20代の転職は、今後のキャリアに大きな影響を及ぼす重要な決断です。
そのため「今、動くべきだろうか」「もし失敗したらどうしよう」と不安を抱き、一歩を踏み出せないでいる方も多いでしょう。
本記事では、転職活動で押さえておくべき基本情報に加え、キャリア・心理・法律の3つの視点から、20代転職の最適なタイミングをわかりやすく解説します。
- 自分にとって本当にベストな転職時期が明確になる
- 「失敗したらどうしよう…」という漠然とした不安が解消される
- 今すぐ何をすべきかわかり、自信を持って次の一歩を踏み出せる
1.20代の転職は「有利」?知っておくべき市場価値の真実

転職を成功させる第一歩は、企業があなたに何を期待しているのかを正しく理解することです。
「20代は転職に有利」とよく言われますが、その理由は年代によって異なります。
以下でみていきましょう。
20代前半:未来への「ポテンシャル」採用
社会人経験がまだ浅い20代前半では、企業はあなたの将来性や学ぶ意欲、人柄といった「ポテンシャル(潜在能力)」を重視します。
第二新卒としての採用も活発で、未経験の業界や職種にも挑戦しやすいのが最大のメリットです。

20代前半の転職は、今後のキャリアの方向性を定めるうえで重要なステップです。
20代後半:即戦力としての「経験」採用
20代後半になると、企業はあなたがこれまでに培ってきた実務経験や専門スキルに注目し始めます。
3年以上の実務経験があれば、即戦力として評価され、キャリアアップや年収アップを目指す転職が現実的になります。

これまでの経験をどう活かし、企業にどう貢献できるのかを具体的に示すことが求められます。
2.あなたのベストタイミングはいつ?4つの軸で見極める

「転職にベストなタイミング」は、人それぞれ異なります。
ここからは、客観的な「カレンダー」、あなた自身の「キャリア」と「ライフイベント」、そして「心」という4つの軸から、あなただけのタイミングを見つける方法を見ていきましょう。
①カレンダー:企業の採用が活発になるのは何月?
一般的に、企業の採用活動が最も活発になるのは、年度末の2~3月と、下半期が始まる前の8~9月と言われています。
この時期は求人数が増えるため、多くの選択肢の中から自分に合った企業を見つけやすいというメリットがあります。
しかし、これはあくまで一般的な傾向です。大切なのは、この波に乗り遅れないことよりも、他の3つの軸と合わせて総合的に判断することです。
②キャリア:キャリアチェンジか、キャリアアップか?
転職の「目的」によっても、最適なタイミングは変わります。
【目的】キャリアチェンジ
▼未経験の仕事に挑戦したい場合
ポテンシャルを重視してくれる企業が多い時期を逃さないことがポイントです。少しでも若いうち、つまり20代前半~中盤が有利です。
【目的】キャリアアップ
▼経験を活かして年収や役職を上げたい場合
最低でも、現職で3年以上の実務経験を積んでから転職しましょう。明確な実績やスキルがあれば、企業との交渉を有利に進められます。「自分は何ができて、どう貢献できるのか」を語れるようになってからが、キャリアアップのタイミングと言えるでしょう。
③ライフイベント:人生の節目とどう向き合う?
結婚や出産、住宅ローンといったライフイベントは、キャリアを考える上で避けて通れないポイントです。
■例えば…
- 結婚→将来を見据えて安定した企業に転職したい
- 妊娠→産休・育休制度が整っている会社へ
- 介護→残業が少ない職場がいい、など
転職活動は心身ともにエネルギーを使うため、ライフイベントの準備と同時進行は大変な場合もあります。
人生の大きなイベントを計画しているなら、その半年前~1年前に転職活動を終えておくなど、逆算してスケジュールを立てましょう。
④心理:あなたの「心がGOサインを出す」タイミングとは?
「周りが転職しているから」「今の仕事が何となく嫌だから」…そんな漠然とした理由だけで転職を始めるのは危険です。
大切なのは、あなた自身の心が「変わりたい」と明確に感じているかどうかです。以下のように感じている場合は、転職のタイミングかもしれません。
- 今の仕事では、これ以上の成長が見込めないと感じる
- どうしても挑戦したい、新しい目標が見つかった
- 仕事の価値観と、会社の方向性が明らかに違うと感じる
このように、前向きで主体的な「GOサイン」を自分の心の中に感じられたときが、転職を始めるベストタイミングと言えるでしょう。
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「転職したいけれど、これは一時的な迷いなのか判断できない」という方は、以下の記事も参考にしてください。≪転職を検討すべきかがわかるチェックリスト≫や≪転職を思いとどまるべきケース≫について、詳しく解説しています。
3.要注意!転職を避けるべき「ワーストタイミング」とは?

