履歴書の作成中に「賞罰」という欄を見て、手が止まってしまうことがあります。
「過去の交通違反は書くべきなのか」「学生時代の表彰は含まれるのか」といった疑問は、多くの求職者が抱える共通の悩みです。
実は、履歴書の賞罰欄に記入が必要なケースは非常に限定的であり、多くの場合は「賞罰なし」となります。
しかし、正しい基準を知らずに記載漏れがあると、最悪の場合、経歴詐称とみなされるリスクもゼロではありません。
この記事では、人事労務管理の実務や法令の規定に基づき、賞罰の正しい定義と、具体的な書き方を解説します。
- 履歴書における「賞」と「罰」の正確な定義と判断基準
- 交通違反や社内表彰など、迷いやすいグレーゾーンの判定方法
- 「賞罰なし」の場合や、賞罰欄がない履歴書の適切な書き方
1.そもそも履歴書の「賞罰」とは?意外と狭い定義
「賞」の定義
公的・全国レベルが基準- ✔国や地方自治体からの表彰
- ✔全国・国際レベルの大会入賞
- ✔人命救助などの公的貢献
※客観的な証明が必要。社内表彰は含みません。
「罰」の定義
原則「刑事罰」が対象- ✔懲役・禁錮(執行猶予含む)
- ✔罰金刑
※交通違反(青切符)や不起訴、注意は含みません。
多くの人は「賞罰なし」でOK
求職者の9割以上は該当しません。
「なし」と書くのが正しいマナーです。
履歴書にある「賞罰」とは、応募者の社会的な評価や遵法精神を確認するための項目です。
日常用語としての「賞」や「罰」とは異なり、履歴書作成の実務においては非常に限定的な定義が用いられます。
「賞」の定義:国や都道府県レベルの表彰が基準
履歴書に記載する「賞」とは、原則として公的な機関や全国レベルの大会などでの受賞歴を指します。
具体的には以下のようなものが該当します。
- 国や地方自治体からの表彰: 都道府県知事賞、市区町村長からの感謝状など
- 全国レベル・国際レベルの大会での入賞: スポーツや芸術分野での全国大会優勝、国際コンクール入賞など
- 公的な貢献による表彰: 人命救助による警察署からの感謝状など
基準としては、「受賞歴を客観的に証明できるもの」であり、「認知度が高いもの」であることが求められます。
「罰」の定義:原則として「刑事罰」が対象
多くの人が不安を感じる「罰」ですが、履歴書に記載義務があるのは原則として「刑事罰」を受けた場合に限られます。
- 懲役・禁錮: 刑務所に収容される刑罰(執行猶予を含む)
- 罰金: 刑事裁判を経て科される金銭的な刑罰
警察から注意を受けた程度や、不起訴処分(嫌疑不十分や起訴猶予など)となったものについては、履歴書上の「罰」には該当しません。
法的な観点からは、確定した有罪判決(刑事罰)が記載の対象となります。
多くの人が該当する「賞罰なし」の意味
上記の定義に照らし合わせると、一般的な求職者の9割以上は、特筆すべき賞も罰も持っていない「賞罰なし」の状態に該当します。
「何も書くことがない」と不安に思う必要はありません。むしろ、重大な犯罪歴がないことの証明として、「賞罰なし」と記載することが一般的であり、それが正しいマナーです。
2.【判定リスト】履歴書の「賞」に書くべきもの・書かないもの
-
◎
全国規模のスポーツ大会 優勝・入賞など客観的実績
-
◎
国内・国際コンクール 芸術分野などの受賞
-
◎
官公庁・業界団体の表彰 社会的認知度が高いもの
-
△
社内表彰(社長賞など) →「職務経歴書」の自己PRへ
-
△
皆勤賞・地区大会 中途採用では評価されにくい
-
△
古すぎる受賞歴 10年以上前や小中学生時代は省略
賞罰欄は「事実」のみを記載する場所ですが、自己PR欄なら「努力のプロセス」まで伝えられます。
自身の持っている実績が記載対象になるか迷う場合のために、具体的な判定基準を整理します。
書くべき賞:国際大会、全国大会、公的な表彰など
以下のような実績がある場合は、自己PRの材料として積極的に記載します。
- 全国規模のスポーツ大会での優勝・入賞
- 国内および国際的なコンクールでの受賞
- 官公庁からの表彰
