履歴書や契約書などの重要書類を作成する際、「間違えてしまった。修正テープを使っても良いのだろうか?」と悩んだ経験があるかもしれません。
公的な書類やビジネス文書、履歴書において修正テープの使用は、原則としてNGです。
これは単なる「マナー」の問題だけではありません。その書類の「信頼性」や「証拠能力」に関わる、重要な理由に基づいています。
この記事では、なぜ修正テープがダメなのか、その理由を解説します。さらに、書き間違えた場合の正しい対処法や、ミスを防ぐための予防策まで解説します。
- 書類(特に履歴書)で修正テープがNGとされる4つの理由
- 書類を書き間違えた場合の原則的な対処法(書き直し)と例外的な対処法(訂正印)
- 書類の書き間違いを未然に防ぐための具体的な予防策
1.書類に修正テープを使ってはいけないのはなぜか?4つの明確な理由

修正テープの使用について、「なんとなくダメそう」と感じる人も多いのではないでしょうか。
そこにはビジネス上、法務・労務管理上、明確なNG理由が存在します。
理由1:第三者による「改ざん」のリスクがあるため
修正テープは、誰でも簡単に上から文字を書き加えられます。
もし修正テープが使われた書類が公的に認められてしまうと、第三者が後から内容を不正に書き換える「改ざん」が容易にできてしまうのです。
特に契約書や公的機関に提出する書類、あるいは入社時に用意する履歴書において、このような改ざんのリスクは避ける必要があります。なぜなら、その書類の証拠能力や信頼性を失わせることに繋がるからです。
場合によっては刑法上の私文書偽造等(有印私文書変造罪)に問われる可能性もあるため、証拠能力が求められる書類では修正テープの使用が禁じられています。
私文書偽造等 刑法第159条第2項
他人が押印し、もしくは署名した権利、義務若しくは事実証明に関する文書等又は、他人が電磁的記録印章等を使用して作成した権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様(3月以上5年以下の拘禁刑)とする。
参考|e-gov法令検索:刑法
理由2:相手にマイナスな印象・不信感を与えるため
履歴書は応募先企業に提出する「最初の公式な書類」です。
修正テープの跡が残った書類は、採用担当者に次のようなマイナスの印象や不信感を与えてしまう可能性があります。

丁寧に仕上げられた書類そのものが「私は仕事も丁寧に行います」という自己PRになります。
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理由3:修正跡が目立ち、文書の「見た目」が悪くなるため
修正テープを使った部分は、どうしても目立ってしまいます。特にコピー(複製)を取った際に、修正部分が黒ずんで浮かび上がることがよくあります。
ビジネス文書において、見やすさは、相手への配慮を示す上で重要な要素です。
理由4:修正テープが剥がれる「物理的」なリスクがあるため
修正テープは、経年劣化や、摩擦などで、テープが剥がれてしまう物理的なリスクがあります。
もし重要な情報(契約金額や日付など)が記載された部分が剥がれた場合、書類としての機能を果たせなくなってしまいます。
2.【重要】修正テープがNGな書類とは?

修正テープの使用が特に厳禁とされる書類の具体例と、その理由を改めて確認しましょう。
履歴書・エントリーシート
選考書類は、応募者の能力や経歴を証明する公的な書類です。「改ざんリスク」や「心証の悪化」という観点から、避けるべきです。
たとえ一文字のミスであっても、修正テープは使わず新しい用紙で書き直す必要があります。
契約書・公的書類
不動産契約書、雇用契約書、役所に提出する申請書類が該当します。
これらは法的な証拠能力が求められるため、修正テープによる修正は認められません。もし修正が必要な場合は、「二重線と訂正印」による正式な手続きが必要です。
たとえば国税庁が定める確定申告書の訂正方法においても、修正テープの使用は認められておらず、二重線と押印による訂正が求められています 。
取引先への送付状・封筒の宛名
取引先相手に送る書類にも注意が必要です。
修正テープが使われた宛名や送付状は、失礼にあたります。ビジネスマナーとして、新しいものに書き直す必要があります。
3.書類を書き間違えた時の正しい対処法