転職は、焦って行動すると後悔を招くこともあります。ここでは、転職を始めるべきではない「ワーストタイミング」について解説します。
スキルアップの実感がないまま、不満だけで転職を始める
「給料が安い」「人間関係が辛い」といった不満は、転職のきっかけにはなります。
しかし、その不満を解消するためのスキルや経験が自分に備わっていない段階で辞めてしまうと、次の職場でも同じような壁にぶつかる可能性があるのです。
スキルや経験が備わっていないと、どうして同じ壁にぶつかるの?
理由は、以下の2つです。
- 市場価値が変わらないと、条件も変わりにくいため
【例えば】給料が安いから転職→スキルがなければ同じような給料でしか採用されない
- 「自分のクセ」を持ち越してしまうため
【例えば】人間関係が辛くて転職→自分のコミュニケーション能力や物事の捉え方に問題がある場合、次の職場でも同じ問題に直面する
「〇〇が嫌だ」といった感情的な理由ではなく、今後のキャリアを戦略的に築くための選択肢として転職を検討しましょう。
次の目標が曖昧なまま、先に退職してしまう
「とにかく今の会社を辞めたい」という気持ちが先行し、次のキャリアプランが明確でないまま退職してしまうと、「進むべき方向が定まらず、応募先を絞り込めない」などの理由から、転職活動が長引いてしまうリスクがあります。
また、生活費の不安から焦ってしまい、条件の良くない会社に妥協してしまうケースも少なくありません。
4.「転職したいけど動けない…」その正体と抜け出し方

「転職したい気持ちはあるのに、なぜか行動に移せない…」。
このような状態は「転職迷子」と呼ばれ、多くの人が同じ悩みを抱えています。ここでは、転職迷子に陥る主な原因と、その抜け出し方を解説します。
なぜ多くの人が「転職迷子」になってしまうのか?
転職迷子に陥る原因は、大きく分けて3つです。
- キャリアの軸の不在
自己分析不足から、自分の「やりたいこと」「できること」「求められること」が整理できておらず、どの方向に進めばいいか分からない - 心理的ブレーキ
「失敗したらどうしよう」「自分にはアピールできる強みなんてない」といった、認知の歪みからくる過度な不安や自己過小評価が、行動にブレーキをかけている - 知識不足への不安
転職活動の進め方や、退職に関する法的な手続き、社会保険など、知らないことへの漠然とした不安が、一歩を踏み出すことをためらわせている
「転職迷子」から抜け出すための具体的な最初の一歩
もしあなたが「転職迷子」になっていると感じたら、無理に求人サイトを見る必要はありません。
まずは、以下のような小さな一歩から始めてみましょう。
- 「キャリアの棚卸し」をしてみる
自分をよく知ることは、転職の第一歩です。例えば、これまでの仕事で「楽しかったこと」「苦労したけど、乗り越えて嬉しかったこと」をノートに書き出してみましょう。これが、あなたの「強み」や「価値観」を見つけるヒントになります。 - 「完璧な転職」を目指すのをやめる
「絶対に失敗できない」という思いが、あなたを縛り付けているのかもしれません。あなたの希望を全てかなえる100点満点の会社はありません。少しでも「興味がある」と感じた企業があれば、応募してみるのもよいでしょう。 - 信頼できる人に話してみる
一人で抱え込まず、キャリアセンターの専門家や、信頼できる先輩などに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが整理されることがあります。助けを求めることは、弱さではなく、前に進むための「強さ」なのです。