- 業界団体からの表彰(社会的認知度が高いもの)
書かないほうがよい賞:皆勤賞、社内表彰、古すぎる受賞歴
一方で、以下のような賞は「賞罰欄」には記載しないのが一般的です。
- 社内表彰: 前職での「社長賞」や「MVP」などは、その会社内での評価基準によるものなので、賞罰欄ではなく「職務経歴書」の自己PR欄に記載します。
- 皆勤賞: 学生時代の皆勤賞などは、新卒採用以外の中途採用では評価対象になりにくいため、省略します。
- 小規模な大会: 地区大会レベルの入賞などは、賞罰欄に書くと「公的な賞」との混同を招く恐れがあります。
- 古すぎる受賞歴: 10年以上前のものや、小学生時代の受賞歴などは、現在の能力評価に直結しないため記載しません(ただし、オリンピック出場など極めて特異な実績を除く)。
迷った時の判断基準と自己PR欄の活用法
「賞罰欄に書くほど立派な賞かわからない」と迷った場合は、賞罰欄には書かず、自己PRや職務経歴書にエピソードとして盛り込むことを推奨します。
賞罰欄はあくまで事実を羅列する場所ですが、自己PR欄であれば、「その賞を取るためにどのような努力をしたか」というプロセスまで伝えることができ、より効果的なアピールにつながります。
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3.【要注意】履歴書の「罰」に書くべきもの・書かないもの

履歴書の作成において最も神経を使うのが「罰」の扱いです。記載が必要なラインを正確に理解しておくことが、トラブル回避の鍵となります。
最も多い悩み「交通違反」の境界線(赤切符と青切符)
要注意 交通違反の境界線
行政処分(反則金)
- 一時停止違反
- 駐車禁止違反
- 30km/h未満のスピード違反
※刑事罰ではないため原則記載不要
刑事処分(罰金刑以上)
- 酒気帯び・無免許運転
- 30km/h以上のスピード違反
- 人身事故
※「前科」となるため記載義務あり
日常生活で起こりうる交通違反については、「行政処分」か「刑事処分」かで判断が分かれます。
青切符(反則金)レベル:
一時停止違反、駐車禁止違反、軽微なスピード違反(一般道で30km/h未満の超過)などは「行政処分」にあたります。
これらは刑事罰ではないため、原則として履歴書の賞罰欄に書く必要はありません。
(※ただし、運送業などで「運転記録証明書」の提出を求められる場合は、事実との整合性に注意が必要です)
赤切符(罰金刑以上)レベル:
酒気帯び運転、無免許運転、大幅なスピード違反(一般道で30km/h以上の超過)、人身事故などは「刑事処分」の対象となる可能性があります。
刑事裁判(略式含む)で罰金刑以上が確定した場合は「前科」となり、賞罰欄への記載義務が生じます。
特に、運送業や営業職など運転が業務に直結する職種では、過去の違反歴が重視される傾向にあります。
自身の違反歴について不明な点がある場合は、自動車安全運転センターで「運転記録証明書」を取得して確認する方法があります。
「前科」と「前歴」の違いと告知義務
- 前科: 過去に有罪判決(罰金刑以上)を受けた経歴。履歴書の賞罰欄への記載義務があります(※ただし、刑の消滅後は法的な記載義務はなくなります)。
- 前歴: 捜査機関の捜査対象になったが、起訴されなかった(不起訴処分)経歴など。これには賞罰欄への記載義務はありません。
また、前科がある場合でも、刑法上の「刑の消滅」までの期間(例:禁錮以上の刑の執行終了から10年など)を経過すれば、法的には記載の必要がなくなると解釈されています。
ただし、応募先企業の就業規則や質問票で具体的な申告を求められた場合は、虚偽申告にならないよう注意が必要です。
参考:e-Gov法令検索|刑法
裁判中の事案や行政処分の扱い
現在裁判中の事案については、有罪判決が確定していないため「推定無罪」の原則により、賞罰欄に記載する必要はありません。
また、行政処分(運転免許の停止・取消、業務停止命令など)についても、履歴書の賞罰欄の対象外とするのが一般的です。
