される場でもあります。
自信のなさが表れる表現や、相手への配慮を欠いた内容は、無意識のうちにネガティブな印象を与えかねません。
ここでは、せっかくの自己PRが台無しになってしまう、よくある失敗例とその心理的背景について解説します。
避けるべき自己PRの注意点
- 抽象的で具体性がない
- 企業の求める人物像とずれている
- ネガティブな表現や自慢話
- 誤字脱字や乱雑な文字
抽象的で具体性がない
「コミュニケーション能力には自信があります」「努力家です」といった言葉だけでは、採用担当者は何も判断できません。必ず具体的なエピソードを添えましょう。
企業の求める人物像とずれている
企業研究が不十分だと、どれだけ優れた強みでも「うちの会社では活かせないな」と判断されてしまいます。必ず企業のニーズと結びつけましょう。
ネガティブな表現や自慢話
「〇〇は苦手ですが」といったネガティブな枕詞は不要です。また、実績を語る際に、他者を見下すような表現や過度な自慢話は、協調性を疑われる原因になります。
誤字脱字や乱雑な文字
誤字脱字は「注意力が散漫」「志望度が低い」といった印象を与えてしまいます。提出前には必ず複数回、声に出して読み返すなどしてチェックしましょう。手書きの場合は、一文字一文字丁寧に書くことが誠意を伝える上で重要です。
7.新卒の自己PRに関するよくある質問(FAQ)

ここでは、新卒の就活生から特によく寄せられる自己PRに関する質問とその回答をまとめました。
多くの人が同じような点で悩み、立ち止まっています。ここで疑問や不安を解消し、自信を持って自己PR作成の最後の仕上げに取り組みましょう。
これらの回答は、悩みを乗り越えるためのヒントとなるはずです。
Q: 文字数はどのくらいがベストですか?
履歴書の自己PR欄の大きさに合わせ、記入欄の8〜9割程度を埋めるのが理想的です。
文字数が少なすぎると意欲が低いと見なされ、逆に枠をはみ出してびっしり書かれていると「要点をまとめる能力がない」「読みにくい」という印象を与えかねません。
指定文字数がある場合は、その9割以上を目安にしましょう。伝えたいことを簡潔にまとめる練習も、ビジネススキルのひとつです。
Q: アピールできるような特別な経験がありません…
全く心配ありません。採用担当者は、役職や受賞歴といった「すごい経験」そのものを聞きたいわけではないのです。
彼らが見ているのは、経験の大小ではなく、その経験から何を学び、どのように考え、行動したかというプロセスです。
学業、サークル、アルバイトといった日常の経験の中に、課題を見つけて解決したこと、目標を立てて努力したこと、誰かと協力して何かを成し遂げたことなど、アピールに繋がる要素は必ずあります。
自己分析を丁寧に行い、経験の価値を再発見することが重要です。
Q: 履歴書と面接で内容は変えるべきですか?
基本的には、履歴書に書いた内容と一貫性を持たせるべきです。ただし、面接は対話の場なので、履歴書の内容をただ暗唱するだけでは不十分です。
履歴書には書ききれなかったエピソードの背景や、その時の感情、より詳細な行動などを補足的に話すことで、内容に深みとリアリティが生まれます。
また、面接官の反応を見ながら、相手が興味を持った部分をさらに掘り下げて話すといった、柔軟な対応も求められます。履歴書を「要約版」、面接を「詳細版」と捉えると良いでしょう。
8.自己PRは、自分らしいキャリアを築くための第一歩
自己PR作成とは、決して「自分を良く見せるテクニック」ではありません。
それは、これまでの人生を丁寧に振り返り、自身の価値を再発見し、未来のキャリアを主体的に描くための、非常に重要で創造的なプロセスです。特別な経験は不要です。
この記事で紹介したステップを実践し、自信を持って自分らしいキャリアへの第一歩を踏み出してください。