自己分析を通じて今後のキャリアを描き、転職の軸を明確にすることも、転職活動の大切な一部です。
5.平均3ヶ月|転職活動を成功させる完全ロードマップ

転職活動は、準備から内定までおおよそ3ヶ月ほどかかると言われています。
無駄なくスムーズに進めるためにも、具体的なロードマップを見ていきましょう。
【STEP1】自己分析とキャリアの棚卸し
まずは、これまでの経験を整理し、自分の強みや価値観を明確にしましょう。
自己分析は「転職と直接関係ない」と感じる方もいるかと思います。しかし、このステップが今後の活動の基盤となるのです。
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やりたい仕事が見つからず転職迷子になっている方は、以下の記事もぜひご覧ください。自己分析の方法や、「やりたい仕事がない」を強みに変える転職活動のノウハウを詳しく解説しています。
【STEP2】応募書類の作成と応募
自己分析で見えてきた自分の「価値」を、応募書類でアピールします。職務経歴書は、あなたの実績をアピールするための「マーケティング資料」です。
実績は「売上を10%向上させた」のように、具体的な数字で示すと説得力が増します。
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履歴書や職務経歴書の作成については、以下の記事をご参照ください。失敗しないためのポイントや、採用担当者に響く効果的な書き方など詳しく解説しています。
【STEP3】面接対策と内定
面接は「評価される場」ではなく「お互いを理解する対話の場」と捉えましょう。
よく聞かれる質問への回答を準備し、模擬面接などで練習しておくことが自信につながります。
特に、面接の最後にある「逆質問」は、あなたの意欲を示す絶好のチャンスです。
以下のように、「もし自分が入社したら、どうすれば活躍・貢献できるか」を考えるヒントになる、前向きな質問を用意しておきましょう。
■効果的な逆質問の例
- 「私が配属される部署は、今後、どのような役割や貢献が期待されているのでしょうか」
- 「今後チームとして特に力を入れていきたいと考えている課題はありますか」
- 「この部署で活躍されている方々に、共通している考え方や行動のパターンはありますか」など
【STEP4】円満退職と引継ぎ
内定が出たら、いよいよ退職準備に入ります。
後任者への丁寧な引継ぎは、社会人としての最後の責任です。法律上は2週間前の申し出で退職できますが、円満に退職するためにも、引継ぎ期間を考え1~3ヶ月前には直属の上司に伝えるのがマナーです。

残っている有給休暇をしっかり消化することも、法律で認められたあなたの権利です。退職の意向は、引継ぎだけでなく有休消化期間も計算して早めに伝えましょう。
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退職が決まったら、以下の記事もチェックしておきましょう。円満退職に向けた準備や交渉の進め方、退職後に必要な行政手続きなど、全体の流れをわかりやすく解説しています。
6.【20代の転職】でよくある質問(FAQ)

20代での転職は、経験が浅いからこそ不安や疑問も多いものです。ここでは、よくある質問をまとめました。
Q.転職回数が多いと不利になりますか?
A.必ずしも不利になるとは限りません。
回数そのものよりも、それぞれの転職理由に一貫性があり、キャリアアップにつながっていることを合理的に説明できるかどうかが重要です。

なぜ転職し、そこで何を学び、次にどう活かしたいのかを語れるように準備しましょう。
Q.特別なスキルがなくても大丈夫ですか?
A.心配ありません。
20代の転職では、企業はスキルよりも将来性や人柄、意欲を重視する傾向があります。
資格や経験だけでなく、「ポータブルスキル(どこでも活かせるスキル)」に目を向けてみましょう。

「後輩に仕事を教えるのが得意」なら「指導力」、「複数の業務を同時にこなせる」なら「計画実行力」といった具合に、「当たり前」にこなしている業務の中からスキルを探してみましょう。
Q.未経験の職種にチャレンジできますか?
A.20代、特に前半であれば十分に可能です。
企業はあなたのポテンシャルに期待しており、即戦力よりも将来性や伸びしろを重視します。

なぜその仕事に挑戦したいのかという熱意と、そのために今どんな自己学習をしているのか、といった主体的な姿勢を示すことが大切です。
7.後悔しない20代の転職活動!タイミングは自分で決める
転職の「本当のベストタイミング」は、誰かに教えてもらうものではなく、自分自身で見極めるものです。
この記事でお伝えしたように、キャリアの軸を明確にし、心の整理を行い、法的・制度面の知識を備えることが、後悔のない転職につながるでしょう。
周囲の情報や他人のペースに振り回される必要はありません。自分の基準で状況を整理し、納得感を持って行動できるときこそが、あなたにとっての最適な転職タイミングです。