ただし、資格職などで業務に関連する行政処分を受けている場合は、面接等の場で説明を求められる可能性があります。
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4.「賞罰なし」の場合の正しい書き方【記入例】
賞罰欄は空欄のまま提出してはいけません。「記載漏れ」を防ぐため、以下の手順で記入します。
記入の3ステップ
1行目:中央
「賞罰」と記入
※区切りとして重要
2行目:左端
「なし」と記入
3行目:右端
「以上」と記入
9割以上の人が該当する「賞罰なし」の場合の、履歴書への正しい記入マナーを解説します。
1行目に「賞罰なし」、2行目に「以上」の基本ルール
賞罰欄がある履歴書を使用する場合は、空欄のまま提出してはいけません。「記載漏れ」と判断されるのを防ぐため、以下の手順で記入します。
- 賞罰欄の1行目の中央(または左寄せ)に「賞罰」と書く(既に欄外に「賞罰」とある場合は不要なこともありますが、区切るために書くのが丁寧です)。
- その次の行の左端に「なし」と書く。
- さらにその次の行(または「なし」と同じ行)の右端に「以上」と書く。
賞罰欄自体がない履歴書を使用する場合(JIS規格の変更点)
近年、市販されている履歴書の中には「賞罰欄」自体が存在しないものが増えています。
これは、2021年に厚生労働省が新たな履歴書様式例を作成し、JIS規格の履歴書から賞罰欄が削除されたことに関連しています。
賞罰欄がない履歴書を使用する場合は、無理に賞罰について触れる必要はありません。
自身の過去に不安がある場合や、特筆すべき賞がない場合は、賞罰欄のない様式(厚生労働省様式など)を選ぶのも一つの戦略です。
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5.嘘を書くとどうなる?告知義務と経歴詐称のリスク

「バレなければいいだろう」と考えて賞罰を隠すことは、極めて高いリスクを伴います。
「賞罰」を隠していたことがバレるタイミング
過去の賞罰は、以下のようなタイミングで発覚することがあります。
- 住民税の手続き: 退職時の手続きなどで矛盾が生じる場合。
- 噂やSNS: 共通の知人や、過去のSNSの投稿から発覚する場合。
- リファレンスチェック: 企業が前職の上司などに経歴確認を行った場合。
- 資格証の確認: 運転免許証の提示などで、免許取消や停止の事実が判明する場合。
経歴詐称による解雇や内定取り消しの可能性
履歴書の賞罰欄に虚偽の記載をすることは「経歴詐称」にあたります。
特に、採用の判断に重大な影響を与えるような犯罪歴(業務に関連する横領や、運転職における重大な交通違反など)を隠していた場合、就業規則に基づく懲戒解雇の事由となる可能性があります。
また、入社前であれば内定取り消しの正当な理由となり得ます。
正直に書くことが信頼につながる理由
賞罰欄は、単なる過去の記録ではなく、応募者の「誠実さ」を測る試金石でもあります。
過去に過ちがあったとしても、それを正直に申告し、現在は反省して更生していることを伝える姿勢は、隠蔽することよりも遥かに誠実な態度として評価される場合があります。
特に賞罰欄がある履歴書を使用する以上は、ルールに則り、事実を正確に記載することが、入社後の信頼関係を築く第一歩となります。
6.正しいルールを理解すれば、賞罰欄は決して怖いものではない
履歴書の賞罰欄は、多くの人にとっては「なし」と記載して完了する項目です。しかし、定義を曖昧にしたまま作成すると、思わぬ不安やトラブルの種になりかねません。
- 賞: 全国・公的レベル以外は書かない(自己PRへ)。
- 罰: 刑事罰(赤切符以上)のみ記載。行政罰(青切符)は書かない。
- 基本: 嘘をつかず、誠実に記載する。不安なら賞罰欄のない様式を選ぶ。
これらのルールを理解すれば、賞罰欄は決して怖いものではありません。正しい知識に基づく履歴書作成が、自信を持って選考に臨むための基盤となります。