では、もし重要な書類を書き間違えてしまったら具体的にどうすれば良いのでしょうか。
ここでは正しい対処法を順に解説します。
原則:新しい用紙で「一から書き直す」のが最善
新しい用紙を用意して書き直すのが基本の対処法です。
特に履歴書やエントリーシートなどは、替えの用紙を手に入れる(印刷し直す)ことができます。どれだけ作成が進んでいたとしても、新しい用紙で一から書き直すよう心がけてください。
人によっては「時間がもったいない」と感じるかもしれません。しかし、一手間を惜しんだことで採用担当者にマイナスの印象を与えてしまうほうが、より大きな損失をもたらします。
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やむを得ない場合の正式な訂正方法:「二重線」と「訂正印」
すでに押印済みの重要書類や契約書など「物理的に書き直しが困難な場合」に限り、以下のような訂正方法が用いられることがあります。
正式な訂正方法
1)間違えた箇所に、定規などを使って「二重線」を引く
2)二重線の上または近くの余白に、正しい文字を書き加える
3)二重線を引いた箇所、または書き加えた箇所の近くに「訂正印」(署名捺印に使用したものと同じ印鑑、または専用の小さな印鑑)を押す
ただし、これはあくまで例外的な措置です。
たとえば履歴書でこうした方法を使うことは推奨されません。訂正印が多用された履歴書は、それ自体が見た目も悪く、準備不足の印象を与えてしまうからです。
修正液や「消せるボールペン」もNG
修正テープと同様の理由で、修正液(リキッドタイプ)もNGです。乾くのに時間がかかり、凹凸もできて、修正テープ以上に見た目が悪くなります。
また、近年普及している「消せるボールペン(フリクションペン)」は、熱でインクが透明になる仕組みです。
コピー機の熱や夏の高温で文字が消えてしまうリスクがあるため、公的な書類やビジネス文書への使用は認められていません。
4.書類の書き間違いを防ぐための予防策

ミスをした後の対処法も大切ですが、それ以上に「ミスをしない」ための予防策が重要です。
書類作成時の不安を減らすためにも、以下の3点を心がけてみてください。
まずPC(パソコン)で下書きを作成する
手書きが求められる書類(履歴書など)であっても、いきなり清書を始めるのは避けましょう。
まずはWordやExcelなどで入力し、文章の構成、誤字脱字、内容の矛盾がないかをPC上で仕上げます。完成版を見ながら清書を行うことで、書き間違いのリスクが減らせます。
声に出して読み上げ、ダブルチェックを行う
書き上げた書類は、すぐには提出(または封入)しないでください。
一度時間を置き、客観的な目で「声に出して」読み上げてみましょう。黙読では見逃してしまう誤字や、文章のリズムの違和感(「てにをは」の間違いなど)に気づきやすくなります。
時間と心に余裕を持って取り組む
締切直前の焦りは、書き間違いをもたらします。そのため、書類作成は締切の数日前に完了させるスケジュールを組むよう心がけてください。
心に余裕があれば注意力や集中力が維持でき、ケアレスミスを防ぎやすくなります。
5.書類の修正に関する「よくある質問(Q&A)」

最後に、書類の修正に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
- 
一文字だけのミスでも書き直すべきですか? 
- 
はい、特に履歴書の場合は書き直すのが原則です。 
 履歴書では、たった一文字のミスであっても、修正テープを使ったり、無理やりごまかしたりすれば採用担当者の目に留まります。「一文字を修正するために、全て書き直す丁寧さを持っている」と示すことが、むしろプラスの評価に繋がる可能性もあります。 
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修正テープをすでに使ってしまった書類を提出したらどうなりますか? 
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即不採用になるわけではありませんが、マイナスの印象を与えてしまう可能性があります。 特に応募者が多い場合は注意が必要です。ビジネスマナーの欠如として、選考の初期段階で不利になることも考えられます。 
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社内向けの書類なら修正テープを使っても良いですか? 
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ケースバイケースですが、推奨はされません。 書類の重要度にもよります。たとえば自分用のメモや、親しい同僚間の非公式な資料であれば、許容される場合もあるでしょう。 ただし、稟議書や報告書など上司の決裁を仰いだり、正式な記録として残したりする「社内文書」である場合はNGです。  社内であっても書類の信頼性が求められるシーンでは、二重線と訂正印を用いるか、データであれば修正して再印刷するよう心がけましょう。 
6.書類に修正テープを使わないよう事前準備を徹底しよう
書類、特に履歴書などの重要書類における修正テープの使用は、単なるマナー違反ではなく、「改ざんのリスク」「相手への不信感」「物理的な劣化」といった理由から、原則禁止とされています。
一文字のミスであっても、「一から書き直す」ことが、社会人としての信頼を勝ち取るための確実な方法です。
たったひとつのケアレスミスでチャンスを逃さないためにも、修正テープを使わない前提の準備と確認体制を徹底し、採用担当者に「誠実で信頼できる人」という第一印象を与えましょう。
 
       
         
         
         
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
     
            
    